隠密行動
シャルナは高台のうえで、レジ街を一望する。エア・カーの山道付近に、人の座れるベンチのある空間があり、シャルナはそこに立っていた。
風の良く吹く場所に出ると、シャルナは風に襲われる。おおくの風たちに身体をつつみこまれ、肉体を遊ばれる。風たちはしゃべり、よく笑う。人間たちのことを時々、馬鹿にする者もいる。
そこに、ひとりの男がやってくる。眼鏡をかけた、頭の良さそうな風貌のエルファド人の男だ。この世界の魔法使いなどのようには一切、見えないようなそんな男だ。
「ねえ、シャルナちゃん……?」
「あ」
シャルナは男がやってきたことにおどろいた。
「パパ」
「ごめんね、会いに行けなくて……」
「ううん、べつにいいよ」
「あれ、なんだかぜんぜんさみしそうじゃあないね」
「うん」
男は目をおおきくしておどろいた。
「ど、どういうことなの、いったい!?」
男は両手で頭をかかえるようにして聞いた。
「友達ができたの」
「えええええ!?」
男は大袈裟におどろいた。
「ウソだ!」
「なんでウソつくの……」
「だれなんだ、その彼氏は!」
「彼氏なんてひと言も言ってない……」
「なんてことだ、おれが直接、市民に会いに行かなければならないときが来るなんて!」
「ゲームばっかりやってるだけでしょ……」
シャルナは男が真剣になやみはじめている様子を見て、「え」と聞きかえした。
「ほんとに来るの?」
「あたりまえじゃあないか!」
「めずらしいね」
「むすめの一大事に駆けつけない父親がどこにいるって言うんだよ、シャルナ!?」
「なんだか今日はずっとテンションが高いね」
「ええ、そう!?」
「うん……」
「ま、まずいな。自我を取りもどさなければ……。オウのソンゲンにカカワル」
男は言葉を棒読みしてそう言った。
「ねえ、パパ」
「なんだ?」
「犯人、捕まえたの?」
「あ」
男はなにかを思いだしたような顔をした。
「そうだった! おれ、なんだかいのちをねらわれているみたいなんだよ。シャルナちゃん、犯人、見つけられないかな?」
「無理だったの」
「そうか」
「こっちも犯人を追ってるんだけど」
「なんだって……?」
「ユキといっしょに」
「だ、だれだ、そのユキって市民は……」
「友達だけど」
「ほ、ほんとうにただの友達なのか!?」
「う、うん……」
「この目で確認するしかないな」
男は真剣な目でレジ街を睨んだ。
「行くぞ、シャルナちゃん」
男は、ディテクタの画面ボタンを押した。すると道路の向こうがわからエア・カーが飛んでくる。ふたりでそれに乗りこんだ。
「ぜんぜん攻撃されてない感じ?」
「うん、ぜんぜん攻撃されてないぞ。ほんとうに暗殺者なんているのかい?」
「さあ?」
男はシャルナの父親で、この国の王だった。
名はダラン・ショード・トルニコスタ。
三〇代の若い王さまだった。
「気づいてないだけじゃあないの?」
「そんなに馬鹿じゃないぞ、おれは」
ふたりの家族を乗せたエア・カーがレジ街へと飛んでいく。




