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ある魔導士の帰還  作者: 勝 ・ 仁
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チート・チート・チート



デクシス「アル様、直也様、ユリア様、行ってきます!」


馬車の御者席からデクシスが明るい声でつげながら、手を振っている。


    「ああ、頑張ってこい」

 ユリア「風邪ひいちゃダメよ」

  直也《気を付けるんだぞ、無理はするなよ、夜は戸締りを忘れない様にな》

デクシス「はい!」


今日はデクシスがマレーナの町に一人で交渉に向かう日だ。

この建国しようとしている地域は、正確な地図を作る為に、ドローンを飛ばして

調査中だったが、その途中でマレーナの町で暮らしている人々を確認したのだ。


まだ、調査は全地域の半分ほどだが、村はかなりの数が存在した(ただし老人と

女子供が、殆んど)が、町はことごとく、略奪の対象になったようで、なかには

壊滅してしまった町もあったが、どの町や村でも聖王国軍が急遽、撤退した事に

戸惑っていたが、搾取する人間が消えた事で、若干の余裕が出て来た。


つまり、今の内に保護するなり、手助けするなり、放置するなりを、決めてもら

ったほうが、相手も俺達も都合がいい。

それに、マレーナの町人達なら、デクシスとも面識がある。

デクシスに経験させるには、打って付けな町だ。


  直也《ジューヌ、修羅を2体付ける、影になって守れ》

ジューヌ《イエス・マスター》

  修羅《了・了》

    「おまえ、これじゃあ、どうみても過剰戦力だろ」

 ユリア「修羅1体でも十分でしょう、過保護だって」


修羅は俺が作った戦闘特化型ゴーレムでノワール達の下位互換だ。

戦闘以外の能力は全く持っていないが、フォレストサーペント位なら苦も無く

倒すだけの力は持たせてある。

使用する魔石も、ピンポン玉くらいの大型魔獣クラスの魔石か魔鉱石を三つ程、

使うだけだから、そこそこ、数を揃える事が出来た。

只、魔石の数を増やしても戦闘力は上がるが、自己判断などの特殊能力付与が

上がる訳では無い。

三つの魔石の同調に回路の大半を持って行かれるからだ。

ゆえに、決められた命令の優先順位などは理解するが、それ以上の事は出来ない。

つまり、デクシスに危害が及べば、躊躇なく迎撃するが、隣で子供が襲われても、

デクシスが命令するまで、丸ごと無視をするのだ。


  直也《もし、デクシスがドラゴンの群れに襲われたらどうするつもりだ!》

    「ドラゴンは群れねえし、山脈をわざわざ超えて来ねえよ」

 ユリア「そうよ、はぐれドラゴンなんて千年に一度有るかどうかだから」

  直也《明日が、その千年目かもしれない!》

    「そんな訳あるか!」

 ユリア「駄目だわ、完全に、おかん、になってる」


ノワール《ユリアサマ・イチロクシキ・ジュンビ・デキマシタ》

 ユリア「わかったわ、じゃあ先に出るわね」

    「ああ、気をつけて」

  直也《俺が行ければ良かったんだが………》

 ユリア「あのねえ、何回も言ったでしょ、ここいらの農家の人達は迷信深いの、

     貴方が出て行ったら、神様か魔神のどちらかで呼ばれるわよ」

    「心配し過ぎだって、大体、お前が作ったユリアさんの装備も、デクシス

     の戦闘服も、思いっきりとんでも性能の塊じゃねえか」

 ユリア「すっごい装備よね、もう完全に国宝級以上よ、それにおしゃれ!」

    「大体なんだ、この魔法付与とギミックの数は」

  直也《コンセプトは着用するイージス・アショアだ》

    「お前………やりたい放題だな………」

  直也《誰も止めないじゃないか》 

    「言ったら止めるのか?」

  直也《ははは、無――――理――――w》

    「全く………」

 ユリア「良いじゃない、誰も損なんかしないんだし」

    「しかし、もし盗まれたらどうするんだ」

  直也《それなら大丈夫、登録した本人か、ここの要塞から50㎞以上離れたら

     燃えて灰になるから》

    「そんな仕掛けを組み込んだのか?」

  直也《取り上げられたデクシス達の刀は、もっと凄いぞ》

    「あんまり、聞きたく無いんだが、あの異様な刀の束頭が仕掛けだろ」

  直也《正解だ、何、周りに生命反応が無くなると爆発するだけさ》

 ユリア「………ちなみに威力は?」

  直也《せめて家の一軒ぐらいは、差し出して貰わないと気が済まん》

    「もう、何と言うか………」

    

実際、デクシス達の剣を、こっそり持ち出した貴族の家が跡形も無く吹き飛び、

その後、横流し専門の商人が倉庫を吹き飛ばされ、大赤字を食らったそうだ。

間違いなく直也の仕掛けが発動したのだろうが、自業自得だ。


ユリアとノアールを、送りだした後には二人だけが残った。


  「さあ、直也、説明してもらおうか、あそこに見える、あれは何だ?」

直也《やっぱりばれちゃったかW》

  「ナ・ン・デ・ヤ・マ・ト・ノ・艦橋・ガ・コ・コ・ニ・ア・ル?」

直也《ここがモス大河の上流だからだが?》

  「何で半分埋ってるんだ?」

直也《何でって、ヤマトの艦橋は埋って、なんぼ、だろ》

  「まさか、空を飛んだりしないよな?」

直也《船は空を呼ばないぞ?》

  「じゃあ、何で埋ってるんだ?」

直也《まあ、様式美だな》

  「はあ、もういいや、まさか完成してないよな」

直也《まだ、骨組みも出来て無いよ》

  「なら、何で先に艦橋を作ったんだよ?」

直也《もしかしたら、ガミ〇スが、来るかもと思って》

  「来るか!きたら困るわ!」

直也《冗談じゃないか、WWW》

  「もういいや、俺も出発する」


そう言うとアルはルージュと共に16式機動戦闘車に修羅を六体程載せて、モス

大河に架かるローグ大橋を目指した。

国境となるモス大河の上流は直也が改造しまくって、巨大な要塞と化したので、

もう一つの出入口のローグ大橋に、修羅を配置する為に、村巡りをするついでに

運んでいるのだ。



残された直也は、残った子供達に勉強を教えていた。

まあ、どこの世界でも勉強が好きな子供は居ないだろうが、やり様は有る。

まず、サナは花嫁修業と言った途端に目の色が変わった。

これは、逆にセーブする必要がありそうだ。

モルナは果実園をエサにしたら、真面目に学習してる。

なんせ、この世界で、恐らく最初のブドウ園を作ろうとしてるのだ、学ばなけれ

ばならない事は山積している。


あと、ちびっ子達は、まあ、お菓子で釣った。

なんせ、学校という物も概念も無いのだ、甘い物で誘導しながら、紙と鉛筆を持

たせるだけでも、十分なのだ。

遊びながら学べばよい。


こういう時に、ブランが非常に役に立つ。

今は、ほぼ全自動遊具となって子供達をぶら下げている。

ちびっ子達には俺は大きすぎるらしい。


子供達に勉強させながら、同時に幾つもの作業を同時にこなして行く。


一つ目はブドウ園。

緩やかな斜面をゴーレム達がひたすら、掘る、掘る、掘り起こす。

出て来た石を横に積み上げてゆく。

掘って積んで、掘って積んで、掘って、掘って、掘って積んで、また掘って。

暫く繰り返している内に、かなり広い棚田のような農地が確保できたので、この

辺で、一旦止めてみた。

これ以上広げてしまっては、モルナの許容範囲を超えてしまうからだが、残され

た広い平地を見て、ここを農地に変えてしまおうと思った。

水源も直ぐ傍にモス大河とウール河の源流があるので、問題はないし、周辺の森

の魔獣はユリアさんが狩り尽くしてしまったため、木材は伐採し放題である。


水は確保できる。

木材は取り放題。

危険な魔獣は居ない。

段差の無い広い平地。


土壌の改良さえできれば、農業するには理想的である。


そうと決まれば話は速い。

稼働していない蟻型ゴーレムを全て農地改良につぎ込んで、出て来た不要な石

や岩は、農地を囲む壁を作らせた。

伐採した木材は順次加工して保管する。


鉱山要塞に隣接するここは、天領として、俺が管理する事にした。

何を栽培しようか、この世界にはどんな作物が有るのか、今から楽しみだ。


そして二つ目が監視システムの構築だ。

今、その成果の一台目が倉庫の中で完成した。

見た目は超巨大カブトムシだが、中身は通信中継システム及び偵察用ドローンの

簡易補給基地である。

カブトムシなのは只の遊び心で、理由は無い。


今のドローンでは通信能力が弱く、燃料となる魔石の能力も相まって、鉱山要塞

からの行動半径が限られているため、中継地点が欲しかったのだが、この世界の

情勢が不足していたので、移動型の中継基地を作った。

アル達を発見したのも、運用半径ギリギリの所だったのだ、あの時は本気で肝が

冷えた。

あれだけ焦ったのも、激昂したのも、この世界に来て初めてだった。

あの時、本気でブチ切れていたのは誰にも話していないが、ユリアは察していた

ようだ。


全長20m・全幅14m・全高8m・角部6mの自走型中継基地。

腹部に有る、無数の大型ベアリングで本体を支え、6本の脚で前進する。

速度は遅いが、碌な道の無い此処では、汎用性が最も重要になる。

これなら、道が有ろうが無かろうが、関係ない。

小山程度なら自力で登っていける。


これを、順次投入して、完全なネットワークの構築を目指す。


そもそも、人権だ、自由の侵害だ、個人の権利が、どうのこうの言って居られる

ような、甘甘の世界では無いのだ。

碌な法も無くまともな警察機構も無い世界、すぐ隣に死と不運が手を取り合って

絶望のワルツを踊っているような世界では、安全と平等は、至高の価値を持つ。


向うの世界では、ただ受け入れるしか無かった己の運命を、アルに救い上げて

もらった。

肉体も、故郷も、失ったが、魂は残ったし、かけがえのない友人を得た。

守らなければならない者達が出来た。


理不尽な暴力を振りかざす連中が、他人を食い物にする事しか考えない連中が、

心根の優しい人々に不幸を振り撒くなら、俺の大切な人々に害をなすなら、俺の

友人に不幸を運ぶつもりなら、残らず俺が擂り潰してやる。


      もう、一方的に希望を奪われるのは、ごめんだ。




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