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パラレルトリッパー 〜時空間研究所と6人の能力者たち〜  作者: 蔵樹 賢人
第二章 時空間研究所
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病室

「鬼塚、面会だ」


 コツコツと病室に響く革靴の音がベッドの横で止まった。


「どうですか、調子は」


 青木はベッドの横の椅子に座り、いつものように独り言のように鬼塚に話し掛けた。鬼塚は下半身を布団に入れたまま、上半身を起こして壁にもたれていた。鬼塚は青木の言葉には反応せず、いつものようにしっかりとした目で遠くを見つめていた。


 ここ三ヶ月というもの、鬼塚はずっとこんな調子だった。誰とも話さない。何にも反応しない。ただしっかりと遠くを見つめているだけだった。時々ブツブツと何かを言っていたが、青木には聞き取れなかった。


 青木には、今の鬼塚がどっちの鬼塚なのか分からなかった。こんな状態になってからは、判別できる材料は何も無かった。


「今日もダメですかね」


 ふうとあきらめて、青木は椅子から立ち上がり、鬼塚に背を向け、ドアに向かってコツコツと歩き始めた。


 そのとき、くっくっと低い小さい笑い声が聞こえたような気がした。青木は驚いて、慌てて鬼塚を振り返った。


 いない!青木は目を疑った。部屋中を見回した。やはりいない!

 鬼塚は消えてしまった。青木は呆然と、空になったベッドを見つめていた。

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