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メイド争奪戦

『力の使い方についてなのですが……残念ながら我々は勇者ではないので、正確にはわからないのです』


 おいおい、そんないい加減な話があるかよ。


『ですが、魔素を使うという事だけは判っています。 我々は勇者の様な強力な力を使う事は出来ませんが……同じく魔素を使って、魔法を唱える事が出来ます』


 魔素? よくわからないな。


『魔素とはこの世界に溢れる、魔力の素です! 大気の中存在する魔素を体に取り込み、呪文を詠唱する事で、我々は魔法を、使う事ができます』


「じゃあ僕達も、呪文を唱えればいいってことなのですか?」


 御子神が、また手を上げて質問する。


『もちろん、そういう勇者様も居たと文献には残っています。 しかし呪文の詠唱をせず、強力な武器を具現化された方や、呪文では無い……不思議な力を使った方も、いらっしゃった様です』


「武器? 聖剣とかってやつでしょうか?」


『はい! 初代皇帝タナカイチロウ陛下も、聖剣をお使いになったと文献に残っています』


「なんか、ゲームみたいだな」

「その武器さえ使えれば、魔王に勝てるって事なの?」


『とにかく! みなさんには勇者としての力に目覚めて頂く為に、しばらく訓練して頂きます』


 こいつ最初は皆さま方とか、勇者様とか言ってたのに……言葉遣いがおかしくなってるな。


『魔素を意識して力を解放する為の、施設を用意いたしました! では順番に、あちらの扉からお進みください!』


 せっつかれる様に、全員広間から追い出される。 しばらく歩くと、どこかで見たような建物が現れる。 おいおい……コロッセオかよ!


『みなさんには、こちらで訓練をして頂きます。 どのような力に目覚めるかは、人それぞれです。 魔素の扱い方を知っていただく為に、魔術師も講師としてつけさせて頂きます。 そのまま魔法を覚えてみるのも良いでしょう。 武器の具現化に成功された方は、騎士との訓練をして武器の扱い方を、覚えて頂くことになります』


 武器の具現化が出来ても、戦いが素人じゃお話にならないって事か。 強い武器を持った素人……やっぱり死ぬ可能性は、高いんじゃないのか?


『今現在も、魔王軍との戦いは行われています! 一人前になったと判断された方から、前線に行っていただく事になります!』

「前戦って……」

「殺し合い?」


『あまり時間を、かけられても困ります。 出来うる限り早く、覚醒して頂きたく存じます』


 のんびりしてたら……こいつらに、殺される事もあるって事だな。


『では次の施設へ、参りましょう』


 男に促されてコロッセオの、隣の施設へと進まされる。


『こちらは、客殿です』


 客殿? 老舗旅館って感じだぞ?


『初代皇帝タナカイチロウ陛下の、指揮の元で作られた貴族宿泊用の施設です』


 自動ドアこそ無い物の、中の作りも普通に旅館だ。 案内版とかもあるな……ひらがなばっかりだけど。 エレベーターは、さすがに無いか。


『一階には大浴場とお食事のスペースがございます。 二階は男性の勇者様、三階は女性の勇者様のお部屋をご用意してあります』


 風呂があるのか。 ますます旅館だな。


『それぞれのお部屋には、侍従用の小部屋も用意してございますので、何かご所望の際には侍従にお申し付けください』


 侍従って……メイドと一緒に生活するのか?


「メイドさんが、隣で寝てるのか」

「やべえな」

「男子、最低」

「でも女子は執事さんが、一緒って事だよね?」

「えー男性と一緒とか嫌だなぁ……わたしは、メイドさんについてもらう」


 なんか修学旅行みたいな、雰囲気になってるけど…… 俺達殺し合いに放り込まれるんだぞ? こいつら緊張感ねえな。


『残念ながら、我が国には水道という設備はございません。 風呂は魔法で、お湯を作る事になりますので、時間を限らせて頂きます』

「えー? お風呂好きな時に、入れないの?」

「これだけの人数で時間限ったら、まともに入れないんじゃないの?」


 女性陣がごねる。 まあ女性は、お風呂大事だよな。


『個室の方にも小さなお風呂がございますので、侍従にお湯を運ばせて入る事もできなくはありませんが』

「あー! じゃあそうしよっか」

「お湯運ぶとか、大変そうだけど」

「俺もメイドさんにお湯運んでもらって、お風呂一緒に入ってもらう!」

「あんた最低」


 衣食住……あとは服がありゃ、とりあえず生きていけるのか。


「なあ服は」


 俺が手を上げると同時に、男が答えた


『衣類や嗜好品など必要な物は、侍従に申し付けてくれればご用意いたします。 高級品を望まれる場合は、予め申請して頂ければご用意させて頂きますが……あまり贅沢な物は、お断りさせていただく場合もございます』


 まあ魔王も倒さないうちに、贅沢ばっかりされても困るだろうしな。


『前線に出て、魔族を討伐して頂ければ報奨金も出ますので。 贅沢をなさりたいなら、早く覚醒されるのがよろしいかと』


「贅沢って何だよ? 宝石とか?」

「宝石なんて持ってても、しょうがなくね?」

「ばーか! 宝石手に入れて、女の子にプレゼントするんだよ」

「それより、直接女の子買うとかも出来るんじゃねえの?」

「おー! お前、頭いいな」

「男子、最低」


 宝石、貴金属か。 いずれは必要になるな。


『さてでは、皆さま! お部屋と侍従の、割り振りをいたします! 希望の侍従を、選んでください!』


「まじで!? メイドさん好きな人、選んでいいの!?」

「じゃあ俺、この子がいい!!」

「ふざけんな! 俺がその子だ!」

「あーどうすんだよ? 早いもん勝ち?」

「じゃんけんだろ! じゃんけん!」

「ここは公平にクジで決めよう! 俺がくじ作るから!」

「てめえ! いかさまする気満々じゃねえか! 殺すぞ!」

「あんだてめえ!」

「おーーーーっだら! こらやったんぞ」


 物凄い取っ組み合いが始まった。 あっちこっちで喧嘩してるよ。 どう収拾つけるんだこれ?


『第三回! 選択希望侍従!……』


 結局最初の広間に戻って、ドラフト会議みたいなのが始まった。 それを見てる女の子の、視線が痛いぞこれ。 女の子達は執事を選ぶ子、メイドを選ぶ子で別れてるから、そんなに揉めてないみたいだな。 男の中でも執事選んだ奴が、一人だけ居たが……うん、あいつには近づかない様にしよう!

 しかしこうして見ると俺の知ってる奴は……御子神、俺と同じ二年でサッカー部のキャプテン。 あいつもメイド選びはノリノリか。 モテる男でもそんなもんなのか?

 鷹村も……転移しちまったんだなぁ。 あいつ御子神の事、好きなんだよな? どんな気持ちで、見てるんだろう。

 桐生と、野中さんは……居ないな。 良かった……。 もし桐生と、もっと長話してたら……あいつも、巻き込まれてたのかな? あいつもこっち来てたら、あいつの体も治って……一緒に、空手できたのか? そもそも、俺の体は治ってるのか?


 そんな事を考えてたら、鷹村と目が合った。 あーいや俺は、メイド争奪戦には参加してないぞ!

 冷たい目で、見ないでくれよ! あっ……すぐに逸らされた。 まあこんな状況じゃ、男はみんな軽蔑されるか。 まあ別に鷹村に、どう思われても関係ないけど……。 なんかそういう風に見られるのは、やっぱり嫌だからな。

 同じクラスのやつは、鷹村だけか? とりあえずメイド争奪戦が終わったら、きちんと誰がいるのか確認しないとな!!

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