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男子会

番外編「千依と竜也」の少し前あたりのお話です。

宮下は次クール放送予定のアニメ収録を終えると真っ直ぐにとある居酒屋に足を伸ばした。

声優一本で暮らし始めて早4年、22歳になっている。

周りもぼちぼちと働きはじめ、決して仕事で多忙という現実が珍しくない年齢に気がつけばなった。


仕事は充実、恋人の萌との関係も良好。

公私ともに何も言うことのない平和で刺激的で理想的な日常。

だがしかし、そんな宮下にも悩みはあった。


人にとっては羨ましすぎるとも言われるような、しかしかなり胃にくるような悩みが。



「タツさあ、最近ちーにベタベタ触り過ぎじゃない?いい加減にしないとロリコンのセクハラで訴えるよ」


「恋人に触って何が悪いんだよ。第一俺はロリコンじゃないっつの」


「…でも怪しい」


「シュン!お前本当もう少し俺を信用しろよ!パートナーだろが!ここには味方がいないのか?央、お前は俺の味方だよな」


「………というか、何で俺はここに」




集まった面子は、もはや宮下の中では定番となっていた。

だがそれでもどんな面子だよと彼が思ってしまうものは仕方がない。


なにせ芸音祭の常連である奏のチトセと、ぼたんのタツ、シュンが揃っている。圧倒的な認知度を誇るアーティストに囲まれる夕食など、そうそうあることではない。


宮下自身も一応顔が知られる仕事ではあるが、歌手と声優では認知度が違いすぎる。気分は完全に“紛れこんだ一般人”だ。


ちなみに、この面子でたまに集まるようになったのは千歳がちょうど真夏と付き合い始めたあたりの頃からだ。

何だかんだで千歳との交流も増えた宮下が千歳からシュンを紹介され、その流れでタツとも知り合い、気付けばたまに会うようになったのだ。


しかもちょくちょく会うくせして、千歳と竜也は仲が良くない。

いや、宮下からすれば喧嘩するほど仲が良いとか同族嫌悪とか、その手の類に見えるが。

圧倒的なオーラ持ちに挟まれ、元同級生の取り合い喧嘩を目の前で繰り広げられ、挙句どっちの味方なんだと睨まれる。毎回こんなだ。

正直色々勘弁してほしい。



「あー…そういえばシュンさん」


「おい、央。無視すんな」


「いつもタツや千歳さんの話ばっかりになってるけど、シュンさんはどうなの。そういう恋愛話全然聞かないけど」


「…それすら無視かよ」



正直、千依を巡る彼氏と兄の攻防はすでに見飽きていた宮下。

少々強引に話をシュンに振る。

そうすると、シュンは淡々と言葉を紡いだ。



「恋人はいないけど、片想いはしてる」



すんなりと何事もないかのように表情ひとつ変えずにシュンは言う。

そこに大きく反応したのは他の3人だ。



「え、まじ」


「…本当表情変わんないよね」


「へえ、好きな人いるんだ」



予想外の答えに動揺する竜也、千歳、宮下の3人。




「誰好きなの?俺でも知ってる人?」



別に他人の恋愛事情など興味はなかったが、軽い気持ちでそう尋ねてみる。

答えるのが面倒そうなら宮下は「ふーん」とでも流すつもりでいた。




「弥生」



しかし、これまたあっさりとシュンが答えを言ったものだから、その「ふーん」すらも言わずに会話が終了した。

そして、あまりにあっさりすぎる口調に流されそうになって「ん?それって」と思うのはすぐ後のことで。



ぶはっ

ぐふっ



近くでそんな吹き出す音が聞こえたのも同時だった。

どうやら竜也や千歳にとも初耳だったらしい。

本人以上に激しく動揺している。




「弥生って、お前、俺らと同期の弥生か!?オーディション組の」


「そうだ」


「…シュン、何で弥生なの。悪い奴じゃないけど、明らか苦労すんじゃん。どうなってんの女の趣味」


「……千歳に言われたくない」


「どういう意味かな?」


「あー、お前ら喧嘩すんな」



とにもかくにも毎度こんな感じで何故か定期的に開催される男子会。

そのおかげで、変な話男子達の方がお互いの恋愛事情に詳しかったりするのだ。


ああ、何でこんなことに。

宮下はこの面子で飲むたび思うことをやっぱり今回も思ってビールをあおった。




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