2、寄り道
カランカラン
ドアが開けられる。
店内は埃っぽく薄暗い。
壁や棚には武器が商品として所狭しと並べられている。
商品には剣や槍、銃、杖、弓なども置かれている。
が、その商品はどこかおかしい。
刃が3つついた剣や用途不明な鎖のついた杖に弦の二本ある弓、誰が買うんだ?と思わずにはいられない。
「おーい!いるかー?」
「はいはいいますよーっと。」
呼びかけに応え、背の高く、髪がボサボサで、細身の、眼鏡をした男性が店の奥から足下に置いてある何かを蹴りながら慌ただしく現れた。
「ああやっぱり!ルーカじゃないか!よく来てくれたねぇ。」
勢いよくカウンターに手をつき、嬉しそうに歓迎してくる。
「ああ。銃のメンテナンスを頼みたくてね。」
「お安いご用さぁ。その代わりに新しいアイディアをくれないかい?」
そう言い後ろの椅子に勢いよく座った。
そして辺りに置いてある紙を掴み、どこからか取り出したペンを構えた。
店の中の商品を置くスペースは小綺麗に掃除されているのに対してカウンターの内側は物が乱雑に置かれている。
本人曰わく自分では物を把握しているらしいがどうだか。
自分の事より自分の興味を優先させる男である事をルーカは何となくわかっていた。
「うん?まあいいけど。自分で考え…た結果がこれだからな。」
ルーカはそう言いながら近くの剣を手にとった。
剣は鈍く光り始める。
「酷いねぇ。そもそもこの銃を作れるのは私のお蔭なんだけどねぇ。その剣はどうだい?洞窟に持っていけば松明要らずさ!」
「…う、うーん。使わないと思う…。」
「そうかい…。今回のはいけると思ったんだけどねぇ…。」
店の男は酷く落胆したような様子をみせた。
「ああ、そう言えば聞きたいんだけどこの銃、装填数増やせるか?」
ルーカが尋ねると男は興味深そうな顔をした。
「装填数をねぇ…。」
「ああ。この銃、装填は魔法でされるだろ?だから従来の銃の構造と違っても問題ないだろう。何とかならないか?」
「うーん。可能か不可能かで言えば可能だろうね。でもねぇ、その要望だと既製品の改造じゃあ造れないし、新しく造るにも一から試行錯誤しなくちゃならなくなるからねぇ。それなりの値段になるねえ。」
君に払えるのかい?男はニヤニヤと笑いながら尋ねてくる。
「そうか…。うーん。」
と悩む素振りを見せつつ諦めようと考えていた。
「まあ、方法は考えてみるよ。他ならぬ君の頼みだからねぇ。無理だろうけどねぇ。」
「よろしく頼むよ。」
「別に私は一生かけて払ってくれるとかでも構わないよ。」
「ふざけんな。誰がそんなもん組むか。」
ルーカは静かに返した。
男は残念そうにしつつ話題をかえた。
「それで、銃はいつ取りにくるんだい?」
「そうだね、仕事が…。」
ルーカはハッとした顔をして、
「なあ、銃ってもっと小さいやつあるだろ?それを例えば軽くとか、ブレないようにとか、そういう風にできないか?」
「なんだい突然?その程度なら出来るだろうけどそんなことして何になるんだい?」
「まあ…ね。」
ルーカは曖昧な返事をした。
「いいよ。君の思いつきは信頼してるからねぇ。」
「ありがとう。助かるよ。」
ルーカは店をあとにした。。