#14 五番聖都に着きました
五番聖都はイドの町とはまた別の趣がある街だった。
門があるのは一緒。そこから街の中心部に向かって大通りが貫いて、終着点にひときわ大きな建物がある。あれが聖人ヴェルニさまのいる場所なんだろうということは、アレクくんにきかなくてもわかった。こちらも歴史の古い街なのか、なんとなく石造りの家が目立つ。
アレクくんがガイドしてくれた。
「五大聖都は、聖人さまを求める人々によってつくられた街です、…じゃない、だよ」
なるほど見れば教会へ向かう人が多いようだ。服装はさまざまだけど、しばしば頭にヒジャブともクーフィーヤともつかない白い布をかぶっている人が見える。アレクくんにたずねてみると、これは聖人さまをまねたもので、特に信心深い人たちがするスタイルなのだとか。
ちなみに五大聖都の前につく第一番、二番などの数字は単なる記号的なもので、格を表すものではないそうだ。
わたしはアレクくんのマントを引いた。
「アレクくん、宿とろう宿」
人が多い場所は自然宿屋も多い。土産物屋が大通りに沿ってずらりと並ぶさまは、有名神社の門前町を思わせた。これは買い物が楽しそうだなあ。
宿を確保し、部屋に荷物を置く。八畳ほどの部屋にベッドが二つとラックのような収容スペースが用意されていた。二階の部屋なので、窓からは通りをのぞむことができる。
いい部屋だねとわたしは感想を述べた。動線と室内面積に応じて配置されたベッドを見、アレクくんが困ったようにわたしを見る。
「ジアンナさん、俺、やっぱり外で」
「そんなに心配しなくても、べつにとって食いはしないから」
「!?」
アレクくんが真っ赤になった。
わたしは知ってる。この五日の間、アレクくんは昼と夜とで、さりげなくわたしに対する距離をかえていた。夜、寝るときなんかはとくに。
背中を向けて、一人旅のあいだの他愛ないできごとを聞かせてくれた。わたしはそんなアレクくんのしずかな声を聞きながら眠りについていたのだけど、たぶんこわがらせないように気を遣ってくれてたんだと思う。
そういう彼だ。何かされるかもって警戒する方が失礼じゃない?
「……」
むう、と拗ねたように沈黙して、アレクくんがベッドに片腕をついた。クッションの具合をたしかめるように何度か体重をかけて、「これなら体が痛くならないね」と言う。
わたしもアレクくんの真似をしてみた。顔を近づけてみると清潔そうなにおいがする。
「ぐっすり寝られそう。へへ、夜が楽しみだなー」
実はちょっと寝不足なんだよね。最初の選択肢のあとの死亡END、あのときの夢をみるせいだ。初日なんかだから思いっきり悲鳴を上げてしまって、アレクくんをびっくりさせてしまった。
「…アレクくんも、ゆっくり寝られるね?」
ベッドに顔をうずめるようにしたまま、わたしはアレクくんを見上げる。というのも、夜闇に乗じた襲撃も旅にはつきものということで、ここまでずっとアレクくんに寝ずの番を強いてしまったからだ。夜寝るのが怖くて見張りの交替も提案してみたけど、ついに容れられることはなかった。アレクくんが寝物語をしてくれるようになったのはそれからだった。
「そうだね」
言って、アレクくんがさりげなくわたしから目をそらす。「せめて廊下で寝ようかなあ」とつぶやくのが聞こえた。




