#1 顔合わせをしました
『聖なる獣は聖暁の乙女を求める』。
それがこの世界というか乙女ゲーのタイトルらしい。わたし「ジアンナ・ゲイル」はそのゲームに登場する、いわゆる悪役令嬢というか悪役兼主人公のライバルだ。全ルート共通で最後は死にます。ちなみに死ぬほど興味ないとおもうけど転生前はどこにでもいるありふれた1会社員でしたよろしく。
しかし乙女ゲって結構悪役に救いがないんだね。プレイヤーにとっては軽率に「わるいやつは ばつ をうけてしにました」ザマアできるし、制作側にとってはとりあえず殺しとけばオチがつくだろみたいなノリなんだろうか。変に掘り下げすると製作費増えるし。追加シナリオ分とかスチル分とか? いや乙女ゲやったことないけど。悪役令嬢を改心させてからの友情ルートとかどこ需要って話だよね。いや知らんけど。
知らんのになんで「ジアンナ」のネタバレを知ってるのかというと、攻略本があった+読んだから。
攻略キャラのルートごとにページが色分けしてあって、ゲーム本体を知らない+乙女ゲ初心者にも大変わかりやすかったです。悪役の扱いが雑なわりに。ルートシナリオに凝った分のしわよせがジアンナにいったんだろうとわたしは予想した。すごい迷惑。
「それで、ショーコは何が好き? どういうやつがタイプなの?」
「ショーコ、よければこのあと庭園を散歩しないか」
「ショーコ、」
「ショーコ、」
「以下略」
以上聖なる獣の化身さまのお声をお届けしましたー。見事に花村祥子にしか興味がない。わたしいなくてよくね? むしろ好感度上げ必要なの、このゲーム。
攻略本によれば選択肢選んで攻略対象の親密度を上げていくシステムらしいけど、最初から明らか全員マックスじゃん。つか一応社交の場なんだしおざなりでもなんでもいいから誰かわたしに話しかけろ。貴公子ちゃうんか。女の子があからさまに無視されてんだぞ。
わたしは誰にも気づかれないように(そもそも誰も気づくわけがないけど)聖堂を出た。獣どもとの顔見せは終わったんだしいいでしょ、もう。
はいはい、解散解散。