洞窟・要塞・ゴーレム
【 直也 】
アルが馬車を調達(本人は狩猟と言い張っていた)に出かけてから、例の
蜘蛛型ゴーレムの量産と改良に勤しんでいる。
目的はネズミ算式ゴーレム製造計画。
最初にアルに貰った蜘蛛型ゴーレムを改造した。
魔導書を読み込んで来たおかげで知識は問題無いし、手の代用さえ有れば
作り方はアルが見せてくれたので此れも問題ない。
1体の蜘蛛型ゴーレムが1体ずつ働き蟻型ゴーレムと蜘蛛型ゴーレムを製造し
2体が4体、4体が8体、と数を増やして、3時間を過ぎた頃には、大小合わせて
2000体以上の蜘蛛型ゴーレムと働き蟻型ゴーレムが完成した。
働き蟻型ゴーレム(小)は掘削と鉱石の採集を、働き蟻型ゴーレム(大)
は残土の運搬と整地・成形を行動設定し、今いる洞窟の奥側、山脈の中心
に向かって掘り進めて行った。
目的は鉱山の要塞化及びジオフロントの構築、目指すは新第三新〇京市だ
排出した岩石や残土は洞窟の入り口より下方に搬出口を作り処理していた
のだが、直ぐに問題に直面、このままでは雨が降れば取り付け道が、埋ま
ってしまう。
元々取り付け道は谷間を利用して作られているので、処理空間は大きく無
い為に半日もかからず問題に直面したのだ。
やはり、リム〇ールドやゴーイン〇メディイ〇ルの様なシュミレーション
ゲームと現実の建築工事とでは、何から何まで全くの別物だった。
俺は自己での解決を早々に諦め、情報を求めて元の世界への接続を試みた
が、とにかく最初は繋がりを維持するのも大変で、引っ切り無し断絶した
り、詰まったりを繰り返した。
そして原因が俺自身の魔素不足だと判ってからは、蜘蛛型ゴーレムを使い
洞窟の外に魔素の集積端末を伸ばしまくった。
お陰で有り余る程の魔素を確保する事が出来たし、あちらの世界との回線
数も増えて簡単に超大手建設会社のデータを閲覧出来たが、半分も判らん。
と、ゆうことで設計室の田中さん(25歳・独身・彼女なし・多分童貞)に
〝サルでも作れる地下要塞及び城門設計書”なる物を会社上層部㊙緊急制作
依頼として出しました。
さすがは設計室で№1の若手変態一級建築士。
信じられない事に彼はわずか半日で、作り上げてくれました。
大感謝ですが、これ絶対、似たような物作ってたよね。
ただ、架空の制作依頼ですから、提出先は当然存在しない訳で、田中さん
部長や常務連中に聞いて回ったが、見つかりません、そりゃそうです。
あああ、すみません。
田中さんが課長から滅茶苦茶、怒られてます。
こんな、いたずらに本気になるんじゃない、少し考えれば判る事だろう、
調子に乗るからこうなるんだ、馬鹿にも程がある、などなどなどなど。
いや、俺が悪いのは判ってるけど、この課長が正論なのも判るけど、しつ
こいんだよ、こいつ何時迄もネチネチネチネチネチ、いい加減腹が立つ。
かといって、この課長に痛い目を見せるのもなんか違うし。
で、俺がやったのは、田中さんに幸運を配達しようプロジェクト。
まずは金!ロ〇6を簡単操作、当たり玉以外を魔素で大きくコーティング。
はい、田中さんの銀行口座に約1億9千万円の振り込み確認しました。
あと去り際に田中さんに好意を持ってる後輩のOLが通るタイミングを見計
らってパソコンの画面に物凄くマイナーでディ-プなアニメの画像を、田中
さんが席を外した隙に表示させました。
見てます、見てます、彼女、目を見開いて固まったまま、見ています。
これが超好みって、二人ともかなり重度の変態なんじゃなかろうか。
まあ両想いで、尚且つこんなとんでもないアニメの同好者同士なら大丈夫
だろう。
それに此のままだと後5年で魔法使いの仲間入りだぞ、頑張れ田中さん。
◆◆◆◆◆◆ 洞窟入口 ◆◆◆◆◆◆
働き蟻型ゴーレム(大)が、運んできた岩石と残土をブロック状に加工し
て谷を跨ぐように門を作り始めた。
モデルはローマ帝国のアウレリアヌス城壁をモデルにアレンジを加えて見
ようと思う。
しかしその様子を蜘蛛型ゴーレムをを通して見ているが、日本の建築風景
とは似ても似つかない代物だ。
足場も重機もクレーンもない。
そこには群がる無数の働き蟻型ゴーレムが忙しく動いていた。
数百の蟻型ゴーレムの足場、数匹の蟻型ゴーレムの重機とクレーン。
その様は南米の軍隊蟻そのものだった。
黒い塊が徐々に移動すると、そこには完成した煉瓦色の建造物が現れる、
まるでSF映画の一場面の様だが、とにかく建築速度が異常の一言だ。
働き蟻型ゴーレムは、人間の数十倍の力と正確性を持っている上に、不眠
不休で作業を行なえるのだからは早いのは当然として、何より自立型指揮
ゴーレムに直也の精神を半AI化して同調させる事が出来たのが大きい。
魔法精神体となった直也は、豊富な魔素と膨大な保有知識を糧として急速
にその力を進化させ続けていた。
◆◆◆◆◆◆ 鉱山中心部 ◆◆◆◆◆◆
働き蟻型ゴーレム(小)達は洞窟から真北に約150マト(約150m)程、
掘り進み鉱山の中心部に到達すると、そこから四方八方に向かって試掘を
始めた。
軟弱地盤の確認、湧水の有無、新しい鉱脈の探査、などを調査したが、色
んな事がわかって来た。
軟弱な地盤は殆んどが洞窟周辺に集まっていて、恐らくこの洞窟は軟弱な
地盤を湧水や雨水が侵食して出来たのだろう。
だが、とにかく嬉しい大誤算はこの鉱山の北東側、特に直下50マト(50m)
辺りから鉄とミスリルの大鉱床が見つかった事と試掘の時点でごく少量の
魔鉱石が取れた事、後は良く判らない鉱石がいくつか。
どうもこの魔鉱石とやらは、鉱床や鉱脈が存在しないらしく、河原や海岸
畑や池の底などで偶然見つかる物だと魔導書に記載されていた。
俺の予想だが、魔鉱石とは長い年月をかけて何かの物質を核として魔素が
結晶化したものだと思う。
だから、魔素の通り易い水や砂、柔らかい土等の中で見つかっているが、
硬い岩盤の中からは、全く見つけられないのではないかと。
とにかくこれで、新しいゴーレムを作れる様になった。
アルから貰った魔鉱石は全部使っちまったから、新たな魔鉱石は、非常に
有難い。
鉱床や鉱脈を、優先的に掘削空間として鉱山全体の強度を損なわない様に
居住空間や格納空間を確保する事を蜘蛛型指揮ゴーレムに設定して作業さ
せたまま、意識を洞窟に戻した。
◆◆◆◆◆◆ 洞窟 ◆◆◆◆◆◆
洞窟の入り口からは、まだ朝日は侵入してはいないが、気配は、もう暫く
すれば朝だと伝えている。
まあ、蜘蛛型ゴーレム(小)が鉱山の中腹で周囲を警戒中に、東の山脈が、
ほんの僅か闇が薄くなったのを感知しただけなんだけどもね。
だが、そんな事に気を取られている場合ではない。
要塞構築と城門作成も指揮ゴーレムに任せてしまえばいい。
俺には、何よりも優先しなければならない、最も重要で重大なミッション
が控えているのだ。
ケモミミっ子達の朝ごはんを作る!
今の俺に、これ以上、大事な使命が有るだろうか?いや、無い!
万が一、作った料理を、たべたくない、おいしくない、などと言われたら
俺は耐えられずに、3年は引き籠る自信がある。
そうならない為にも全力で準備開始だ!
蜘蛛型ゴーレム40機が華麗なる調理の編隊飛行を展開。
まず献立は、胃に重くなく、もたれない物、それでありながら、満腹感と
満足感を得られる物でなければならない。
まずは、ボリューム満点メニューの紹介だ!
旗艦・レタス+チーズ+ゆで卵+トマト+ハム3段=厚切サンドイッチ
空母・ジャガイモ+玉ねぎ+ソーセージ+卵=スパニッシュオムレツ
巡洋艦・ベーコン+卵+キャベツ+片栗粉+スープの素=とろとろスープ
駆逐艦・チキンナゲット
潜水艦・ウサギさんりんご
補給艦・オレンジジュース
以上、堂々たる我が連合艦隊の威容を見よ!
もちろん、おかわり自由だ。
さあ、かかって来るがいい、腹ペコケモミミ軍団!
・
・
・
………………………………旗艦より入電!……………………………………
ザザザザザザッ…敵の大編隊襲来!至急!救援を請う!救援を請う!……
…………………………………ザザザッ………………………ザザザザザッ…
………空母スパニッシュオムレツ轟沈!旗艦厚切サンドイッチ大破!……
…巡洋艦とろとろスープ沈没!駆逐艦チキンナゲット機関停止!…………
………潜水艦ウサギさんりんご圧壊!補給艦オレンジジュース艦影なし!
・
台所港海軍本部
……………………連合艦隊、全艦通信途絶しました……………………………
・
・
まな板の上でひっくり返っている蜘蛛型ゴーレム、鍋に手を掛けたまま力
尽きている蜘蛛型ゴーレム、ジャガイモと包丁を持ったまま突っ伏して居
る蜘蛛型ゴーレム、調理台と竈の周辺では多数の蜘蛛型ゴーレムが、やや
痙攣しながら天井をにらんでいた。
……………死屍累々……………
侮っていた、過小評価だった、ちびっ子獣人達の食欲を完全に見誤った。
まさかこんな量が、胃に入ってしまうなんて思わなかった。
アルが言ってた3日で回復が実感出来るってこう言う事か。
まるで食べた先から消化吸収しているみたいだった。
補充予定の料理は食事開始早々に提供する羽目になり、下拵えしてた食材
を急ピッチで調理して何とか凌ぐ事ができた。
つまりこの惨状は、魔法精神体のくせに、精魂尽き果てた間抜けな阿呆が
醜態を齎した結果の産物である。
まあ、おなかポッコリで幸せそうにゴロゴロしている子供達を見ていると
味も量も満足したようで何よりだ。
だが、おれはここで有る物がこの空間に無い事に気がついた。
全ての日本人にとって絶対に無くてはならない物、もはや魂の一部であり、
60年以上前から現人神様より連綿と紡がれた血と涙と祈りの系譜。
人類の進化の頂点に座す命の依り代。
それは、それこそが、
……………自立型二足歩行型ロボット……………
鉄腕ア〇ムから始まり、ドラえ〇ん、ア〇レちゃんに受け継がれ、アイ〇、
ニ〇・オートマタ等へと到達した究極の生命体。
俺は問う!ロボット無くして、何がファンタジーか!何が異世界か!
まあ、俺の主張はこの際、置いといて、とにかくまずは材料の確保だが
先程、働き蟻型ゴーレム(小)が、ミスリルの鉱床を発見した。
ここは一つ総ミスリルで行こうじゃないか、全身青銀色に輝くロボット
いや、もうアンドロイドだな。
さあ採掘と精錬作業は働き蟻型ゴーレム(大)と蜘蛛型ゴーレ(大)に
任せて、まずは制作方向性の設定にかかろう。
俺の主機たるアンドロイドが1機、これは身長1.9mの執事型でやや細身、
顔はベネチア風フルフェイスマスク、武器は内蔵型にしてしまおう。
それと補助にメイドロイドを4機作成。
身長は1.7m程で2機がロングスカートタイプ、装備はやや家事に寄せた
仕様で武装は防御特化型。
もう2機はミディスカートタイプ、膝丈スカートで、高速移動仕様の攻撃
特化型に決めた。
ミニスカメイドロイドは邪道だから作成しない。
子供達の教育にも悪いからね。
邪道?絶対に作らない?これからもずっと?子供達が一人立ちしても?
自分一人のプライベート空間でも?ホントに?ほんとにホント?
・
・
〝申し訳ございません、わたくし、嘘をついておりました”
……………閑話休題……………
精錬されたミスリル鉱石が溜まる度に、執事型アンドロイドの部品をまず
骨格から作り始めた。
手や足の可動部分は人体の構造を忠実に再現したが、これはあらゆる動き
を補助出来る魔法が最も効果を齎すと思っているからだ。
実際に稼働すれば、残像しか残さないまるでアニメのような速度で手足を
動かす事が出来るはずだと思って居る。
更にミスリルは硬度でタングステンをも凌ぐくせに抗張力が高い。
これ程アンドロイドの素体に向いた金属も珍しい。
かなり過酷な使い方にも耐えられるだろう。
あと、コアになる魔鉱石は、なるたけデッカイ物をアルが帰ったらねだる
事にしよう。
そうこうしているうちにミスリルのストックが無くなった。
まあ、溜まるまで色々作って置こうと金属をこねくり回してしいたが、
いつの間にか子供達が興味深そうに眺めていた。
《見ててたのしいのか?》
リリ「うん!」
クリッカ「みててたのしい!」
ルナ「まんまるだあ」
ミア「まんまるだね」
屈託のない笑顔が何とも可愛い子達だ。
だがこの子達の身に降りかかった理不尽な過去を知ってしまった今、その
笑顔の裏に抑え込んでいる悲しみを考えると、簡単にその言葉を鵜呑みに
など出来ない。
だから、
《こんなものも出来るぞ》
アルが山積みにしたホームセンターの中に有った工具や機械に付いていた
ゴムで出来た部分を取り外して、大きなゴムボールを幾つも生成した。
「「「「うきゃあああぁぁwww」」」」
ちみっこ3人は躊躇なく飛びついて転がりまくっている。
《更にこんなものも作れる》
プラスチックとラバー部分を再錬成してチャンバラ用の剣と盾を幾つも
作った。後で兜も作ってやろう。
「「「うおおおお、かっけええぇぇ!」」」
3人の男の子はテンション爆上げで、もう一人前の戦士気取りだ。
さっそく配役決めで揉めている。
《さあ、お嬢様達にはこれを》
幸い金属は銅や銀、ステンレスから少量だが金だってあるので、色も形
も、思いのままだ。
櫛や簪に始まって腕輪やカチュ-シャ、最後はネックレスまで思い付く
端から作りまくった。
「「きゃあ、きゃあ」」
お姉ちゃん2人は、もうおしゃれに興味が出る年頃だもの、付けたり外し
たりと、引っ張り出した鏡の前で大忙しだ。
でも、指輪だけは作らないよ、それは未来の旦那さんの役目だからね。
さあ次は何にしようか、竹とんぼ?お手玉?ぬいぐるみ?ままごとセット?
いっそトランプやすごろく、リバーシ、ビーズアクセサリーセットもいい
なんなら一輪車でも三輪車でも自転車でも作ってやる!
毎日、遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで、疲れて眠る迄、遊んでもらう。
《心の底の悲しみなんて物に顔を出す暇など、絶対に与えてやるもんか》




