ふたりの魔法使い
彼らは、科学のうえに魔法を利用する方法を心得ていた。
ラップ人マフィアのアジトを突き止め、ネット環境を遮断し、電気を遮断する。
ラップ人マフィアたちは、居場所をうしなう。エア・カーで、逃走をはじめるほかならなくなる。
そこで、治安活動家たちの出番だ。
数体の治安活動家のロボットたちを送りこみ、それをひとりの魔法使いが操作する。人工知能で動くロボットの防御をかためるのだ。
チタン製合金で作りあげられたロボットたちの装甲のそのうえに、風の魔法のガードを張った。
風は、ロボットの身体のまわりをはげしく回転しつづけた。
銃弾は弾けないが、そのいきおいを弱めたり、すこし逸らしたりできるのだ。
だが、エア・カーをとめるのにはすこし苦労する。そこで、もうひとりのトルニコスタ国兵の魔法使いの登場である。
彼は、電気をあやつる。反重力で浮かびあがるエア・カーは電気も利用している。その電気部分を彼は停止させる。するとエア・カーはアスファルトのうえにつぎつぎと落下していく。
「くそ!」
「駄目だ、にげられねえ!」
マフィアたちはエア・カーから飛び出してきて魔法使いたちを狙い撃ちしはじめる。ロボット相手に銃がきかないことを知っていたのだろう。電撃系の銃器がなければロボットを破壊するのは困難となるのだ。しかしそれを持ち運ぶのにはとても苦労する。人数の乗ったエア・カーでは運べない。
「てめえらみてえなゴミがこの国にいるからいけねえんだろうが」
魔法使いのひとりが罵倒した。
マフィアたちは必死に魔法使いにむけて銃を放ち続けた。
だが、銃弾はロボットたちによってさまたげられ、ふたりの魔法使いにとどくことはない。
ひとりの魔法使いたちが嘲笑った。まるで坂道ののぼれない赤ん坊でもながめるかのようにマフィアたちを見下す。
ロボットたちの放つ銃弾で、マフィアたちが間断なくたおれていく。
「クズどもが!」
マフィアたちは、あっという間に全滅した。ぜんいんが死んだあとで、魔法使いは唾を吐き捨てた。
「行くぞ」
黒の長髪男の魔法使いが、金の短髪にピアスをつけた男に言う。
金髪はマフィアの死体を踏みつける。長髪がそれの暴走をやめさせるかのように腕を引っ張る。
「離せ!」
金髪が怒った。長髪はしずかにその金髪を見つめた。
「なんだよ!」
「そんなことではみずからのちからひとつで生き抜くことはできないぞ」
「うるせえよ、てめえはどうなんだよ!」
「この科学と魔法の発展についていかなければならない。すこし遅れると、もう追いつけなくなる。ジェイク、長い付き合いだから言っておく。このさき、危険が待っている」
「ヤマト、おれをなめるんじゃねえぞ。おれはおまえよりも強い……!」
ヤマトはすこしの間を開けて、
「そうか」
と言って踵を返して歩き出す。
「ふん、見てろよ。おれはどんなことがあってもぜってえ生きのこってみせる……!」
ジェイクも、大股で歩き出した。ふたりの魔法使いが去っていく。のこったロボットたちは、マフィアたちの死体処理に移っていく。