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ある魔導士の帰還  作者: 勝 ・ 仁
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ドラン王国の澱



「よう、銀月の諸君、久しぶりだな、なんだ、随分苦労してるじゃないか」


そう声を掛けた先には、血だらけの上に傷だらけになった銀月の連中が、呆然

と、こっちを見たまま転がっていた。


バルガ「はは、どうもお久ぶりです」

   「手酷くやられたな、ほら、ポーションだ、上級だぞ」

バルガ「上級?ポーションの上級?」

   「俺の仲間の試作品だ、今なら無料だ遠慮すんな」


これは、勿論ユリアの作り出したもので、蒸留や溶媒、果ては遠心分離器まで

作って調合したものだ。

ユリアは直也から色んな知識を吸収しては、色んな物を作っていた。

そういう意味では、ユリアと直也は、同じ種類の人間だ。


バルガ「ありがとうございました、これでシャラも、持ち直します」

   「しかし、20人相手にここまで粘るなんて、けっこう強いじゃないか」

レゴス「アルセニオス様に言われても………」

ファラ「それよりも、アルセニオス様、これ、どちら様で?」

   「ああ、こいつらか?こいつらは修羅って言うんだ、役目はそうだな」


みると、正気に戻った盗賊達が揃って逃げ出していた。

まあ、この状態で逃げ出さない方がおかしいのだから、至極当たり前の行動だ

が、だからと言って、見逃してやる義理は無い。


   「あ~子供達とお母さんは、後ろを向いて耳を塞いで、そうそう」 

レゴス「なんで後ろをむかせたんです?」  

   「刺激が強いからな、修羅、処理しろ、ほら槍」

 修羅《了・了》


俺から槍を受け取った二体の修羅はあっとゆう間に盗賊達の傍まで移動すると、

その命を刈り取っていった。

その様はまるで、大勢の木こりが、あちこちで木を切り倒しているようだった。


盗賊達は、一体自分に何が起こっているのか、殆んど認識する事も出来ないまま

全滅した。

盗賊には、まるで瞬間移動をしたようにしか、見えなかった。

悲鳴も絶叫も、上げる暇さえなかった、


その様子を、意識を取り戻したシャラと銀月の三人が、呆然と見ていた。


バルガ「終わっちまった…」

レゴス「何なんだ、ありゃあ」

ファラ「何だろうね」

シャラ「さあ?」

   「えらく、冷静だな、お前ら」

バルガ「いえ、なんか、驚きすぎて、その」

レゴス「妙に納得と言うか、何と言うか」

ファラ「アルセニオス様だから、仕方がないと」

シャラ「そうそう」

   「しばらく見ない間に、随分逞しくなったじゃないか」

ファラ「おかげさまで」

シャラ「えへへへ」


それから、この国の状況を聞いたが、酷い有様らしい。

聖王国の連中は搾取するだけ搾取して、民には信仰のお題目を与えて、それで

統治者の責任は果たされたと言ったらしい。

おかげで、国中に野盗や盗賊が溢れても、何の対策もされず、それどころか、

獣人を狩って来る奴らを、好都合とばかりに野放しにした。


そして、それに一役買ったのが、冒険者ギルドで、獣人の買取窓口に成り下が

った。

そして、一部のクズを除く、多くの冒険者達はそれを、見て見ぬふりをする事

しか出来ないでいた、それが精一杯だった。


バルガ「ギルド上層部はとうとう一全員、聖王国の人間に変えられたしな」

レゴス「冒険者だって、生きて行かなきゃならないんです」

バルガ「聖王国に逆らって、命を賭けろとは言えないですよ」


だが、ここに来て更に状況が、変わったらしい。

聖王国の連中の数が急激に減り始めた途端、急に獣人の買取金額が、高騰して

獣人狩りの人間が急増し始めたらしい。


   「あー、多分聖王国の連中が減ったのは俺のせいだ」

バルガ「アルセニオス様は何をやらかしやがりなさったんでございますか」

レゴス「なれない敬語を使うから、おかしな事になってるぞ、兄貴」

   「要は聖王国の連中の殆んどを殲滅して、その後色々あってモスとバゼ

    の間の土地は俺の物になって、だから建国する」

バルガ「すいませんが、要約しすぎて、何がなにやら…………」

   「モス大河とバゼ大河の間は俺の物、だから聖王国の目端の利く連中は

    遠くに逃げ出した、これだけだ」

バルガ「これだけって言われてもなぁ…」

ファラ「ちょっと何を言ってるか良く判らないないんですが………」

シャラ「え~と、地主さん?」


まあ、理解できるはずもない。

俺だって何が何やらわからん内にこんな事になったんだから、当たり前だ。

しかし、獣人狩りを、何とかしないと被害は増える一方だ。

どうしても碌な考えが浮かんで来ないので、取り合えず直也に聞く事にした。

向うの世界では、普通でもこちらの世界で12年も教育を受けた人間など、王侯

貴族か何かの研究者だけだろう。

おまけに、あいつには向うの知識をいつでも引き出せる隠し玉がある。


   「ここなら通じるかな、ちょっと場所を開けてくれ」

バルガ「は、はい」

   「ほいっと」


異空庫から、先程一発ぶっ放したばかりの奴を引っ張り出した。

砲門は、まだ高温を保ったままで、周りの空気を歪ませ、その圧倒的な質量は、

人間がいかに脆弱で矮小な存在なのかを、叩きつけて来た。


ファラ「ひっ!」

バルガ「な、な、な」

レゴス「…………………………アースドラゴン」

   「違う違う、これ馬車だから」

バルガ「そんな馬鹿な………」

レゴス「これが馬車?冗談でしょ」

   「まあ、そうだわな、まいい、ちょっと待っててくれ」


それから俺は備え付けられている通信機を使って直也に連絡を取った。

此方の状況を説明して、ここも保護地域に出来ないかと相談したが………。


直也《無理だ、支配地域がこれ以上増えたら、手が回らん》

  「このまま指を咥えて見てるだけなんて、我慢出来そうに無い」

直也《仕方がないだろ、戦力が圧倒的に足らない、製造が追いつかない》

  「何とかしてくれ!」

直也《あのなあ、う――――ん、あ――――、そうだ、冒険者ギルドを使え》

  「冒険者ギルド?」

直也《そうだ、力ずくで上層部の首を挿げ替えろ、物理的でも構わん》

  「そんな無茶苦茶な事が出来るか!」

直也《無茶がどうした!たとえ民間人でも聖王国の連中に何の遠慮がある!》

  「しかし、まさか、そんな事」

直也《アル、俺達はガキなんだ、ガキが、ガキの理屈で国を作るんだぞ、この

   世界の常識など糞喰らえだ!俺達は俺達の価値観で獣人や亜人達を保護

   するんだ、違うか!》

  「………違わない」

直也《俺達には、それだけの力がある!モス大河さえ超えれば手出しはさせん》

  「そうか、そうだよな、俺は何に遠慮してたんだろう」

直也《そうさ、ぶちかましてこい!》

  「ああ!行って来る!」   


行動する為の理由が出来た。

あとは、実行する計画を構築するだけだ。


   「これから冒険者ギルドの連中をぶん殴りに行く」

バルガ「ぶん殴るって、何する気ですか」

   「ああ、大した事じゃ無い、ギルドマスター以下首脳陣を退陣させる」

バルガ「はあ?」

レゴス「何言ってるんですか」

ファラ「退陣って………」

シャラ「そんなこと出来るのかな」

   「大丈夫さ、俺が丁寧に説明すれば、きっとわかってくれるさW」

バルガ「アルセニオス様が面と向かって………」

レゴス「丁寧に説明………」

ファラ「断れる奴が居るのか?」

シャラ「無理っしょ…」

   「案内してくれるよ〝ね”」

バルガ「はい!喜んで――――!」

   「………前もどこかで聞いたな、これ」


この国の冒険者ギルド本部は王都のカラガスに有るらしい、

そこをまず抑えてしまう事にした。

王都はここから馬車で北に、八日程言った所にあるが、16式機動戦闘車なら、

二日もあれば到着できる。


獣人母アイラ「あの、子供達だけでも助けて頂けないでしょうか………」

   「ああ、不安にさせてしまったね、大丈夫、もうあなた達は俺の庇護下

    にある、かすり傷一つ付けさせたりしないよ」


16式は、本来4人乗りだが、こいつは魔石で動く。

つまり、燃料タンクもなければエンジンも小型だ。

そして砲弾は俺の異空庫の中、つまり全員が乗っても十分な搭乗空間が有る。


バルガ「アイラさん、アルセニオス様の傍なら、安心していい」

シャラ「一万の軍隊に守られてるようなもんじゃない?」

レゴス「いや、要塞の中だろう」

ファラ「俺はその両方に一票」

   「お前ら、俺は一応人間だぞ」

 銀月「「「「えっ?」」」」

   「何だ、その疑問符は、まあいいか、とっとと出発するぞ」

 銀月「「「「うっす」」」」


橋のたもとには、修羅を2体守備兵として配置し、盗賊や兵士の侵入を防がせ

つつ、もし難民が来たなら保護し、直ぐ直也に連絡する様に指示を出した。

修羅もメイドシリーズ4体と同様に自立型だが、簡単な伝言ならモールス信号

として、送信できる。

此方は直也に任せておけばいいだろう。


アイラ「すいません、こんな貴重な物を」

ロック「おいし~」

ロイス「あま~い」


今、母子は、16式に乗っているが、なんせ横に窓が無い。

上部扉は開けてあるが、子供達は暇でしょうがない様だったので、異空庫から

特大の棒付き飴を取り出して、ひとつづつ握らせた。

勿論、母親にもだ。

前にも言ったが、この世界、甘味は貴重品だ。

しかし、アルの異空庫には、コストコの数倍は食料関係が入っている。

提供するのに躊躇しないし、猫獣人の親子が嬉しそうに飴を舐めている様子は

とても微笑ましいのだが。


   「何だ、お前達も欲しいのか?」

シャラ「てへへ、すいません」

   「まあいいか、その代わりに運転をしっかり覚えてもらうぞ」

 銀月「「「「頑張ります!」」」」


実際、彼らは呑み込みが早かった。

その日の夕方には、全員が危なげなく運転する事ができた。

その分、俺は子猫たちと、じゃれあい放題だったので、不満は無い。


その後、三日ほどかかって、王都カラガスの入り口に辿り着いた。


「と、止まれ、貴様ら何者だ、ここから即刻立ち去れ!去れ!去れ!去れ!」



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