夜も更けたし、そろそろ活動開始かな
コメディに振り切った話を書いていきたいと思います。
ぜひぜひ、応援よろしくお願いいたします!
「さて……と」
時刻は深夜二時を回った。たしか遠い東の国では、草木も眠る丑三つ時とか言うんだっけ。化物が跋扈する時間だとかで、その時刻には、誰もが外出を控えるらしい。
僕に言わせれば、それはナンセンスだ。せっかく化物が彼らの方から歩いてきてくれるのだから、菓子折りでも持って、こちらから挨拶しに行くべきだとは思わないのだろうか。僕なら行くね。誰になんと言われようと、絶対行く。
それはさておき。
そんな刻限に、僕は眠るどころか、いそいそとベッドから這い出した。
シルクの寝間着を脱ぎ捨て、ダボついた真っ黒な服に着替える。それから長い金の髪をまとめて、フードにしまい込んだ。あまり格好がいいとは言えないが、まあそれは、どこかで適当な服を買って、着替えればいい。
全ての用意を終えると、部屋に置かれた大きすぎる鏡にその身を晒す。その中には、世界で一番美しい容姿を持ち、賢者さえ嫉妬するほどに利発な若者が映っていた。
「完璧」
準備は万端。さて、ここからだ。
今、僕の護衛を務めている男、スヴェンは、僕の予想以上に優秀だった。何がすごいって、この僕相手に、一切の容赦もためらいもしないことだ。
今日だって彼は、この扉の向こうに数々の罠を仕掛けている。
「ふふ……。でも、この程度で僕を止めようだなんて、まだまだだね」
この僕を止めたいのなら、罠を仕掛けたことに、気付かれないようにしないと。彼は、罠がある時点で僕が諦めると踏んだのだろうが……その考えは甘すぎる。
僕は罠があると知りながら、鼻歌交じりに扉を開け放……
「おっと」
違和感があった。僕が慣れ親しんだ城のドアノブにしては、いささか光沢が弱い。よくよく見てみると、これがスヴェンの罠であることが分かった。更によく見ると、それは二重、いや、三重トラップになっている。
「ははあ……。少しは彼も学習してるってわけか」
でも、まだまだ。三重の罠を用意したのには頭が下がるけど、隠蔽方法に緩急をつけるべきだったな。これじゃあ、一つでも三つでも変わらない。僕は懐に隠し持っていた工具であっさりとノブを解体すると、扉を開け放った。
物音に反応し、部屋の前に設置してあったクリスタルが僕の方を向く。しかしクリスタルには、目の前にいる僕を見つけることはできない。
僕特製、ステルス機能付きパーカーのおかげだ。
そのまま目の前を通り過ぎようとして、ふと、悪戯心が疼いた。
「良いこと、思いつーいたっ」
僕はクリスタルの前にしゃがみ込む。クリスタルの背部には、命令を書き換えることができるスイッチがあるはずだ。無論ロックくらいかかっているだろうが……。
「僕にかかればそれくらい、文字通り朝飯前ってね」
青筋を立てて怒りをこらえる、スヴェンの姿が頭に浮かぶ。
「……ふふっ」
スヴェンはどのくらいで、僕を見つけることができるかな? たっぷりヒントをあげるつもりだから、是非とも頑張って欲しいものだ。
僕はにっこりと、満面の笑みを浮かべた。
ああ……楽しくなってきたじゃないか!
名前:王子
良い点
王子目線の話が良いです。
気になる点
王子の容姿を、もっと丁寧に描写するべきだと思います。
これではせっかくの王子の美しさが伝わりません。
一言
タイトルに惹かれないです。
例えば「王子の地方漫遊記」とかどうでしょう。