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四月一日の告白(千文字小説)

作者: 小出元春




 俺とアイツが初めて出会ったのは幼稚園に入園するより少し前だった。家が近所で、親同士仲が良く、よく遊んでいた。お互いに兄妹も居なかったから駆けっこやオママゴトをして遊んだ。

 何となくだけど、俺の初恋はアイツだったのかもしれない。俺はアイツの気をひきたくて、色んな嘘をついた。そういう嘘は幼稚園に入園してからもやってしまい、先生たちを困らせた。小学校に入学してからも続けていたら、クラスでちょっとした問題になってしまい、やっと『ダメなこと』だと分かった。今となっては思い出したくない黒歴史だ。


 あれから俺は高校を卒業し、社会人になった。

 仕事が終わり、セレクトショップに寄る。アパートへ帰りながら、その後のシミュレーションを頭の中で繰り返す。

 俺たちが『恋人』に変わり、アイツと同棲を始めてから、今日で一年になる。三年前の今日、ヘタレな俺は、本気とも冗談とも取れないようなあやふやな言葉で交際を申し込んだ。言った瞬間(ヤバい、断られる!)と思ったけど、アイツは俺の顔をじっと見て、「宜しくお願いします」って言って笑ってくれた。だから今日、彼女にこれを渡そうと思う。『恋人』から『夫婦』になって下さいと。次こそはしっかりした言葉で伝えたくて、昨日からずっとそわそわしている。

 もし、アイツが俺の言葉をホントに信じてくれるなら……

 もし、アイツと同じ気持ちだったら……



 彼と初めて出会ったのは幼稚園に入園するより少し前だったと思う。家が近所で、親同士仲が良かったから、よく遊んでいた。お互いに姉弟も居なかったからオママゴトや駆けっこをして遊んだ。彼は突拍子もなく変な嘘をついて私を困らせた。「おへそのゴマを取ると死んじゃうんだよ」とか「スイカの種を食べちゃうと、お腹の中で芽が出て死んじゃうんだよ」なんていうのもあった。

 それでも同じ幼稚園、小学校と通っていたら、彼の嘘を見分けられるようになった。

 彼は嘘をつくとき、右の眉が上がる。他の同級生はその癖に気付いてなくって、私だけ彼の嘘が分かり、笑わないようにするのが大変だった。


 家で彼の帰りを待つ。私たちが『恋人』に変わり、彼と同棲してから早一年が経った。

今日、病院で診察を受けたら、赤ちゃんができているらしい。なんか昨日から「もしかしたら」とそわそわしっぱなしだった。

 もし、彼が私の言葉を本当に信じてくれるなら……

 もし、彼と同じ気持ちだったら……




 『こんなに嬉しいことはない』

読んでいただき、ありがとうございます。


嘘いう間もなく、一日が終わりそうです……一日が早い……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の数々の嘘が、ヒロインの視点を通して可愛いもののように感じられたところが良かったです。二人の今後に祝福を。
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