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プロポーズ

作者: 北田くま

 僕の1日は彼女で始まり、彼女で終わる。

 僕と知り合って一ヶ月もたたないうちに彼女は引っ越し、今は遠く離れてしまった。なかなか会えない関係だから、僕はいつだって彼女が寂しくならないようにしているんだ。

 朝起きたらまず、彼女の携帯に『朝のメール』を送る。内容は様々だ。昨日見たテレビのことや、最近知った面白い話、今日も1日頑張ろうねというメッセージも必ず入れる。

 そしてお昼になったなら『昼のメール』を送る。内容はその日の午前中にあったこと。昼食には何を食べたかなんてことも付け足しておく。そして、本当は彼女のお弁当が食べたいんだということも伝えて置かなければならない。

 仕事が終わったなら、『夜のメール』を送る。内容はその日1日あったことや、気付いたこと。

 そして電話をかける。彼女は仕事が忙しく、ここ何ヵ月は声も聞けない。本当は会って直接言いたいんだけど、僕は留守番メッセージに

「愛している」と今日も囁く。

 僕は彼女を愛している。ゆくゆくは結婚をして、子どもも作りたい。そんな彼女への想いを抱えたまま、僕は眠りにつくのだ。

 そしてついに、僕は決意したんだ。彼女に会ってプロポーズしようと。二人で幸せな家庭を築こうと、伝えよう。

 その日は早めに仕事を終えると、僕は前々から目をつけていた婚約指輪を買った。出費は痛かったけれど彼女のためなら平気だった。花束も買った。電車に乗り、彼女が一人で暮らす家に向かう。

 着いたときにはまだ彼女は帰っていないようだったので、家の前で待つことにした。そしてしばらくすると向こうから彼女が帰ってきた。が、彼女は一人ではなかった。隣に背の高い筋肉質の男を連れて楽しそうに話しているではないか。これは、どういうことだ?僕は頭のなかが真っ白になった。

 彼女は浮気をしていたのか?激しい怒りに駈られたが、それでも僕は彼女を愛していた。彼女を取り戻したくて、二人の前に勢いよく飛び出した。

 当然、彼女と男は驚いている。そして僕が口を開く前に、男が鬼のような形相で拳を振り上げた。


(殺される!)


 そう思った瞬間、殴られた衝撃からか脳みそが大きく揺れた気がして僕の体は宙に浮いた。

 そして彼女が男の腕に抱きつきながら、鬼のように恐ろしい形相で叫んだ。



「いい加減にしてよ!ストーカー!!」




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― 新着の感想 ―
[一言] ストーカーと思われても仕方がないかも。メールが返ってこないなら、確実にそうですね。 男にとっては意外な結末、他人から見れば当然です。
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