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魔術の訓練、それは恐ろしく簡単だった、拍子抜けするほどに。感覚をつかめば異能の力を自由自在に操ることが出来る。彼女が言うのは魔術とは、
外界のエネルギーを自身の中に取り込み変換して、外側に放出することを指すのだと言う。だが俺の魔術は何処か違う気がする。思っていたこと、心の内にあることを、
外の世界に実体化するイメージで、心に力を込めると、それが現実のモノとなるのだ。これではそれこそ魔法ではないか。彼女はこの結果に驚愕した。
「なにあなた、初心者、それも一日目でこんなにってやっぱりあなた普通の人じゃないわね!」
「どうやらそのようだな……」
俺の力、それは空想を具現化すること。これはおそらく人間が遍く持っていて、現実という制約の中で行われてきたことをショートカットして再現しているに過ぎない。だから想像できないことは、
現実にできないし、具体的なイメージがないと発動しない。だが、この能力で俺はやりたいことがあった。ヒーローだ。力があれば、世界の為に、人々の為に使いたい。
それなら俺の命にも意味がある様に思えるから。
「まずはコスチュームだな」
「コスチューム?なにそれ?」
「ヒーローには正体を隠す、仮初めの姿が必要なのさ」
「ヒーロー?それって物語の?」
「ああ、それを現実にしてみせる、俺にはその力があるんだから」