表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/22

その動きは・・・ト〇・・・いやル〇ン!?

『ケンイチ様、灰皿をお持ちいたしました』


 ベッドに腰かけて待っていると、リアナさんが灰皿を持って戻ってきた。


「ああじゃあ、サイドテーブルに置いてもらえる?」

『はい!』


 じゃあ灰皿もきたことだし、人生二本目の煙草にチャレンジするかな? 煙草を咥え、ライターで火を着けようとした時。


『お着けいたします』


 リアナさんが小さな箱を、こちらに差し出した。


「これは?」

『はい! こちらの世界の、着火装置です! 紙巻や葉巻などに、火を着ける魔導具です』

「火を? さっき火の魔法石は、危ないって言ってたけど」

『簡単な装置なら、危険はないですから! どうぞ!』


 カチッという音と共に、火が着いた……うんライターだな。


「ありがとう」


 軽く息を吸いこんで、煙草に火を……。


「ごほっごほっ!」

『ケンイチ様っ!? 大丈夫ですか?』

「大丈夫大丈夫! ちょっとむせただけだから」


 やっぱり、二本目の煙草じゃ慣れないよな。 しかし煙草は絶対に、必要になるはずだ。


「ねえ、リアナさん?」

『はい! なんでしょうかケンイチ様』


 返事をしながら、俺の隣に座るリアナさん。 なんで?


「な、なんで隣に座るの?」

『あの、えっと……申し訳ございません! はしたないマネをっ!』


 慌てて飛びずさり、立ち上がるリアナさん。 うん、直立不動じゃなくてもいいんだけどさ。


「えっとそれで……この世界の紙巻について、訊きたいんだけど」

『はい! どういった事でしょうか?』


「どれくらいの値段なの?」

『嗜好品になりますし、紙巻は少々お高いです……庶民では手が出せないです』


「えっ? そんなに高いの?」

『はい、わたしは吸わないので、詳しくはわかりませんが……たしか五本入りで、銀貨一枚くらいはしたかと』


 あー通貨単位が違うのか?


「えっと通貨単位が日本と違うのかな? うーん? 銀貨がどれくらいの価値なのか」

『あっいえ! 銀貨は一万円です!』

「えっ? 円?」

『はいっ! 初代皇帝陛下が円にすると、お決めになられましたので』


 タナカイチロウさんか……。 とりあえず財布を取り出す。


「えっと、こういう紙幣とかは?」


 千円札を見せてみる。


『これが日本のお金なのですか!? こういった紙のお金は、こちらにはございません』


 紙幣は無いのか、財布重くて大変そうだな。


「ええっと、じゃあどういう感じ?」


『はい! 青銅貨が十円、銅貨が百円、大銅貨が千円、銀貨が一万円、大銀貨が十万円、金貨が百万円、大金貨が一千万円です。 金貨は大きな商取引くらいでしか、使われませんけど』


「最小単位が10円なのか? だったら一律一桁下げればいいのに」

『初代皇帝陛下が、その方が物の価値がわかりやすいと……』


 日本に合わせたのかタナカイチロウ。 でも結局リアナさんは銀貨一枚って言い方してたし……通貨単位としては通用してないんじゃないのか? 


「しかし煙草が一万円かぁ……高いなぁ」

『大商人の方とか貴族の方くらいしか、お吸いにならないです』

「俺が欲しいって言ったとして、貰えるのかな?」

『嗜好品ですから、許可はいりますが……多分大丈夫じゃないかと』


 少し心配だが、一応手に入りそうだな。


「それじゃあ紙巻? 手に入れてもらえるかな? 持ってきた煙草だけじゃ、すぐになくなっちゃうだろうし」

『かしこまりました! 他に御用はございませんか?』

「うん食事ってあと、どれくらいかかるのかな?」


 リアナさんは、首をかしげて考える


『おそらく、あと一時間くらいかと』


 一時間かあ……腹減ったんだけどな。 っていうか今何時なんだろう? 向うと時間が一緒ってわけじゃないだろうし。


「そっかあ、じゃあまったりしながら、待つしかないか」


 二本目の煙草をもみ消して、何をしようか考えていると。


『あの……ケンイチ様?』


 うおぅ! リアナさんが、急に顔を覗きこんできた。


「なに? リアナさん?」

『一時間ほど、時間がありますよっ!』

「ああうん、一時間だね?」

『はいっ! 一時間ですっ♪』


 なんだろう? 一時間に何か意味があるのか? ああそうか。


「リアナさん」

『はっはいっっっ!!』


 答えながらリアナさんがまた俺の横に座る。 ……いやだから、なんで座るの?


「えっと」

『はいっ!』


 両手で俺の手を握ってくる。 近い近い!


「一時間あるから」

『一時間あるから!?』

「その間、自分の部屋で休憩してていいよ」

『…………はい?』

「とりあえず、食事の時間まで待機してて」

『…………』


なんだ、この沈黙は?


『か……かしこまりました』


 とぼとぼと侍従用の部屋へ去っていくリアナさん。 仕事したくて仕方ないんだな……。 でも他にやってもらうこと無いしなぁ。 さて一時間どうやってつぶすか? スマフォも使えないし、テレビなんて物も無いしな……。 体が動く様になったんだしトレーニングでもするか? いや汗だくになるだろ。 風呂に直ぐに入れるわけじゃないしなぁ……。 さて本当に困った。そういえば、御子神のやつは部屋に戻ったかな? 御子神とオセロでもするか?

 そんな事を考えていると、リアナさんが物凄い勢いで部屋に飛び込んできた。 え? もう一時間経ったの? 向うとこっちの時間の違いってやつか?

 

『ケンイチ様っ!! お着換えをお持ちいたしました!』


 息を切らせて、浴衣を見せるリアナさん。 なんか怖いよ?


「き、着替えか。 あ、ありがとうリアナさん」

『いえ! 侍従の務めですから!』

「そ、そっか……じゃあそこに、置いておいてくれるかな?」

『へ?』

「いや、着替えるからそこへ……」

『では! お手伝いいたしますっ!!』


 なんだその動き!? ル〇ンダイブか?! とりあえず躱す。 サイドテーブルに足をぶつけて、ベッドに倒れ込むリアナさん。 ああ灰皿が! いや灰皿の心配よりリアナさんを心配しないと。


「だ、大丈夫?」

『大丈夫です! 痛くないです! いえ最初は痛いかもしれないけど、頑張りますからっ!!』

「わけのわからないこと言ってないで! 落ち着いて! 深呼吸! 深呼吸しよう!」


 リアナさんをなだめる。 ……なんか怖いよこの人。 目が完全に血走ってるし……。


『わ、わたしは落ち着いています! 大丈夫です!』

「いや全然落ち着いてないよっ!? いいから深呼吸して!」


 なんとかなだめると、リアナさんはしぶしぶ深呼吸しながら脛をさすっている。 やっぱり痛かったんだな。


「着替えは自分でするから! 仕事熱心なのはいいけど、ほんと自分でやるから!」

『お着換えのお手伝いは、侍従の務めなのに』

「いやなんか着替えの手伝いって、手つきじゃなかったよ?! 怖いからほんと」

『わ、わかりました。 そこまでご自分でなさりたいとおっしゃるのなら我慢します』

「わかってくれて、本当にありがとう!」


 落ちてしまった吸殻を片づける、リアナさんを尻目に上着を脱ぐ。 リアナさんは脱いだ上着を素早く受け取りハンガーにかける。


「あっどうも」

『いえいえ♪』


 ……あれ? リアナさん出て行かないぞ?


「あのリアナさん?自分でやるからいいよ?」

『それだけは譲れませんっ!』


 なんだこの気迫は……。 空手の試合でもここまでの気迫を感じたことないぞ? 仕方ない、ワイシャツを脱いでリアナさんに渡す。


「えっと」

『ワイシャツは、お洗濯しておきますね♪』


 ああ、うんそうじゃなくて……。


「ズボンを」

『はい♪ お受け取りいたします!』


 脱げってことか……しぶしぶズボンを脱いで渡すと、リアナさんが下着を渡してくる。


『こちら、新しい下着になります♪』

「えっと? 履き替えろと?」

『はぁい♪』


 それはさすがに……。


「ダメだろ!!」

『なんでですかっ!?』

「とにかく、それはダメだ!」

『やはりわたしが、お手伝いをした方が?』

「そういうことじゃない!」

『じゃあ、どういう事なんですかっ!?』


 これは、あれだな……いくら鈍感な俺でもわかる。 貞操の危機ってやつだ……完全にこの人やる気だよ! いや犯る気だよ! 俺だって男だし? そういう事に興味がないとかそういうわけじゃないし? 桐生との約束だって本当は楽しみだったし? いやそんな事考えてる場合じゃねえ。 このまま犯られていいのか俺?


「お……お風呂!!」

『はい?』

「下着はお風呂入ってから、履き替えるから!」

『ま、まあそうですね……履き替えるなら、キレイにしてからですよね』


 よし俺よくやった!


『では、お風呂の支度をいたしますね♪』

「いや大浴場で入りますっ!! ほんとでっかいお風呂とか楽しみだなぁ!」

『そ、そうですか? 大浴場の中は、わたし同行できませんが……』

「うん! 大丈夫! ありがとう! じゃあ浴衣着るから! それ貸してくれるかな」


 リアナさんから浴衣を受け取り羽織る。 ……あっぶねえええええええ! しかし……こういうやりとり、男子全員してるのか? 勇者を篭絡する為の、色仕掛け……侍従怖い!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ