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(88)萌えキャラ……なのか?



「スペルキャスト! リコネッサンス・オービター!」


 エルキッドは、水道橋の見晴らしの良いところで、俺の見知らぬ魔法を使った。


「ターゲット・ゼファー」


 これ、偵察用の魔法なんだろうな。

「ゼファーの居場所が知りたい」と言った俺にブチ切れたエルキッドだったが、1,000Cenではなく、3,000Cenで応じてくれた。

 金額の問題だったらしい。


「ターゲット、フィールドマウス」

「ターゲット、ムラサメ」

「ターゲット、ジル……。 あ? あいつ、何であんな所におんねん」


 そして、次々と気になるプレイヤーの状況を把握していく。

 うっわ、これ超便利な魔法じゃん。これがあれば、PKプレイヤーの動向なんて事前に把握できる。


「便利そうだな、その偵察魔法」

「ああ、メチャ便利やで。 これを入手したから、ワイは商人になろうと思ってん」

「それで、分かったのか。 ゼファーの居場所」


「んん……意外に皆バラバラやな。 ゼファーは、白薔薇城門前の、森の中に隠れとる」


 だが城門前に目をやると、そこに居るのはゼファーではなく、巨人騎士ウォリック伯が怪獣の如く暴れ回る姿だった。


「おい、ムラサメはどこだ!? まさか、あそこで戦闘してるのか!?」

「いや、ムラサメはんは……ここにはおらへんよ。 ウォリック伯の近くに居るのは、ゼファーだけや」


 じゃあとりあえず、ムラサメの奴は、ウォリック伯の追撃から逃れたんだな。

 流石というか、無事で良かった。


「ムラサメはんは、この城の裏の森に居るみたいやけど……。 何してんやろ、えらい急いでるな」


 城の裏の森? 急いでる?


「ところで、ムラサメはんのことを気にしててええんか? ゼファーはんが森の中に居る言うたのに、隠れたりせんのか? 多分もう、ゼファーはんからは、ワイらの姿モロバレやで」


「……あ!!」


 言われてみればそうだ。


「ゼファーはんは、森の中から動かへん。ウォリック伯の行動を観察してるからと思うねんけど、ワイとレオはんに繋がりがあると分かれば、ゼファーはんは、より慎重になるんちゃう?」


 確かにその通りだ。 でも、もう、遅すぎだ。


「今更ジタバタしたって無意味だろ。 腹くくって、ドーンと行くぜ」


 またもやの失策。

 ……これも、俺が他人の気持ちや行動に気を払ってないがゆえ、なんだろうか。


 俺は腹立ち紛れに、気になった質問をぶつけてみた。


「そういやさっき『ジル』ってプレイヤーを探してたじゃん? あれ、誰だよ?」

「ワイのギルドのメンバーや」

「ギルド?」


 なるほど、確かにこういう行動を一人でやるのは大変だろうなと思ってたけど……。 やっぱ、仲間が居るんだな。


「せや。 ただ、ジルは働きはええけど、素行がイマイチ油断ならん奴でな。 スリリングな部下やで」

「ふーん」


 エルキッドが警戒する奴かぁ……。


「で、どこで何してたんだよ」

「紅薔薇城の監視塔で、意外な奴らと逢引や」

「意外な奴ら、って誰だよ?」


 それは、会話の中の、ごく平凡な合いの手のはずだったが、


「『バールハイト』と『トラウム』や」


 本当に意外な奴の名前が出てきた。


「!?」


 ……龍真と、のぞみさん!?


 確かに、さっき俺にメールを寄越してきたのは龍真だ。

 だから、ゲーム内に居るのは確かに確実だったのだけど……。


「レオはん、あんたさんのお友達よな、バールはんは。 で、何で『ジル』と仲良う喋ってんのかいな」


 い、いや、知らねぇよ、そんなこと!


「ま、それは今度逢った時にでも教えてくれたら嬉しいわ。 話の中身、ちゃんとバールはんに聞いといてな」

「ああ、わかっ……」


 俺がそこまで言いかけたところで、メールのアイコンがポップして光った。


 ……誰からだ?


ーーーーーーーーーーーーー

TO:レオ


たすけてくれ



      FROM:鋼鉄戦鬼ムラサメ  

ーーーーーーーーーーーーー


「エルキッド、すまない! 今、ムラサメはどこに居る!?」

「返答してもええけど、追加で3,000……」

「分かった、払う!! どこだ!!」

「なんや、何かあったんか!? ムラサメはんは、まだ白薔薇城門の後ろ、森の中やで。 ほれ、あそこ……徐々にこっちに向かって来よるけど」


 と、コミュニケートアクション「指さし」を使い、おおよその場所を示してくれた。


「分かった、サンキューエルキッド! 料金はツケでよろしく! 次は良い買い物するからな!!」

「ちょっ、待てコラ!」


 俺はエルキッドの怒号を背に駆けだした。

 ゼファーの事はもちろん気になる。なんせ、フィールドマウスと10分経ったら連絡を取って落ち合おうと言っていたのだから。

 だが、ムラサメの身に異常があったら、俺はゼファー達を倒す決め手を失ってしまう。

 ここは独断専行よりも、ムラサメ救出が間違いなく先だ。


 そう思った俺は、ムラサメ達の声を拾うべく、エリアチャットのボリュームを最大まで上げ、疾走する手を緩めることなく水道橋を駆け抜け、場外へと降り立つ。


「ムラサメ! 聞こえたら返事してくれ! 俺はこっちだ! お前の方に向かって、白薔薇城の城壁近くを走ってる!!」


「レオだと!?」

「まずい、こいつ仲間を呼んでたのか!」

「早くムラサメをぶっ殺そうよ!」


 俺の聞き知らぬ声だ。

 その声の遠さから、おそらくここらへんだろうと大体のアタリをつけて疾走を続ける。


「やめろ、お前等ーーッ!!」

「さっさと退場しちまえ、この野郎!」


 ムラサメの悲鳴と、敵の怒号。

 その声の距離感を手がかりに、俺は遂にムラサメを見つけた。


「レオ!」

「ムラサメ!」

「助けてくれ、レオ!!」


 ムラサメは、PKプレイヤー3人に囲まれ、そのHPを全損していた。


「あっはっはー、レオちゃん、本当に来やがったよ!」

「ここで会ったが100年目だぜ!!」


 ムラサメを襲っていた連中は、『ブリガンド』『ジョーカー84』『七色肉汁ハンバーグ』の紅薔薇3人組だった。

 確かこいつら、以前、ムラサメがPKして装備を奪った連中のはずだ。 ……リベンジキルか!


 ブリガンドが、吼えた。


「はっは、ムラサメちゃんは死亡したぜ! そしてレオ、てめえも殺す! 貴様等は、絶対に許さねぇからなぁ!!」



DATE : H27.2.9

TIME : 19:16

STID : 00187632,00187839,03290588,04294001


 ここで場面は、レオとムラサメの居る白薔薇城裏の森から、紅薔薇城の監視塔へと移る。


「こんにちは、お久しぶりです! バールハイトさん、トラウムさん」

「お久しぶりです~」

「あっ、こんにちは~! お久しぶり、ジルちゃん、ジャンヌちゃん!」

「水曜日に逢ったばかりだがな」

「もう、そういう事言わないの、バールくん!」


 紅薔薇城の監視塔には、イベント中盤に差し掛かってもプレイヤーが何人か居り、「バールハイト」と「トラウム」もその一人だった。 

 出ていく人間は居ても、入ってくる人間は居ないと思われるこの状況で、「ジル」と「ジャンヌ」が何故か現れ、二人を見つけるや駆け寄ってきたのだ。


「先日のイベントはありがとうございました! お二人が相手で、すっごく楽しかったです!」と、ジャンヌ。

「決勝のバールさん、凄く強かったよ。 何であんなに頭良いの?」と、ジル。


 ちなみに、この週の水曜日には、礼雄と琴莉が参加を検討していた、定例イベントのクイズ大会イベントが開催されていた。

 「バールハイト」と「トラウム」のコンビは、決勝で「ジル」と「ジャンヌ」との対決となり、僅差でバールハイト軍が勝利したのである。


「僕は頭良いわけじゃないよ。 まだまだ不勉強な、未熟者さ」

「んもう、バールさんったら、凄いクール! で、私たち、バールさん達とお近づきになりたいと思ってるんです!」と、ジャンヌ。

「このゲーム、女の人がそんな居ないからさぁ、トラウムさんみたいな方と友達になれたら……と思って」と、ジル。


 だが、バールハイトは素っ気のない口調で、


「トラウムはどう思う?」


 と話を振っただけだった。


「ねぇ、バールくんも、もうちょっと真剣に話を聞こう? せっかくの申し出なのに、失礼だよ」

「……」


「あの、トラウムさん、私たちガン無視されてるっぽいんですけど、何か気に障ること、しました……?」


 あまり傍若無人なバールハイトの態度に、ジャンヌは小声でトラウムに問うてみた。

 バールハイトに聞こえる可能性はあるが、シングルチャットを使うとジルが一人余るからだ。


「ごめんね、バールくん、今それどころじゃないみたいなの」

「……バールさん、一体何してるんですか?」


 すると、トラウムはさらに声をひそめ、


「バールくんの、たった一人の、お友達がねぇ、別の……新しい友達とばかり、遊んでるもんだから、拗ねちゃってる所」


 と返事すると、


「何、その萌えキャラッ!?」


 唐突に、ジルが叫んだ。


「? え? え?」

「ちょっ、何言ってるのよ、ジル!?」


 ジルの妄言を制すべく、ジャンヌはシングルチャットでジルに話しかける。


「え、だって、これ興奮せずには居られないよ!! イケメンの嫉妬シーンとか、めったにないよ!? しかも男友達が遊んでくれないって理由ででしょ? 隣に可愛い彼女がいるのを差し置いて、だよ!?」


「(しまった……)」


 ジャンヌこと、東条亜紀奈は友人の奇癖に閉口した。

 ジルこと、仁藤靖実はアニメ大好きで、しかも美少年と美少年の妖しげな友情物を好んでよく見る。


 美少年は東条亜紀奈も嫌いではない。靖実に見せられたアニメでも、この男の子可愛いな、とは思ったりもするが、その美少年同士がホモカップルとなれば話は別だ。


 ただ、現実でそういう状況は殆ど起こらない。

 ホモの男子なんて見たことない、それが当然だと思っていたのに、まさかこの仮想空間で、そういうシチュエーションに出会ってしまうとは……。


「(ちょっと、ジル! 興奮するの禁止! そういうのが目的だったんじゃないでしょ! ほら、本来の目的を思い出して! 早く!)」

「(……いや、いやいや、もうわたしゃ、バールハイト様の姿を眺めてるだけで良いよ……。 この姿を眺めてるだけでぇ、もうご飯が何杯でもイケちゃうよぉ)」

「(いい加減にしなさいよぉ、この豚っ!!)」

「(はうぁっ!?)」


 グランハイツ若草405号室で、東条亜紀奈が仁藤靖実の腹部に怒りのパンチをめりこませ、その衝撃に仁藤靖実はタブレットを手放して悶絶した。



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