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イヴ  作者: 枢木遠
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1、誘い

「あ、お帰りなさい!ルーカさん。どうでした?」


受付の方から女性が声をかけてきた。


「仕事の方はまあまあだね。ただ、あの国はどうも好きになれないね。」


「そうですか?景色が綺麗でいいところじゃないですか。」


と、女性は顎に指を当て小首を傾げた。


「そういう面ではね。でも街の匂いがね、葉巻って言うんだけっけ?あれこっちじゃ危険だから禁止なんだろ?」


そう答えながら受付カウンターにもたれかかった。


「かもしれない、ですけどね。そんなことより仕事が来てますよ。オズワルドさんからです。」


そう言うと受付の女性は奥へ走って行き、一枚の紙を持って戻ってくる。


「まーたあいつかぁ。」


ルーカは溜め息をついた。


「まあまあそう言わずに、国の調査チームのウォーカーなんですから。あ、明日の昼頃直接あって依頼したいそうですよ。」


「はいはい、わかったよ。」


そう言ってルーカは手をヒラヒラと振りながらその場をあとにした。


◇◆◇◆


次の日、ルーカは昼食を食べながらオズワルドを待っていた。ここ昼時にも関わらず出入りする人は多く、受付にもウォーカーやウォーカーに依頼を持ってきた人が絶えず来ている。

ウォーカーへの依頼は魔物の討伐や未知の場所の調査などが主になっている。

これはウォーカーという職業の起源に由来している。

過去に歴史に名を残す偉業や功績を成した者がいた。

それに憧れた者や自分の信じた夢を追いかけ続け、同じく名を残そうとした者が多くいた。

そんな彼らの実力に目をつけ、ビジネスにした


「久しぶりだなルーカ。」


受付の方をぼんやりと眺めていたルーカであったが近づいてくる気配にはしっかりと気づいていた。


「そうでもないだろ。」


と、目線を向けながら答えた。


「相変わらず、といったところか。早速仕事の話をしよう。」


相変わらずはお互い様だろう、と思う。

何故か嬉しそうにするオズワルドがそう言い終えた頃、背後から一人の女性が現れた。

見覚えのない、そう思っていると


「まず始めに私の紹介をしてくれないか?」


とオズワルドに話しかけた。


「ええ、わかっていますよ。ルーカ!こちらの方が王国軍第1軍副軍団長グレーテ様だ」


「よろしく頼む。」


そう言うとグレーテは優雅に一礼をした。

ルーカは女性の正体に一瞬、驚きはしたが女性にはそれを納得させるだけの何かを感じた。


「私はルーカと申します。まさか王国軍最強と謳われる方にお会いできるとは。光栄です。」


立ち上がりそう挨拶し、相手の方を見ると視線を下げ、寂しげにしているのが見て取れた。


「どうかしましたか?」


ルーカの問いにグレーテは少し困ったような表情で笑みを浮かべ、


「軍に長くいるせいか友人と呼べる人がいなくてな、こう見えても私は君たちと年はそれほど変わらないんだ。だからもっと気軽に接して欲しいのだが…。」


それに最強というのも…

その言葉に、寂しさの中に少しだけ期待の籠った表情にルーカは戸惑い、

しかし、その刹那には決断は下せず、オズワルドに助けを求めようと視線をやるも無表情で佇み、目を合わせない。

ルーカはふーっと一呼吸置くと、観念したように


「わかったよ。よろしく。」


その言葉を聞いたグレーテは満足気な表情を見せ、


「ああ、よろしく頼む。」


と返した。


「さてと…。オズワルド!」


「はい。」


オズワルドは資料を取り出し、ルーカの前に置いた。


「今回の仕事内容だ。ちょっと厄介なことがあってな、とりあえず目を通して見てくれ。」


言われたとおりにルーカは資料に目を通した。


「…いつも通りに見えるが?」


と、眉間に皺を寄せた。


「内容はな。実はこの任務に姫様がついて来ると言い始めてな。」


「は?」


「それでルーカには姫様の護衛チームに入って欲しい。」


「は?」


ルーカは呆気にとられた。


「待て待て待て!何故そうなる!姫様が何しに来るんだよ!しかも俺が護衛チーム?おかしいだろ!」


グレーテは楽しそうにしながら


「そうはしゃぐな、一つ一つ説明してやるから。まず姫様がついて来ると言い出した理由はな、一度は現場を見ておきたいからだそうだ。姫様は人一倍責任感が強いからな任せっきりには出来なかったんだろう。」


「迷惑だな。」


「言うな。それとルーカが護衛チームになった理由はな。実力的に申し分ないしオズワルドと知り合いだからな他のウォーカーよりは信用出来る。と言っても姫様のすぐ近くで護衛させる訳にはいかないから遠くではあるがな。」


「けど部外者を近づけて本当にいいのかよ?」


「問題ない。オズワルドと組むことを条件に許可は取ってある。それに…。」


「友人を信じるのは当然だろう?」


とグレーテは何故か自慢気に言った。


「…わかったよ。」


先程から何故か楽しそうなグレーテに反発する気も起きず仕事を受けることにした。


「ありがとう。では当日もよろしく頼む!」


ルーカはグレーテに握手を求められた。

その手はルーカより少し小さく細いものの手袋の上からでもわかるほどゴツゴツとしており、外見の優雅さに忘れてしまっていたが確かに武人であると感じさせるものだった。


「ではまた、当日に。行くぞオズワルド!」


グレーテとオズワルドは足早に去っていった。

はあ…。

面倒事の気配を感じながらもルーカもまた準備のために建物を出るのであった。


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