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ほらやっぱり雑魚だった

 盗賊団のアジトは、自然の洞窟を拡張することで作られているようだ。入り口は小さいが、先ほど倒した盗賊の数から考えると、見た目どおりの大きさということはあり得ない。


 洞窟の周囲には遮蔽物がなく、これ以上身を隠しながら進むことは不可能だ。もし見つかれば、入り口にいる見張りの男が仲間に異常事態を知らせ、盗賊の全勢力がスヴェンたちに殺到するだろう。


 スヴェンは草陰に隠れたまま、どうしようかと悩み、そして考えるのが面倒になった。こういう時こそ、有能な部下の出番ではないか。


「クリス」

「なんです?」


 スヴェンはできる限りの優しげな表情をした。それを見たクリスの顔がなぜだか引きつる。見てはならないものを見た恐怖の表情、とでも形容すべきだろうか。


「次はお前の番だ」


 笑顔でそう告げ、親指を上げて健闘を祈ると、草の陰に隠れたクリスを力いっぱい蹴飛ばした。ガサガサと草を揺らしながら、クリスは頭から転んだ。


「誰だ!」


 蹴飛ばされて草陰から出てしまったクリスを見て、見張りの男が鋭い誰何の声をあげる。


「一体どこから来やがった! 見張りはどうした!」

「敵襲です、兄貴! 見張りなら、この男が全部倒してました!」


 一瞬で手のひらを返したクリスは、スヴェンが隠れている草むらを示して叫ぶ。盗賊は驚愕に目を見開いた。


「なに! 本当だろうな? って待て。てめえは誰だ! 俺は知らねえぞ!」

「新入りですので!」

「嘘つくんじゃねえ! さてはてめえが見張りの連中を……」

「ち、違いますって」


 クリスは慌てふためき、やがてぽんと手を打つと、背負った身の丈ほどの槌を担ぎ上げ、スヴェンのいる草むらに向けて勢いよく振り下ろした。


「うおおおおっ!?」


 間一髪で、スヴェンはクリスの槌をかわした。さっきまでスヴェンが立っていた地面は、槌に潰されて円形のクレーターを作っている。


 スヴェンが出てきたことで、クリスは満足げに「ほら」と盗賊に笑顔を向けた。しかし返ってきたのは棍棒の切っ先だった。

 ギリギリのところで棍棒をかわすと、クリスは目を白黒させて、呆然とつぶやく。


「な、なんで?」

「お前と俺が同じ服を着ているからだろう。どう見ても仲間だ。そもそも軍服だしな」


 スヴェンの冷静な言葉に、クリスは自分の格好とスヴェンの格好を交互に見て、がっくりと膝をつく。


「そっか、制服……。見慣れすぎて忘れてた……」

「ふざけた野郎どもだ。喧嘩売ってんなら買うぞコラ!」

「いいええ、喧嘩を売るなんて滅相もない」

「歯ぁ食いしばれや!」


 見張りの男は棍棒をクリスに叩きつけてきた。クリスは危なげなくそれをかわす。「喧嘩は嫌いなんだけどなあ」とつぶやきながら、大槌を振るった。


 クリスの大槌は、その巨大さからもわかるように、かなりの重量がある。それをクリスほどの剛力で叩きつけられたら、殺意などなくても相手は死にかねない。


 クリスは器用に盗賊の急所を外して槌を振るった。さすがにこんなところで殺人を犯すつもりはないようだ。

 盗賊を一人片付けると、クリスはかいてもいない汗をぬぐって、一仕事終えたかのような満足げな表情をした。


「これで俺はお役御免っすね!」

「いやいや。ほら」


 スヴェンは洞窟の入り口を指差した。そこからは、さながらアリの巣のように大量の盗賊が飛び出してくるところだった。思っていた以上に、この洞窟は奥が深いらしい。この量では、たとえスヴェンが奮闘したとしても、残りの盗賊がクリスにも殺到することとなるだろう。


「頑張れ」


 スヴェンの応援に、クリスはがっくりと肩を落とした。







「どりゃああああっ」


 クリスの一撃で、盗賊A、Bが吹っ飛んだ。


「はあっ!」


 スヴェンの肘打ちで、盗賊Cが地に伏した。

 辺りは気絶した盗賊たちで足の踏み場がないほどになり、非常に戦いにくくなっている。盗賊のリーダーと思しき男は、その惨状にあっけにとられている。現実を受け入れられていない様子だ。


「な、なんなんだてめえらは!」


 何と問われても、スヴェンたちには答えようがない。まさか王子の護衛隊ですと答えても、きっと信じてはもらえないだろう。なにしろ王子がこの場にいないのだから。


「その服……軍の奴だな!? うちを潰しにきたのか!?」

「いや、別に」

「盗賊団に興味はないです」


 あっさりと答える二人に、頭はむしろ涙目だ。


「じゃあ何しに来たんだよぉ!」


 スヴェンはその頭の様子を見て、むしろ好機と見た。交渉の余地があるかもしれない。


「俺たちは人を探しに来たんだ。金髪碧眼の優男。知ってるなら洗いざらい吐け。そうすれば命だけは見逃してやる」

「……うわあ」


 真顔で交渉に入るスヴェンを見て、クリスは全力で引いていた。平和的交渉を理解できない部下に、呆れてため息をつく。


「き、金髪の男なら……その、地下牢に……」


 頭はなぜか言い淀んだ。まさかとは思いながらも、スヴェンはつい嫌な想像をしてしまう。王子に傷一つでもあれば、それはすべてスヴェンの責任になるのだ。


「クリス! こいつらを見張っておけ。逃げようとしたら殺しても構わない」

「あいさー」


 スヴェンの脅しに、盗賊たちは「ひぃっ」と身を縮ませた。スヴェンはそんな盗賊たちに見向きもせずに、盗賊団のアジトである洞窟の中へ足を踏み入れた。

 



名前:盗賊の頭


良い点

この状況で俺に良い点とか聞いてくる作者の神経はすごいと思います。


気になる点

盗賊にも人生があり、犯罪者に身を落とした経緯があります。

そこに触れずに倒して、あまつさえ盗賊AとかBとか呼ぶのは失礼だと思います。


一言

黒髪の男と茶髪の男、彼らは本当に人間ですか?

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