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ヒーロー、子供の頃ヒーローに憧れていた。悪の敵を倒し、世界を救う正義の味方。だがそれが御伽話で現実には存在しないことに気づいたのはいつからだろう。現実。

否応なくやってくる矛盾、不公正、理不尽。突きつけられたそれらに俺は逃げ出して空想の世界に逃げ込んだ。そこは架空のものであるから、現実に起こり得ないという理由で、一歩引いた視線から、

そこを見ることが出来て、それが俺にとっての救いになった。だがそれは一方で決して空想の中には入れないことを意味する。空想は空想、現実とは隔絶されたモノ。であるがゆえにそれに癒やしを感じ、

現実ではないのだからと安堵出来る。そう空想が現実になってしまえばそれはただのリアルであり決して逃れ得ぬ呪縛を意味するからだ。お伽噺を現実としてお伽噺のまま現実に現出する方法、

そんなことを思い求めながら現実を生きてきた。だからその悲願が遂に叶ったのかと思ったが――。

「これはひどい……」

図書室で歴史書を読む。見たことのない言語だが、読めた。理屈は分からないが、それは放っておこう。歴史書にはこうあった、今から80年前、世界規模の大戦争が起こり、

当時まだ最新鋭だった人殺しの道具、超高密度魔術結界を市街地に上空から展開し中の人間の魔力を暴走させ内側から溶かし殺した魔術、今は禁忌とされているがそれは実際に使われたものだったという。

なんでもその技術は魔力を高密度、高濃度にすることで新たなるエネルギー需給を満たす為に開発されたもので、それを軍事転用したものがこれに当たるという。奇妙な符号だ。

俺がここに来る前の日付は西暦2023年、その80年前は、ちょうど終戦の辺り、そしてそのきっかけとなったとされるもの(諸説あるが)がアメリカにおける広島、長崎への原子爆弾の投下。

それだけではない、この大戦の記述は、ある民族の虐殺とか、この世界が大いなる戦火に晒されたことなど、俺の世界の歴史と一致している。これはつまりこの世界は俺の現実の写し鏡なのではないか?

であるならこの世界に俺が現れた意味は何なのか。科学が魔法、しかし幻想ではなく列挙とした現実であるこの世界は一体何を求めて……。

「随分熱心ね」

「ここも俺の故郷と変わらないんだなと思ってな」

「言ったでしょここを天国とは思わないでって」

「ああ、身に沁みた。だが俺にはやることが出来た。さっきも言ったが魔術を教えてくれ」

「いいわ、素質があれば一ヶ月で使いこなせるようになる、もちろんそれなりの訓練を受けてだけど」

「そうか、よろしく頼む」

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