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強くなりすぎたSSSランク勇者、軍部に妬まれ追放される

群雄割拠、小さな国々がたくさん存在している時代。強さは最高の地位で、国々は強いものをこぞって集めていた。世の中でまだ数人しかいないSSSランク。主人公タクトはその中の1人だった。彼の活躍は目覚ましいものでその強さは間違いなくアルティア王国に貢献していた。しかし彼はいつも鉄仮面をつけており、ソーシャルディスタンスを気にする人間だったため周りには気味悪がられ、不信感を抱かれたり、時には悪い噂が流れたりしていた。王も強さはよく知っており頼もしいと思う反面でどこか信じきれないところがあった。何度かアルティア王国の王様はタクトの顔をみようと試みたことがあった。


ある日、王様はタクトに尋ねたことがあった。


「タクトよ、なぜお主はいつも仮面をかぶっておるのじゃ」

「お答えしかねます」

「ではその仮面を一度取ってくれぬか?」

「それもできかねます」

「なぜじゃ」

「ち、近いです。もう少し離れてください」

「なぜそんなに距離を気にするのじゃ」

「な、なんでもございません!」


タクトは走ってどこかへ行ってしまう。


「なんじゃ、別に理由くらい話してもいいのにのう」


そばでボディーガードを務めている親衛隊隊長が言う。


「何か怪しいことを隠しているかも知れませぬ。どうか用心してくださいませ」

「そうじゃな。さすがにああされては疑わずにもいれまい」


別の日には一緒にお風呂に入って顔を確かめようとしたこともあった。


「もし二人っきりで入浴されるのでしたら気をつけてください。大声を出せばすぐ駆けつけますがゆえ」

「おお、心配いらんよ。彼はそんな陰湿な手を使う者ではない」


そう言い、タクトの入浴中に乱入したのだが、入浴中にも鉄仮面をつけていた。


「なぜ風呂の中でも仮面をつけておるのじゃ」

「対面して顔が相手に見えてると思うと、落ち着いて話ができないんです」

「なんだ、そんなことだったのか」


王は少し安心した。それを聞くだけで不思議と疑念が晴れたような気がした。


「一度だけ顔を見たい。その仮面を取ってみてくれんか?」

「ちょっとのぼせてしまったみたいなので先に出ますね」

「ちょっと…」


ザバァという音を立ててそそくさと出て行ってしまった。

王は独り言を言いながらのぼせるまで浸かった。


「全く、彼の徹底ぶりには驚きを通り越して尊敬するよ。もう少し心を開いてくれると良いんだがねぇ。ちんちん見られても良いのに顔を見られると恥ずかしい、か…」


またまた違う日には国内No.1美女と謳われた女をタクトに求愛させ、キスをする時に素顔を垣間見ようとしたこともあった。


「私、あなた様のことが以前より気になっておりました。付き合っていただけませんか?もしそうしていただけるのなら今ここでキスしてくださいまし」

「ご、ごめんなさい〜」


タクトは逃げるように去る。


「な!?我が国一の美女を断った!?そんな男がおるのか」

「にわかには信じがたいですがいるようですね」

「女に興味が無いのか…?」

「それはわかりませんが私はタクト様が女性と関係を持ったというのは未だ噂すら耳にしておりませぬ」

「それほどに武術を愛しておると申すのか。わしもう感激してしまいそうじゃ」

「しかしぽっと出の素性の知れぬ者だということを忘れてはなりませぬ」

「そうじゃな。一応警戒はしておくがせめて素顔くらいは見たいのう。そうすればわしも安心できるんじゃが」


と、王も不信感を募らせながらも信頼しており、いつかは分かり合える時が来ると信じてそのままの関係が続いていた。


しかし、事件は起こってしまった。



ーーパリーン


「ゴフッ!?」

「お、王様!?しっかりしてください!」

「ゴホッゴホッ」


ーードサッ


「猛毒だ。早くヒーラーを!」

「なんだなんだ?」

「王様が倒れられたそうよ」


タクトが駆けつけたときにはもう遅かった。


「ご臨終です」


その言葉を聞いたとき、多くの人が悲しんだ。王様は部下からは人気があったし、味方から殺したいほど憎まれているとは考えにくかった。いろいろな噂が立ったが結局謎に包まれたままその事件は解決しなかった。


それからというもの、後継問題が揉めに揉めた。王は妻に王妃が一人いたが子供を作っておらず、後継がいなかった。最初は王妃が女王となり国を治める案が浮上したが軍部の最高司令官、ニックが猛反対。そしてさらに「あなたが王になるくらいならクーデターを起こしあなたの首を取る」とニックが王妃を脅し、このご時世においては比較的平和だったこの国の空気が張り詰めた。

その甲斐もあってかニックが王となった。


そして今日はニック国王陛下に呼び出されてきてみたのだが…。

シンとした中ニックが口を開く。


「諸君、君たちはなぜ呼び出されたかわかっているかな?」


皆顔を見合わせる。


「では単刀直入に言おう。たった今より諸君らをこの国から追放する!」


その場でどよめきが起こる。


「納得できません!どうして私たちが追放されるのですか!?」


驚くべきことにそこには前王妃もいた。


「私がこの国を担い、再建するにあたって、不要と見なす人物は全て排除することにした」

「どういう基準なのですか!?」

「私が部下と話し合った結果だ。基準は私が危険と思うかどうかだ」

「それで私たちはどこへ行けばいいのでしょうか」

「どこへでも好きなところに行くがいい。命が取られないだけありがたいと思え」

「そ、そんな…」


ヤジと文句が飛ぶ。


「基準が曖昧すぎます!」

「納得のいく説明をくれ!」

「追放の理由になってないぞ!」

「静まれ!問答無用だ!従わないものはここで斬首刑とする!」


ニックの怒声により全員鎮まる。


「それからタクトよ。貴様はこの国から永久追放する。二度とこの地に足を踏み入れることは許可しない」


再び場がざわつく。


「SSSラン勇者が永久追放だってよ」

「軍事の最前線でいつも戦ってたのに」

「これから戦いが起こる時はどうするんだろうか」


差し詰め手柄を取られて気に入らなかったとか素性の知れない奴が一人で一国の軍隊並みの強さを誇っているのが危険視されたとかそういう理由だろう。


「ではこれより全員を追放する!全員、好きなところに行くが良い!」


兵たちに連れられてタクトたちは王国の領域の外へと追い出された。

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