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ある魔導士の帰還  作者: 勝 ・ 仁
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死神の断罪

「さあ、グラムのクソ共、楽しい楽しいおしゃべりの時間だ」


情報を引き出す為、直ぐにでもぶち殺したいのを我慢して居るのに無様に

地面に張り付いている此のクソ共は、自分達の置かれている立場を理解で

きないらしい。


「ゴラア‼これ外しやがれくそガキが!」

「俺らグラムの貴族だぞ‼ただじゃすまねえぞ‼」

「頭を下げて謝れ、今なら許してやる!」


昔から権力をかさに着たこんな馬鹿が大嫌いだった。


「ああもう五月蠅いし面倒だ。4人とも始末しようかな、どうせ大した情報

など知らないだろうし」


小さくつぶやいたその言葉に黙ってブルブル震えていた男だけが反応した


「待ってください!何でもしゃべります!絶対にお役に立ってみせます

だから殺さないでください!お願いします‼寂寞せきばく様」


【何であいつらはこの状況で平気であの方に上から目線で罵倒できるんだ

そんなに死にたいのか?何処まで馬鹿なんだ!とにかく巻き添えは御免だ

すべて包み隠さず正直にしゃべって何としても許しを請わなければ待っ

ているのは”死”だけだ。】


「俺の二つ名まで知っているのか?」


「はい、4年前の変異海魔の大上陸の際、支援部隊に居りました。その

時の部隊長から全員に訓示されました。何が有っても絶対に逆らうなと

身分が高かろうが、腕に覚えがあろうが、例え騎士100人を集めようと

そんな物は何の役にも立たない。敵対したら最後、跡形もなく摺潰され

る。と」


……あながち間違ってはいないがえらい言われようだな


「防衛戦が終わって魔石を回収に行った時、見ちまったんです。まるで血

の海のように平野を埋め尽くているサイコロみたに細切れになった海魔と

風の音しか聞こえない戦場を見て、寂寞せきばくの本当の意味を」


【聞かれてもいない事をベラベラ喋っているのは分かっているが、恐怖で

歯止めが効かない。喋ってないと恐ろしくてたまらない】


「少しは聞けそうだな。良いだろう、今、魔法を解除してやる」


拘束を解かれた男はその場で深々と頭を下げた。


「今から俺の質「おい!何でその老いぼれだけなんだ!ふざけんな!」」

「早く解けよ!俺の実家は子爵だぞ!」

「まだかよ!」


キーキーうるさい。まるで猿だなこいつら。うんざりする。異空庫

から細剣を取り出し、そのまま喚き散らす3人の右耳を切り飛ばした


    「「「ギャー」」」

「五月蠅い.黙れ.一言でも口をきいたら次は右耳だ」

   「「「…………」」」


【えっ?これだけ罵詈雑言を垂れ流して右耳だけ?なら、俺も】


この予想はある意味正解である意味間違いだったと、この後、思い知らさ

れる事を男は知らない。


「これで良し。お前名前は?」

「はい。ヨアンと言います」

「お前、結構古参の兵士だろう何でこんな所に居る?」


ヨアンはちょっと言いにくそうに答えた。


「軍の物資をちょっと横流ししたんですが、それが部隊長が流す予定だ

った物資の一部だったらしくて、でも公にも出来ないもんだから、腹い

せに…」

「相変わらず腐ってんな。まあいい、この鉱山に他の人員は居るのか?」

「いえ、この鉱山自体が廃棄予定なんで誰もいません。ここが最後です」

「補給は?」

「20日に一度、前線の補給地から送られて来ます。3日後の予定です」

「前線?補給地?」

「ここから南に5日程のところに軍の大規模補給地があります。」

「3日後といったな。もう途中まで来てるのか、規模は?」

「馬車2台、護衛が8人、積み荷は食料です。あと鉱石を持ち帰ります」

「補給地にミスリルの精錬所が?」

「いいえ、横流しです」

「…はぁ、戦線は?」

「バセ川を挟んで膠着状態だと言ってましたが詳しくは知りません」

「いったいグラムはどうやって今まで勝って来た?」


そもそもこの大陸グラーツには8つの国が有るが、グラム聖王国の国力は

6番目。軍事力は数だけは3番目、実力は大陸最弱と言われていた。


「2年前頃からか兵士が急に何倍も増えたんです。」

「国民を片っ端から兵士にでもしたのか?役にたたんだろう」

「いえ、増えた兵士は全部…ゴブリンです」

「なんだと?」

「全部ゴブリンだったんです。凄い数でした」

「ゴブリンを隷従させたのか、一体誰が」

「リリアーナ王女様だって噂です」

「…あのクソ女…」

「でも、命令しているのは元帥です。何回か見た事があります」

「元帥…それ、もしかして、へたれのモントレイか?」

「へ、へたれ…ご存じで?」

「ああ、あの大上陸の際、自分の騎士団を放り出して最も安全な俺の後方

で震えてた連中の中の一人だ」


ご存じ?ああご存じだとも。

間抜な俺が愛してますだのお慕いしてますだのって王女の言葉に騙されて、

のこのこ暴走転移陣の罠に嵌まったときに王女の横でニヤニヤ笑ってたからな。


「あとタス皇国は無事か?ドラン王国は今どうなっている。メルドは?」

「ドランとメルドはもう在りませんが詳しくは何も…」


まあ一般兵士の知っている事などこの程度だろう。


「では、最後の質問だ。あの獣人の子供達を暴行したのは誰だ?」


【穏やかな声で問われたが、怒気が駄々洩れで、その顔さえまともに見れ

無い。俺がもし此処で一欠けでも誤魔化したら即、首が飛ぶ】


「あそこにいる3人です」

「お前は?」

「私は平民兵なので捕虜に対しての懲罰権利がありません。ですが治療も

何もしなかったのも事実です。申し訳ありません‼」


嘘をついている様には見えない。

まあ、あれ程脅したんだ、当たり前か。


「今まで何人死んだ?」

「10人以上は間違いないと思います」

「そうか、判った。まずお前には伝令になってもらう」

「伝令ですか?」

「そう、国に帰って王女と元帥に会え。そして俺が帰って来たことをあの

ゴミくず共にこう伝えろ。地獄を手土産に必ず会いに行く。とな」

「はい、必ず」

「では、明日にでもすぐに出ろ。それと…命拾いしたな」

「ひいっ‼」

「さあ、今度はお前らの番だ」


右耳からダラダラ血を流している3人は拘束を解いてやったとたんに立ち上

って襲ってきた。

どこまで馬鹿なんだろう、こいつら、学習するとか考察する頭は無いのだろうか?

何の対策もしてない訳がないではないか。

3人の右足にはまだ石の鎖が繋がっている。

当然、3人共盛大にすっころんだ。


「「「ギャッ」」」


3人を見下ろすその目は虫けらを見るものだった。

そして再び3人の足元に魔方陣が展開された。


「《《大地の理::流砂》》」


一瞬で3人の足元の地面がまるで塩の粒のような、極小の砂に変わった。

その砂はまず男達の膝までを飲み込んだ。

それからは蟻地獄さながらに、すり鉢の中心で男達を徐々に徐々にその顎に捕

えていった。

最初は罵声をあげていた男達は両足が砂に飲み込まれると今度は一転して命乞

いを始めた。


「「「すいませんでした!」」」

「一体何を言っているのかわからない」

「「「助けてください‼」」」

「なぜそんな事をしなきゃいけない?」

「「「俺たちが間違ってました‼」」」

「わかりきった事をさえずるな」

「「「何でもします‼お願いします‼」」」

「では、死ね!すぐ死ね!ここで死ね!」

「「「いやだー‼」」」

「死神が見てるぞ」


騒いでるうちに3人はもう首まで飲み込まれていた。

彼らは息絶えるまでの僅かな時間、恐怖に苛まれたまま砂に埋もれていくのだ。


「「「モガ‐‐」」」

「ほら、地獄の蓋が開いた」


砂は三人を飲み込んだあと僅かに淡い光を発すると元の岩だらけの地面に

戻っていった。

まるで何事も無かった様に。


「何万年か後、化石となって日の目を見る事でも期待しろ」


そうつぶやいたあと、直ぐにヨアンが真っ青な顔で声を掛けてきた。


「寂寞様、私、今すぐグラムへ向かおおとおもいます」


【恐い恐い恐い此処に居たくない、すぐ逃げたい、何も見たくない】


「ああ、構わない。それと証拠として此れを持って行け」

「このプレートは?」

「あの王女兼自称聖女のクソ女が、愛の証だとかなんとかほざきながら

寄越した俺専用の城内通行証だ」

「………わかりました。行って参ります」


ヨアンは隅に置いてある自分の荷物を両手で抱えると一目散に洞窟から

出て行った。

別にヨアンがこのまま逃げても問題は無い。

いずれその

首を貰い受けにグラム聖王国に行くつもりなのだから。


「さあ俺もひと眠りしないと。バイパスを維持してるから、いつまで経っ

ても魔力が十分に回復しない」


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