ギルド再担・宴会迷走
聞いた途端、そこに居た全員が酒場の親父を指さした。
「なんで酒場の親父がギルドマスターなんだよ!」
グレイ「俺がギルマスで悪いか!」
「悪くも無いが、良くも無いわ!一体なんでそんな事になってんだ!」
グレイ「誰もやりたがら無いんだからしょうが無いだろうが!」
「放っときゃいいだろ、そんなもん!」
グレイ「それだと、誰がこいつらの面倒を見るんだ!」
「爺がおっさんの面倒を見てどうする!」
グレイ「しょうがないだろ、何か仕出かす前に止める為だ!」
「過保護にも程があるだろ、勝手にやらせとけ!」
グレイ「ギルマス殴ってただで済む訳ないだろうが!」
「どこの誰だ、そんな馬鹿は!」
グレイ「そいつだ!」
バルガ「てへ☆」
「………お前か………………………」
そう言や、前にそんな事言ってたな。
あの時は、中々やるじゃないかと思ったが、ただの阿呆な子じゃないか………。
あの時の俺を殴ってやりたい………。
「まあ、いいや、おっさん、ギルドマスターに復帰な、それと獣人狩りも
当然禁止、違反者には容赦しないからな」
グレイ「簡単に言ってくれるな、聖王国軍の連中はどうする」
「ああ、あの連中なら、後で数を減らしておくよ」
グレイ「数を、減らす?」
バルガ「全滅の間違いじゃないかな」
レゴス「だな」
グレイ「しかし運営となると、そうはいかんぞ」
「ギルドの存在理由は依頼と報酬の調整だ、なら何の問題も無いだろ」
グレイ「大ありだ、今この国にはまともな依頼は少ない、ギルドの常設だけだ」
「その常設とは薬草と魔石だろ、薬草は薬師が買うから魔石の行先か」
グレイ「そうだ、完全に不良在庫になっているはずだ」
「なら、魔石は全部俺が引き受ける、それと、もう一つ、盗賊の首に賞金を
懸ける、一人頭金貨1枚(約100万円)だ」
グレイ「馬鹿を言うな!一体、いくらになると思ってる!」
「まずは魔石分」
そう言って異空庫から金貨の入った袋を取り出す。
一袋、金貨100枚入っている、それが10袋、約10億円相当にはなる。
「そして、賞金首分」
こちらも、金貨10袋だ。
見る見るうちに冒険者達の目の色が、変わった。
後で聞いたが、聖王国の連中は、魔石や、素材の買取金額を、通常の七割に設定
した挙句、その差額を自分達の懐に入れてたらしい。
何ヶ月もそんな調子だから、冒険者達の懐は、かなり寂しい物になっていたが、
いきなり、儲け話が金貨と共に目の前に現れたのだ、全員が高揚している。
現金とは良く言ったものだ。
「もし、足らなかったら、後は金塊で払う、うちの鉱山は有望なんだ」
グレイ「あんた、金山までもってるのか」
事実、今までとは隔絶した採掘能力を持ったゴーレム軍団のおかげで今の要塞
には、金だけでなく銀や銅、鉄、やや少量ながらミスリルまでもが確保出来て
おり、それは今も増え続けている。
「そうだ、それにモス大河とバゼ大河の間は俺の国だ」
グレイ「どういう事だ?」
「色々あって、グラム聖王国とアルギス公国とは、絶賛、戦争中だ」
グレイ「………何で平然としてるんだ」
「そんなもん、俺らが圧倒的に優位だからさ」
グレイ「個人で国を相手取るなど、傲慢がすぎる」
確かにグレイの言う事は尤もだと思うが、それは一般常識の範囲内での事だ。
しかし、非常識の塊である俺達には適用されない。
「誰が一人と言った、俺には相棒が居るのさ、それも強力なのがな」
グレイ「それでも二人だろう、それで国か?」
「俺と同等かそれ以上の奴だぞ、それに奴は自分の分身を増やせるんだ」
バルガ「じゃあ、あの修羅って言うのがそうですか?」
「ああ、そうだ」
グレイ「知っているのか?」
バルガ「盗賊が指を数える速さで倒されてた、ハッキリ言って化け物だ」
レゴス「あの修羅って何人ぐらい居るんです?」
「俺が出発する時に12体って言ってたから、今はもう2~3体位は増えてる
だろうな」
バルガ「あれが、増える………?」
レゴス「………制限はあるんですか?」
「たぶん無い、ついでに言うと他にも色々居るぞ、あの16式もそうだ」
バルガ「一体、何個師団に相当するんですか、それ」
シャラ「アハハ!世界最強軍団っしょ、それ」
グレイ「マジかよ………」
「とゆう訳で、細かい事は爺さんに任せる、いずれ俺の国にもギルドを作
るんで、提携よろしく」
グレイ「はあ、わかった、わかった、全て任された」
「それと覚えててくれ、俺達の国の名はドラゴニアだ、いずれ建国の式典
でもしたら、あらためて招待する」
グレイ「その時は、喜んでお邪魔するよ」
「よし、それじゃあ、これからみんなで宴会だ、シャラ、ファラと親子も
呼んできてくれ」
それからは、日が落ちるまで、飲んで喰っての大騒ぎをした。
最初は俺を怖がっていた冒険者達も、獣人の子供達と、わちゃわちゃしている俺
を見て、すっかり警戒心を解いたようだ。
どんどん遠慮が無くなっていった。
それに、勿論、俺のおごりだが、ギルドの酒も食料も全て平らげそうな勢いに、
こいつらまるで欠食児童だなと思ったよ。
そして、宴会も盛り上がってきたころ、シャラが狐人族の女にちょっとした質問
を投げかけた。
シャラ「なあ、聞いていいか?人種と違って獣人は強い男に魅力を感じるんだろ」
狐人族「スクナよ、ええそうよ、あたい達は強い雄が好き、種族は関係ないわ」
アイラ「人種の女が、あのナメクジみたいな軟弱な男を好むのが理解できないわ」
スクナ「いざとなったら、何の役にも立たないわよ、あれ」
シャラ「なら、どうして二人ともアルセニオス様に無関心なんだ?普通なら抱き
着いたり、腕を組んだりするっしょ?」
スクナ「嫌よ、あたいはまだ死にたくないわ、ねえ、あなたもそうでしょ」
アイラ「ええ、アルセニオス様はとても魅力的だけど、まだ子供も小さいから」
シャラ「意味不明~」
スクナ「匂いがするのよ、この雄は私の物だ、手を出すと食い殺すぞ、ってね、
妾の地位さえ諦めたわよ」
アイラ「そう、強烈なにおいがするの、獣人の女にしか分からないわ」
「えっ、俺、臭いのか?何か匂うのか?」
アイラ「そういう意味じゃ無くて、強烈な意志の匂いなの」
スクナ「凄いわよ、もう魂も肉体も、その全てを捧げますって匂いね」
アイラ「愛されてますよ、アルセニオス様は」
「あ~、サナだな、きっと」
確かにその傾向はあった。
特にジリエの街での出来事以来、サナは俺の身の回り世話をするだけで無く、
常にそばで寄り添う様になった。
いくら朴念仁でも、さすがに気がつく。
シャラ「知ってる娘ですか?」
「ああ、俺が保護してる子供達の中の一人だ」
スクナ「えっ、子供なの?」
シャラ「アルセニオス様、それ、やばいっしょ」
「サナはまだ13だ、何もしてねえよ、ただ死にかけた妹を助けただけだ」
アイラ「ああ、それで女に目覚めたのね、わかるわ~」
スクナ「妹の命の恩人で、世界最強の雄よ、そりゃ惚れるわよね~」
アイラ「思い当たる事がありますでしょ、アルセニオス様」
このままだと、サナを嫁にもらうつもりでいる事にきずかれそうだ。
腹は決まっていても、さすがに年の差が恥ずかしいし、一応サナは成人前、
からかわれるのは、間違いない。
ここは、何とか話を変えなければならない。
「ああ、まあな、そう言えば、前に狼人族の男の子が群がられたな」
アイラ「その子、いくつですか?」
「たしか10歳だったな」
スクナ「凄まじいわね、僅か10歳やそこらで群がって来たんでしょ」
「デクシスは強いぞ、たぶん剣だけなら、ここの連中より強い」
シャラ「マジっすか」
「ああ、ケンカするなよ、首が無くなるぞ」
バルガ「それならば、一度手合わせをしてみたいですな」
レゴス「さすがに、聞き逃せません」
ファラ「剣以外でないと勝てないって事ですか?」
「はは、やはり男だな気になるか」
バルガ「そりゃ、そうでしょ、10歳より弱いと言われたら」
いい具合にデクシスに話題が変わったが、銀月の連中が何やら言い出した。
僅か10歳の子供に対抗心を燃やすなよ、全く。
デクシスは、あの超過保護の直也の弟子なんだぞ、いらんちょっかいを掛けて
死ぬ事になったら、目も当てられない。
「だが、手合わせは無理だし、いくらやったって意味ないぞ」
バルガ「どういう意味ですか」
「あいつの剣は俺の相棒が教えた殺人剣だ、はなから打ち合うなど考えて
いない、一瞬で剣を抜き、一太刀で命を刈り取る、その刹那の瞬間を切
り取る事を極めた剣技だ、だから立ち合い等の稽古は無いのさ」
バルガ「………例えば真剣で立ち合ったらどうなります?」
「一瞬で懐に飛び込まれて、体の一部を斬り飛ばされて終わりだろう」
レゴス「もしかして、あの修羅ってのと同じですか」
「まあ、いくらか近いかもな」
バルガ「飛び込むのを防げれば、あるいは………」
「戦いの最中に一回も、まばたき、しなければ可能性は有るかもな」
シャラ「そんなもん絶対、無理っしょ」
レゴス「怪物………」
「ああ、あと何年で獣人最強になるか、楽しみだよ」
レゴス「最強は確定なんだ………」
「当たり前だろ、あいつが学んでいるのは800年以上、敵を倒す事だけを
追求し続けてきた剣技だぞ、どっかの国のチャンバラごっことは、次元
が違う」
バルガ「はっ、800年?いったい何者ですか」
「俺の相棒だぞ、まともな訳無いじゃないかwwww」
レゴス「そうだった、あの16式の制作者だった」
バルガ「忘れてた………」
ファラ「頭から抜けてた………」
シャラ「三人とも馬鹿っしょ」
何とか思いとどまってくれたようだ、これでこいつらの死体に見ずに済む。
そう思ったら、別の問題が、”こんにちは”しやがった。
スクナ「うちも、あんたらに付いて行く!」




