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ある魔導士の帰還  作者: 勝 ・ 仁
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建国・竜の国



   「なあ、直也、馬車が全く揺れないのは何故かな?」

 直也《舗装道路だからだな、石板製だけど》

   「なあ、直也、正面に壁みたいな物が有るのはどうしてかな?」

 直也《あれは城壁だな、魔獣や盗賊が襲ってきたら困るだろ》

   「なあ、直也、城壁の上にアメリカの映画に出てた物があるんだが?」

 直也《あれはガトリング砲だな、魔獣や盗賊を撃退するためだね》

   「なあ、直也、門の両脇に立ってるのは何者かな?」

 直也《あれは門番ゴーレムだな、門を開けてくれる者が必要だろ》


   「なあ、直也、もしかして俺は赤ずきんちゃん状態なのかな?」

 直也《そうだね、俺がオオカミだな、ちなみに門の中は三匹の子豚だね》

   「ほお、門の向うにレンガ造りの建物が有るんだな、で、他には?」

 直也《ええと、治安維持に桃太郎がいて、鉱山の中が浦島太郎かな》

   「何となく予想は出来るが、まず、桃太郎から説明してもらおうか」


直也の説明が始まったが、治安維持ではなく、完全な軍隊だが、よく考えたら直也

は、ごりごりの日本人、専守防衛の強大な軍事力とくれば、まんま自衛隊だわ。


まずは自立性を持った人型ゴーレムが桃太郎ね、そしてドローンが雉だね、えっ、

グローバルホークにプレデターまである?呆れた、もう空軍じゃないか。


そして、犬は何?自走ゴーレム?いや、これ、たしかどこかで見た気が、タイヤの

付いた戦車、何?16式機動戦闘車?タイヤ用の魔獣素材が不足?知らんがな。


そして、これが猿?違うじゃん、これ蜘蛛、蜘蛛型ゴーレムの背中に機銃がくっつ

いてるだけ、えっ?歩兵だから数が必要?改造したって?そりゃよかったね。


えっ、人魚姫の予定もある?ああ、そう海軍ね、軍艦でも作るのか?もっと小型?

今、造船所を作ってる?もう好きにしたらいいさ。


次に浦島太郎だけど、説明できない?見た方が速い?いいけど、いつまで続くの?

この、童話シリーズ、えっネタ切れ?はは、そりゃよかった。



デクシス「アル様、ここ、俺たちが居た洞窟なの?」

  サナ「凄い広くなってます、天井も高い」

 モルナ「それに、とっても明るい、あ、あそこ空が見える!」

  ルナ「つるつる~」

  ミア「ぴかぴか~」

  リリ「ほえ~」

クリッカ「これ、もし汚したら、お姉ちゃんに………」

    「気にするな、大丈夫、みんな直也が、はっちゃけた結果だから」

  直也《どうだ、凄いだろwww》

    「ああ、凄すぎて原型が思い出せねえよ」

 ユリア「ナオが暴走したのよ、何だっけ、大改造‼劇的ビ〇ォー〇フターとか言

     ってたわ」

    「ああ、あれか」

 ユリア「そうよ、匠の技がーとか、何という事でしょう、とか言いながら一日中

     叫んでたわ」

    「やりたい放題だな」

  直也《いや、誰もとめないもんで、つい》

    「つい、で、出来る範囲を逸脱してるだろ、これ」

  直也《やり過ぎだと思ってたが、今となっては作って良かったよ》

    「………………建国か」

  直也《ああ、いい加減、腹を括れよ》

    「わかってる」


帰りの馬車で、二人でずっと話し合って来た。

時には言い合いになり、サナが心配して馬車から降りて来たり、リリが泣き出した

りしたが、俺達の根っこは基本、同じだから決別の喧嘩になどならない。


直也《どう取り繕っても、俺達ってただのガキだろ》

  「正真正銘の、紛れもないガキだな」

直也《なら、ガキらしい国を作ろうぜ、お前は国家運営に拘りすぎだ》

  「そう言うけど、俺らの運営で不幸になったらどうする」

直也《税金を取らなきゃ関係ない、義務も無い》

  「そんな、いい加減なことじゃ不味いだろ」

直也《俺らが色々決めた所で人がいない、どうやって税金を徴収するんだ?》

  「まあ、確かに無理だな」

直也《だろ、だから俺達が受け持つのは、治安維持のみにすればいい》

  「つまり、軍隊と警察と裁判官になれと言う事か?」

直也《正解だ、それ以上は出来る様になってからで良いさ》

  「じゃあ、後は刑罰だけか、どうする?」

直也《殺すな、盗むな、騙すな、の三つでいいだろ》

  「大雑把だが、最初はこんなもんか」

直也《ああ、それさえ守ってもらえれば、後は自由にすればいい》

  「去る者は追わず来る者は拒まず か」

直也《俺達らしいだろ》

  「そうだな、俺達で構わないって人達だけを、保護しよう」

直也《当然だ、俺達を嫌ってる奴らが、どうなろうと知った事か》 

  「よっしゃ、後、決められる所は決めちまおう」


通貨はこのままで良いだろう、あと冒険者ギルドと商業ギルドをまず誘致する。

まあ、来なければ仕方が無いが、支部を構えるのであれば建物を提供できるし幸い

魔物素材も鉱物資源も、かなりの量が提供できる。


後、貴族は作らない事にした。

碌でも無い未来しか見えないからだし、俺らにそんな物は必要ない。

国家の仕組みが必要になればその都度対応すればいい。

なんせ、国民は此処に居る、人族二人、獣人族七人の九人だけ、軍事力は強大だが

人口は村にさえ届かない。

これで、建国するのだから、大量のゴーレムが無ければ、狂人の虚言だろう。


それから国境はバゼ大河より西、モス大河までと勝手に決めた。

文句の有る奴は、剣を取って抗議しに来いって事だ。


両大河とも通行可能なのは、それぞれ二か所だけだから防衛が少人数で済む。

まずバゼ大河はクーロン大橋とクノッソス砦の二か所だけ、モス大河はローグ大橋

と上流の街道の二か所のみ、非常に防衛し易い。

もう一つが水魔の存在だ。

とにかくこいつが厄介で小舟や泳いでの渡河がほぼ、不可能になってしまっている

姿はまるで、一升瓶のような半透明のナメクジで、塩にも乾燥にも弱い。

弱点はそのままだが、何故かナメクジのくせに泳ぐのも、船に這い上がるのも物凄

く早く、獲物を見つけると、あっと言う間に群がって、食い散らかすのだ。


挙句に、襲うのは地上生物か両性類魔獣だけ、魚類には見向きもしないからいつも

飢餓状態な上に魔石も持たない、食べられない、素材も取れない、の三重苦で誰も

狩らないから、数も増える一方で、数十年に一度の大洪水で海まで流されないと数

が減らない。


無理に河を渡っても、何一ついい事が無いのだ。

これなら、橋を強行突破した方がましだ。

迷惑この上ない存在だが、防衛の観点からすれば、最高の戦力だ。


制限するのは、軍属だけで人の往来を邪魔するつもりは無い。

だが貴族の軍隊と傭兵、後は犯罪者の類も通すつもりは無い事は告知する必要が有

るだろう。


その為にも急務になるのが、現在生存している人間の把握だ。

どこの町や村が生き残っているのか、それはどれぐらいの人数なのか、それを把握

した上で、ここが既に俺達の統治下になった事を伝えて、此処に残りたいか、それ

ともアルギス公国に移住したいかを決断してもらわねばならない。

もし公国に行きたいのであれば、持ち出す物も自由だし、橋なり砦なりまで、安全

に送り届ける。


ここまで決めた所で、俺達は鉱山とは名ばかりの住居に辿り着いた。

一日目は、とにかく疲れを取る為にゆっくり過ごすことにしたが、まず先に子供達

には、それぞれの為に用意した部屋を渡した。

サナとリリで一部屋、モルナとクリッカで一部屋、ルナとミアで一部屋、デクシス

で一部屋の四つの部屋を渡した。


そしてガットの為に用意した部屋が一部屋、この部屋は誰にも使わせない。


ここは、永遠にガットの部屋、ガットの為に俺が用意した部屋、椅子も机もベッド

も、何もかもガットに併せて俺が作ったガットだけの部屋だ。

誰も知らない、名札も何も無いこの部屋の鍵は俺だけが持っている。

この先、何があってもこの部屋は使わせない。

ここはガットの部屋だ。


そしてにぎやかな夕食、やっともどってきた。

本当に楽しい夕食だった。

久々の食事はかなりの数の食材や調味料をアルの異空庫から吐き出させたが、実際

は、氷山の一角にもならない量で、本人も余程意識しないと認識できない程の少量

らしい。

どんだけ入ってるんだ、こいつの異空庫は。


そして案の定、ユリアにワインをねだられ(不良のカツアゲとも言う)ただでさえ

少ない在庫から、二十本以上持って行かれてた。

もっとも、少ないと言っても他の物と比べて少ないだけで、まだ、その十倍以上を

持っている事を俺は知っている。


味がわかるようになったら飲むんだそうだ。


そしてユリアの方は、あまりの美味さに衝撃を受けていた。


ユリア「何なのこれは、これ本当にワイン?ナオの世界って、こんな極上なワイン

    どうやって作ってるの?」

 直也《いや、普通に作っているだけだと思うんだが》

ユリア「そんな訳無いじゃない!これはもう、神の飲み物よ!」

   「このレベルで極上とか、ユリアさんもまだまだですね」

 直也《あっ、あほう》

   「えっ?」

ユリア「何?まだ持ってるのね、それも極上以上の至高のワインを」

 直也《自分でばらしてりゃあ、世話ないだろう…………》

ユリア「いずれは、飲ませてもらうから、勝手に飲むんじゃないわよ」

   「………………はい」


しかし、ここで意外な参加者が現れた。


モルナ「ワインとは、そんなに美味しいものなんですか?」

ユリア「そう!これは素晴らしい飲み物なのよ!」

 直也《でもモルナには少し早いかな、お酒はもう少し大人になったらね》

   「そうだぞ、お酒は二十歳になるまでいけません」

ユリア「何言ってるの、ワインなんてぶどうジュースよ、ぶどうジュース」

 直也《はいはい、酔っぱらいはそっちで、おつまみ食べてなさい》

ユリア「は~い、あっ、このガレットおいし~」


興味がベーコンとキノコのガレットに移ったところで、当然、注目はモルナだ。


   「モルナは何で急にそんな事言いだしたんだ?ワインを飲みたいのか?」

モルナ「ちっ、違います!私もワインを作ってみたくて………」

   「何でまた、そんな事を」

モルナ「私達の両親は農業もしてましたが、農地が小さくて、よく果物を取りに森

    にはいってたんです」

   「なるほど、フルーツハンターだったんだな」

モルナ「はい、そして時々、果実酒を作って売ってたんです、だから家はちょっと

    だけお金に余裕があって」

 直也《そんな、お金の事なんか、考えなくていいんだ、まだ無理してまで、働く

    必要なんて無いんだぞ》

   「そうだぞ、お金の事なんて今は考えなくていいんだ」

モルナ「違うんです、デクシスの一生懸命な剣の鍛錬を見て、私も何かしたくて、

    それに、サナはもう始めてるみたいし、ならば、私は両親がやっていた、

    果実酒作りをしてみたいんです」

 直也《わかった、何かを成すのは良い事だ、俺が協力してあげよう》

モルナ「ありがとうございます!」


   「俺も応援しよう、だが、サナは関係ないだろ?」

 直也《お前、なにも気が付いて無いのか?今、サナはどこにいる?》

   「台所だな」

 直也《台所で何してる?》

   「そりゃ、洗い物だろ」

 直也《何で?俺も、ノワール達も居るのに?》

   「あれ?」


どうもアルの奴は、食事の準備中にサナが居ない事にも、俺が料理を教えている

事にも気か付いていなかったらしい。

相変わらず、ぼ~っと何かくだらない事を考えていたようだ。


ユリア「今日の夕食、半分以上、サナちゃんの手が入っているのよ」

   「気づかなかった……でも何で」

 直也《お前の為に決まっているだろ》

   「俺の為?」

ユリア「まだ分からないの、この鈍感」

 直也《女が男の為に台所に立つ、理由は、わかるよ、な》

   「でも、サナはまだ子供だし……」

ユリア「あんた、どこに目が付いてるのよ、あの子はもう十分大人よ」

 直也《あと一ヶ月で14歳だそうだ、この世界だと成人らしいじゃないか》

ユリア「おまけに、まあ、何を食べさせたんだか、発育のいいこと」


とにかく、サナの成長が、著しい。

日本なら普通にモデルにスカウトされてもおかしくないレベルになっている。

おまけに頭の上の丸耳とたれ目が、何とも愛くるしい。

これ、コミケで大騒ぎになる奴だ。


 直也《お前もサナの好意には気か付いてたんだろ?》

   「まあ、うすうすは………」

モルナ「あの日、アル様が矢を受けて馬車から落ちた時、サナが言ったんです、

    死ぬならアル様と一緒がいいって、愛してるって」

   「えっ」

 直也《お前がサナの膝枕でぐっすり眠っていた時だよ、ドローンで見てた》

ユリア「いい加減、腹を括ったらどうなの、この、ヘ・タ・レ」


   「わかったよ、サナを嫁にもらう」


 直也《よっしゃあ~、あ、結婚式はどうしよう》

ユリア「とりあえず、婚約者でいいんじゃない、式は落ち着いてからで」

 直也《そうだな、なんせ魔王の花嫁だし、用意も大変だ》


国を作ったら、アルには国王ではなく魔王と名乗ってもらうつもりだ。

だが、そうなると、サナは何と呼べばいいのか、魔女?なんか違うな。

まあ、王妃でいいか、本人嫌がるだろうけど、仕方がない。


ユリア「会場も作らないと、あと、招待客の宿泊施設も」

 直也《それは、俺が何とかするけど、教会とかどうする?》

ユリア「う~ん、こまったわね、教会って聖王国しか無いのよ」

 直也《聖王国は駄目だ、そうだ、無いなら作ろう神殿》

ユリア「そうね、それでいいから、進めましょう」


   「なんか、勝手に話が進んでいるんだが………」


ユリア「あんたに任せたら十年たっても式なんか、できないわよ」

 直也《うちのサナを行き遅れにするつもりか?許さんぞ》

   「わかったよ」

ユリア「あっ、でも結婚するまで夜はお預けだからね」

   「あ、あたりまえだろう1」

 直也《アルの脱童貞の為にも早く国を作ろう》

   「やかましい、ほっとけ」

ユリア「で、それはそうと、国の名前はどうするの?」


それは、もう二人で決めてあった。

この世界で最強の国家を作る為に、最強の生物の名を借りた。

誰の干渉も、誰の侵略も、誰の影響も受けない、そんな国を作る。


 「国の名前はドラゴニア、竜の国、ドラゴニアだ」



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