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男が目を覚ましたのは、知らない一室だった。見慣れない天井。広い部屋。見たことのない装飾。一体ここはどこなのか……?男は自分は死んだものだと思っていた、眠るような死、
それが男の精神を満たしていたからだ。だが今男は自分が生きていることを実感せずにはいられない。自分の身体がそれを如実に訴えている。
「あら、目を覚ましたのね」
女性の声がした。その女性は男の傍らに立ち、キャビネットの上の花瓶の手入れをしていた。
「君は…」
「あなた、路上で倒れていたのよ、誰かが救急車を呼んで、この病院に担ぎ込まれてきたってわけ、あなた名前は?」
「新城強、ここが病院なら俺の名前も分かってるはずだろ」
「いえ、それがあなたの身分を証明するものは何処のデータにもないのよ、名無しの人、本来そんなことはありえないからあなたが目を覚ましたとなればもうすぐ政府のお役人さまがここに来るわ」
「そんなバカな、いくら俺のようなクズでも、戸籍はあるぞ」
「無いから言ってるんじゃない、もう、どうやら記憶が混乱してるようね、もう少し休んでなさい」
そう言うと女性は部屋を立ち去った。一体ここは何処なのか。外国?だとしてもどうして俺がそんな場所にいるのか。混乱することばかりだ。俺は死んだ。それは確かなことな気がする。
命の消える灯火それが確かにあったのを記憶している。だが、いったい、だとすればここは……もしかして『転生』してしまったのか……?いやいや待てそんなライトノベルの様なことあり得るのか?
でもこれが現実だと五感が告げているし……一先ず情報収集か、この部屋を抜け出し外に出てみよう。男は起き上がると、ベットから這い出て、部屋の外に向かうことにした。
だが扉は施錠されていた。当たり前か、しかし内側からも開けられない構造ということは、おれは囚人まがいの扱いでも受けているのか。しかたないので扉を背にしてしゃがみこむ。
誰かが来るのを待つ。誰もこない。誰も。一時間が経った……突如扉が開く、扉を背にしていた男は崩れ落ちる様に倒れ込む。
「おっと……」
「あら、あなた、こんなところで何をしているの?」
「扉が開かないから、背もたれにしていた。再びだれかが来るのを待っていた」
「そう、で何がしたいの?ご飯?」
「いや、ここが何処なのか知りたい、そして俺の立場も」
「あなたの立場は非保護者よ、それ以上でもそれ以下でもない」
「という事は自由は無いのか?」
「まあね、身体が回復するまで、あなたはここで休んでもらう」
彼女の言葉を男は信じられるかどうか迷ったが他に選択肢は無かった為言われる通りにした。無論隙を伺って脱出しようとしたこともあったが、その試みはことごとく上手くいかなかった。
そして刻は過ぎ去り、男の容態が安定するのに一週間経ったとき……。