仮に新型コロナの三重変異株が日本に入ってきても死者数が爆発的に増えることはなさそう、ただ問題はワクチンによる「抗体依存性感染増強(ADE)」だとおもう。
さて、”インドでは新型コロナの三重変異株も発見されていて、一日一万人の死者が出ている可能性あり? やっぱり東京オリンピックは無理だと思う”で書いた通りインドはかなりやばい状況になってはいるようです。
では、そのインドの三重変異株が日本に入ってきたら日本もやばいことになるのかというと、どうもそうではなさそうなのですよね。
新型コロナウイルス感染症では、約80%の感染者は無症状か軽症で、高齢者を中心に約15%は重症肺炎となり、約5%は致死的な急性呼吸促迫症候群(ARDS: Acute Respiratory Distress Syndrome)になるとされています。
まず、重症肺炎になるのは高齢者や基礎疾患がある場合であることが多いというわけですが、さらに人種や環境に左右されるところがかなり大きいようです。
まずSARS-CoV-2はアンジオテンシン変換酵素2 (ACE2:angiotension converting enzyme 2)を受容体として感染し、自然免疫系とAngII-AT1Rを介して、NF-kBとSATA3転写因子の活性化を誘導し、STAT3はNF-kBの活性化を増強することにより、IL-6などの炎症性サイトカイン産生を増強します。
この状態がサイトカインストームですね。
血管内皮細胞がIL-6で刺激されると、PAI-1という血管内皮細胞や肝臓、血小板などに存在するタンパク質がふえるのですが、これは血管内皮が損傷したり、血小板が壊れたりしたときにも放出されます。
そしてPAI-1の血中量が増えると血栓の成長が促される、肺や心臓など多くの臓器で血栓ができることになります。
で、サイトカインストームが起きやすいのは高齢者、喫煙者、糖尿病や心臓病、高血圧などの基礎疾保有者、がん患者、ストレスがある患者が多いわけですが、これは高齢者、喫煙者、糖尿病や心臓病、高血圧などの基礎疾保有者、がん患者、ストレスがある患者は老化細胞の増加による炎症物質の血中放出や、死亡細胞内の物質流出により持続的な炎症持続が続いており、そのために新たな感染症の侵入に対応できないうえに、一旦炎症が起きると過剰な炎症反応を惹起するからであるようです。
しかし新型コロナウィルスにおいては乳児・幼児の重篤化や死亡例はほとんどありません。
これは新型コロナウイルスそのものには毒性がほぼないことを示しています。
なので、新型コロナで怖いのはサイトカインストームであって、コロナウイルスそのものではありません。
そして、サイトカインストームを起こさないためには、過剰な免疫反応を起こさないための免疫調整が大事です。
その免疫調整作用があるとして注目されているのがビタミンDで、体内に侵入したウイルスや細菌などに対して、過剰な免疫反応を抑制し、必要な免疫機能を促進します。
このため、新型コロナウイルス感染症だけでなく、通常のかぜやインフルエンザ、気管支炎や肺炎などの感染症の発症・悪化の予防にも関与することが分かっています。
ビタミンDはきくらげやシイタケ、魚や鶏卵などに多く含まれていますので、それをを積極的に摂取して、日光浴も行うことで十分量を確保できます。
また、腸管免疫は全身免疫の調整で大きな役割を果たしていて、腸管の中に全身の免疫細胞の60%が存在するとされ、乳酸菌などの善玉菌の存在が免疫を調整し、また悪玉菌の存在で全身の慢性炎症が持続し免疫老化が進行すると言われています。
なので乳酸菌や納豆菌を含む発酵食品の摂取をこころがけ、動物性脂肪の接種を控えることが必要です。
また、睡眠不足や怒りも免疫に大きくかかわっていることが解っており、慢性的な睡眠不足や過度なストレスによるアドレナリンやコルチゾールの放出は免疫力を下げると言われています。
なので、新型コロナの重篤化予防のために質の良い睡眠をとり、ビタミンDを多く含む植物性の発酵食品を積極的に摂取して、動物性脂肪は少なめにし、ぬるめの温度のお湯に適度な時間入浴しておけば、新型コロナをそこまで恐れることはないでしょう。
運動を行う場合は安静時より呼吸が過大にならないように散歩や自重での筋トレにとどめておいた方がいいようです。
なお、IL-6の働きをブロックする抗体医薬品の「アクテムラ」(一般名・トシリズマブ)によりサイトカインを抑えることもできるはずなので、IL-6が上昇する早期にアクテムラを投与すればPAI-1の産生を抑えることができ、これが有効な治療になるはずだったりします。
なお欧米の新型コロナの死亡率が高い理由の一つは高脂肪な食生活やパンなどの直接手でつかんで食べる食生活によるものがありそうですが、そのほかにIgAとよばれる特に外界と接触する粘膜、例えば副鼻腔や気管支、肺、腸などの粘膜に存在する抗体であるIgAが欠損しており、他の免疫機能は正常である選択的IgA欠損症が、健康な人においても比較的多い疾患であり、おおよそ 500人に1人の頻度とされていますが、日本などを含む東アジアでは数万人に1人なので新型コロナウイルスが欧米の人間の方が体内に侵入やすいというのもありそうです。
また、当初の中国や最近のインドで死者が多いのはおそらく大気汚染による気管支や肺の炎症が起きやすい環境が関係しているのではないかとも思います。
あと、インドの新規感染が増えたのは、むしろワクチンを接種したからではないかという話もあり、イスラエルでは新規感染者に占める重症割合が上がったままで、2回目接種後はオリジナル株への感染確率は大幅低下するが、相対的に変異株の南ア株に感染しやすくなるようです。
これは、ワクチンの接種などにより起こりうる「抗体依存性感染増強(ADE)」と呼ばれる現象によるもので、本来、ウイルスなどから体を守るはずの抗体が、免疫細胞などへのウイルスの感染を促進し、その後、ウイルスに感染した免疫細胞が暴走しサイトカインストームを起こす現象ですね。
ADEは、デング熱の重症化の機序の研究から知られるようになったのですが、デング熱は本来軽いウイルス感染症で重症化することはほとんどないのですが、重症化するデング出血熱という病態があります。
そしてこの重症化は再感染で起きます。
デング熱には4つの血清型があり、1型に感染すると1型に対する抗体が出来て1型にはもう生涯感染しても重症化することはないのですが、1型に感染した人が年月を経た後に他の血清型のウイルス、例えば2型に感染すると、1型に感染した際に獲得した抗体が2型に結合しますが、血清型が異なるためウイルスを殺すことができず、2回目の感染では1回目のウイルス感染の抗体が人体に対して悪い方向に働き、より効率的に感染するためデングが熱重症化するようです。
こういった状態になった抗体は感染増強抗体と呼ばれます。
したがってワクチンを作成するときはウイルスが変異をしても感染増強抗体を減弱させる必要があり、デング熱やエボラ出血熱だけでなくSARSやMERSのワクチン研究においても動物実験でADEが確認されていたりします。
つまりコロナの変異が進むと初期型株に対してのワクチンを打つほど、変異株の感染で重症化しやすくなる可能性があるというわけですね。