表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/22

おっぱいなんて飾りですよ! 偉い人にはそれがわからんのですよ

 とりあえず広間に戻ると、女子はもう居なかった。 メイド争奪戦は、まだ終わっていないようだ。 本来なら下校時刻だったし、そろそろ腹も減っている。 さっさと終わらせて欲しいんだけどな。 言伝を頼んだ高橋は……もう侍従が決まったのか、ここには居ないみたいだな。 とりあえず誰かに、話しかけてみるか。


「えっと……なあ?」

「ああ柳生? どしたん?」


 あれ? 俺の事を、知ってる?


「ええっと」

「ああ! わりい! 俺は吉永だよ、隣のクラスの」

「ああそうか。 俺の事、知ってたのか?」

「あんだけ大怪我してりゃ、噂にもなるって! 野中さんとも、仲良さそうだったしな! お前男子から、かなり睨まれてたぞ」


 そういう風に見えてたんだな……。


「そんで? どしたん?」

「ああいや! メイド争奪戦は、どんな感じかなって思ってな」

「だめだわぁ……俺クジ運、ねえんだよ」

「そっか。 そいつは、ご愁傷さま」


「柳生は誰でもいいから、参加しないって聞いてたけど。 やっぱり参加するのか? けっこういい子先に、取られちゃってるけど?」

「ああいや、俺はいいんだ! それよりも腹減ったから、さっさと終わらせて欲しくてな」


「あーねー…… しかに腹減ったわぁ。 でも終わらせろって、言ってもよぉ。 この調子じゃあ」

「みんな可愛いのに、なんでそんなにこだわるんだか」


「まあそこらのアイドルグループに居ても、おかしくない子ばっかりだよなあ」

「だろ?」

「でもまあアイドルでも、推しとかあるっしょ? そんな感じだべ」


 そういうもんかね?


「俺はアイドルとか、興味なかったからな」

「お前まさか……藤田先輩みたいに、あっちなんじゃ? 俺は、だめだぞ!」


 藤田先輩って? ああ侍従に、執事選んだ男子か。


「安心しろ! 俺は、ホモじゃないぞ……多分」

「多分ってなんだよ! 全然、安心できねえわ!」


 いやだってさ。 今は男に興味ないけど、今後はわからないし。


「なあ……この中で誰からも、選ばれてない子もいるんだよな?」

「まあ被ってるから、こんだけ揉めてるわけだし? 当然選ばれてない子もいるっしょ!」

「俺その子でいいわ。 その子選べば、さっさと抜けて飯食えるんだろ?」

「あー? そういう事に、なるんかな? でも飯は、ばらばらに食うのかね? なんか食事のスペースが、どうこう言ってたから。 みんなで食うとかも、ありえるっしょ?」


 そうか侍従選んだら飯食えるって思ったけど、全員そろってから飯って可能性もあるか……困ったな。


「まあいいや。 とりあえずさっさと侍従選びは終わらせて、部屋でのんびりしたい」

「あーね!」


「で? どの子が、不人気なんだ?」

「えっと、あの子と……あの子と、あの子?」


 選ばれないでずっと、あそこに立ってるのって辛いよな。


「なんで、選ばれないんだ? みんな可愛いじゃないか」

「それは、貧乳だからっしょ?」

「貧乳? でも胸が小さいのが、好きな奴だっているだろ?」

「そういう奴は、もう決まって抜けちゃったんだわあ! ちなみに女子でメイド選ぶ子とかも、自分より胸の小さい子選んでたっしょ!」


 そうか、女子もメイド選ぶ場合は、この争奪戦に参加しなくちゃいけないもんな。 女子が全員さっさと抜けたのは、胸の小さい子選んだからなのか。


「つまり今は、あの子達に当たらないための争いか……可哀想だな」


 良く見たらちょっと涙目だぞ。 ほんと可哀想だろ。


「じゃあ俺は、あの子達の中から一人選べば、さっさと抜けられるんだな?」

「どうかねぇ? 第二候補であの子達でも良いって思ってる奴らが、どういうかわからないっしょ?」

「でもドラフトなんだから、誰も選ばない子選んだやつに権利があるだろ?」

「柳生参加しないって言ってたっしょ? それで急に参加するって言い出したら、揉めるんじゃね?」

 

 くそ! こんな事なら、さっさと参加しておけば良かったか? しかしまあ、ここでグダグダしてても仕方ない。


「とりあえず、行ってくるわ!」


 俺はホールの、中央に進む。


「あー……棄権するって言ってた柳生だ! すまないが俺も、今から参加させてくれ!」

「なんだよ、今更!」

「残ったので良いって言ったんだろ? 最後まで待ってろよ!」

「そうだぞ! 今更参加したいとか、ずるいだろ!」


 いやずるいのか?


「俺は早い段階で選ばなかったから、損こそしてるけど。 今から参加する事が、ずるになるとは思えないんだが?」


 ヤジを飛ばしたやつらを、睨みつける。


「だって……なぁ?」

「今更参加って、言われたって」

「ライバルが、増えるだけだし」


 よし! ここだ!


「ドラフトって事はどの子を選ぶか投票して、被ったらくじ引きなんだろ?」

「ああ、そうだけど」

「だったら俺は!! この子を選ぶ!!」


 不人気な子の、一人を指さす


「もし俺の投票が、この子じゃなかったら無効でいい! 他の奴がこの子がいいなら、くじ引きになるんだろ? それはそれで仕方ない。 これならどうだ? 参加させてくれないか?」


「あー、それならまあ」

「うん、まあいいんじゃねえの?」

「なんだよ、お前貧乳派かよ」


 別に、貧乳派じゃない。 侍従なんて、誰でもいいだけだ!


「じゃあ、次の投票始めようぜ! 柳生はその子な?」


 よし良かった! 参加できたな!


 これでやっぱりこの子がいいって奴がいなければ、俺はさっさと抜けられる。 そんな事を考えていたら、後ろから服をちょいちょいと引っ張られた。


「うん?」


 振り返ると今俺が指さしたメイドさんが、俺の服をつまんでいる


「ああごめんね? 急に参加して」

『いえ! ……あの……その……本当にわたしでいいんですか?』


 見るとやっぱり、ちょっぴり涙目だ。 ずっと選ばれずにさらし者にされてたんだからな。 そもそも勇者の侍従に選ばれるのに、容姿が優れていることは必要条件だったはずだ。 勇者を色仕掛けでやる気にさせるのが、目的なんだからな! この子だってきっと侍従に選ばれた時点で、かなり容姿には自信があっただろう。 なのにいざ勇者に会ったら、お前はいらないって扱い受けるとか……心折れるわぁ。 俺なら耐えられない!


「こんなに、可愛いのにな」

『はぃっ!?』


 ああ、声に出ちゃったか。 まあ可愛いのは間違いないし、別に問題ないか。


『あっ、あのっ……ありがとうございますっ! 勇者様に精一杯、ご奉仕させて頂きます!』


 ああいや、まだ俺って決まったわけじゃないんだけどね。 誰かが指名するかもしれないんだし。 ……まあいいかとりあえず。


「俺は、柳生拳一だよ」

『ケンイチ……様』

「あー、うんそう」

『わたしはリアナです! よろしくおねがいしますっ!』


 うん、だからまだ決まってない。


「ああ、決まったらよろしく頼むよ。 リアナさん」


 できれば、短い付き合いにしたいけどね。 俺はここから、逃げ出さなきゃいけないんだから!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ