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(68)決戦、フィールドマウス

 白薔薇城の正門は、フィールドマウス率いる紅薔薇軍によって、破壊される直前だった。


「待て、フィールドマウスッ!!」


 俺は白薔薇城を一気に駆け下ると、突破直前である城の正門の上に登り、連中の動きを止めるべく大声を出した。


 なお、琴莉さんは気兼ねなくゲームをプレイできるよう、少し離れて見ててくれている。

 この先の俺が、頭に血を上らせて、どんな奇態をするか分からないだけに、ありがたい配慮だった。


「お前が探してるのは、俺だろう? 望み通り、決着を付けてやるぜ!」

「……やっと出てきましたね、レオくん」


 すると、フィールドマウスは周囲の皆を制止させる。


「皆さん! あのプレイヤーは、私たちの因縁の相手です。 決着を付けるまで、しばらくご観覧下さい!」


「え、何々?」

「今さっきの、賞金首の『レオ』じゃね?」

「あの時『オリオン』が呼び出してた奴?」

「観覧て、決着付けるまで待っとけって事?」


 フィールドマウス頼みの、金魚のフン連中はそんな事を銘々勝手に述べつつも、大人しく発言に従う。

 そして門をくぐると、フィールドマウスは、白薔薇城の正門から現れた俺を、距離を置いて待っていた。


 ……てっきり、油断させて一斉攻撃とか仕掛けてくるかな、と思ったんだけど。


「お久しぶりですね、礼雄くん。 私が誰か、分かります?」


 フィールドマウスは、シングルチャットでそんな事を語りかけてきた。


「誰かって……オリオンの仲間のフィールドマウスだろ、覚えてるよ」

「違いますよ。 私の正体です」


 ……正体? フィールドマウスの?


「アンタの正体? 知らねーよ。 保科の知り合いだろ」

「貴方の知り合いでもありますよ。 私、野口です」

「えっ……!? アンタ、野口さんなのか!?」


 コンビニバイトの、あの気弱そうな、頭のハゲかけたリストラおっさん。


 そうか、フィールドは「野」。

 マウスっていうから、ネズミだと思っていたが、本当はくち

 それで「野口」……。


 野口さんが……フィールドマウスの正体!?


「そうです。 意外でしょう?」

「まぁ、ちょっとはですね」


 正体を知って、思わず敬語が出てきてしまった。

 現実社会では気弱なおっさんが、ゲームの世界では勇敢に突撃してくるなんて。


「なんで貴方が、こんな事を?」

「勤め人はですね、厳しい立場なんです。 やれと言われれば、好きじゃなくてもやらないといけない事があるんですよ」


 じゃあ保科に指示されて、こんな事を?

 そんなの、断れば良いのに。

 自分がイヤな事を、無理してやる必要なんてない。


「年を取るとね、そういう訳にもいかないんですよ。 潰しが効かなくなりますんで。 コンビニバイトでリストラされる訳にはいきませんから、最初はなから断るって選択肢はないん


です。 それに、貴方は誤解してますよ」


 ……誤解? 俺が?


「ええ。 最初こそ確かに面倒でしたが、やってみたら結構楽しくなってきたんですよ、これが! 君を前にして言うのもなんですが、調子こいてる若造を倒して回るのって、痛快ですね! ハハハハハハハ!」


「お前ッ……!!」


「……お前? 『野口さん』でしょう? 桐嶋礼雄くん」


 リアルネームを出され、俺は思わず口を噤む。


 ……こいつ、ネットの常識知らねぇのかよ。

 軽々しく、個人情報をたれ流すなっての!

 これだからリテラシーのない情弱は!


「保科くん……いえ、『オリオン』は、ネットの中では自分を偽らなくて良い、って言ってましたよ。 そう、フィールドマウスってアバターはね、野口という人間が隠していた本音が形になった存在なんです」


 隠していた、本音……?


「だから、礼雄くん。 戦いませんか? 君らが普段バカにしている、小汚い大人の実力、見せてあげますから」


 そういう事か……。

 野口さん、好きでやってるんだな。

 それで間違いないんだな。


 じゃあ、容赦しないぜ。


「野口さん……。 いや、フィールドマウス、貴方はこの世界に飛び込んで、まだ日が浅いみたいですね」

「……確かに、それはそうですが、それが何か?」

「一つ、教えてあげます」

「君が、何を教えてくれると? 子供の君が、大人の私に?」


 俺は息を吸うと、一気に言い放った。


「子供とか、大人とか、そんなの関係ねぇ。 もっと純粋な世界なんだよ、ここは!」

「……純粋?」

「そうだ! ここでは、意志の強さだけが全てを決める! リアルがどうのなんて一切関係ない! 掛かってこい、フィールドマウスッ!」


 すると、野口さんは僅かな間を置いた後、ふふふ、と笑って言った。


「この世界では、この私は、野口ではなく、フィールドマウス……ね。 いいでしょう。 この装備差なら、貴方と戦っても負ける事はないでしょうから……。 全損で決着が付く、デスペナルティルールでよろしいですか?」


 それを聞いて、俺は一瞬躊躇する。

 イベント内において、デスペナルティルールで戦った場合、退場処理と装備奪取処理のどちらが優先されるか分からなかったからだ。


 でも、やるしかない。


「いいとも! その課金装備、失っても後悔すんなよ!」

「君こそ。 ミルフィーユの装備、返して頂きますよ」


 俺は、フィールドマウスから申請されたデスペナルティルールのデュエルを受諾する。


「DUEL START!」


 荒々しい炎を象ったフォントと共に、俺たちの闘いを告げるゴングが鳴らされた……と思ったその時、異変は起こった。


「ふ、ふぉ、ふぉおっ! スペルキャストっ! 『ギャラクシー・エクスプロージョン』っ!」


 そんな叫び声と共に、一瞬天空が暗くなると、巨大な隕石がギィィィインという甲高い轟音と共に突っ込んできたのだ。

 しかも、何発も。


「うおおおっ!?」

「何だこれ!!」

「わあああああっ!」


 周囲の悲鳴に、俺も慌てて盾を構えるが、隕石は俺のアバターを貫通して地面に直撃、ドオォンと大爆発を起こす。

 だが、マイアバターのHPは全く減らなかった。


 なんだ、これ!?


「ぎゃあああっ!」

「何で!? 体力が!」


 天空から雨霰の如く降り注ぐ隕石群によって、さながら空爆の如く、爆炎の華が咲き続く白薔薇城正門前。

 その天変地異を受けて、紅薔薇軍の連中のステータスバー、そのHPは一瞬で全損し……良くても8~9割を減じた。

 だが、小クレーター内に佇むマイアバター「レオ」のHPは、やはり1ミリも減っていなかった。


「(あ、そうか)」


 そのHPゲージを見て、デュエル中は外部から邪魔されないよう、当たり判定が無くなるのを思い出した。

 だから無傷なのか、俺!


「こ、これは一体……!?」


 周囲の異変に動揺するフィールドマウスだったが、その原因はすぐに分かった。


「よっしゃー! 『ギャラクシー・エクスプロージョン』見事命中! 行くぜキャオラッ!」

「奴は今、デュエル中で動けない! チャンスだ!」

「さあ、狩りの時間だぜ!」


 そんな事を叫びながら、正門周囲の遮蔽物に隠れていたアバター数名が、俺たちを……いや、瀕死の紅組を狩りに出てきたのだ。


「ラブデス、追加を頼む!」

「ふ、ふううっ! スペルキャスト! 『ライトニング・ブラスト』!」


 ラブデスと呼ばれた伏兵が、ダウン中の多数の紅組の連中に、巨大な稲妻を放つ。

 光の柱は無数に枝分かれして、ダウンしている連中のHPゲージを次々と消し飛ばし、それでも生き残った奴の一部を麻痺させた。


「わぁあああ!」

「魔法か、これ!?」

「何でこんなに連発できるんだ!? スクロールか!?」

「電撃に、麻痺!?」


 そして、残った連中は恐慌状態のまま、伏兵連中にHPゲージを刈り取られて行った。


「うおぉーし、『ナイト』の首ゲットぉー! 5,000円頂き!」

「ちっくしょ、こいつ『ポーン』だったぜ! たったの1,000円かよ、クソが! もっと課金してこいよ!」


 紅組を襲う惨劇に、動揺の声を漏らすフィールドマウス。


「こ、これは……!?」


 すると


「フィールドマウスから、デスペナルティモードデュエルの中止申請がありました。 受諾しますか? はい(Y)/ いいえ(N)」


 というログが表示された。


 そうか、デュエル中だと、他のプレイヤーに干渉できないから、皆を助ける事ができない。 だから解除を求めてるのか。

 そして、この伏兵の連中は、俺とフィールドマウスが一騎打ちに入ったのを見て、チャンスだと思って仕掛けてきたんだな。

 道理で、やたらタイミングが良すぎると思ったんだよなぁ……。


「どうしました!? デスペナルティモードを解除して下さい!」

「それは虫のいい申し出だろ、フィールドマウス!」


 俺は速攻でフィールドマウスに切りかかる。

 周囲が全滅しかけてるのに、助けないさせないのはやや卑怯に感じるが、このチャンスを逃す訳にはいかない、とも思ったのだ。


「ぐっ!」


 だが、フィールドマウスは俺の突進を避けざま、ブォンというSE付きの「薙払い切り」を繰り出してきた。

 その攻撃は、恐ろしい破壊力だった。


「何っ!?」


 フィールドマウスの武器は、両手剣というより中世日本の「斬馬刀」に近く、ゲームカテゴリでいう所の「大剣」なのだろうが、ギリでガードが間に合ったのに、なんと体力が1割削れた。


「邪魔しないで下さい、礼雄くん!」


 この防御力で……しかもガードして1割削るとか、どういう攻撃力なんだ、こいつ!


「時間切れです。 リザインを自動受諾、デュエルは解除されました」


 俺が選択しなかったせいか、「DRAW」の文字と共に、そんなダイアログが浮く。

 くそ、せっかくのチャンスだったのに……!


「おい、デュエル終わったぞ! 半透明じゃなくなった!」

「チャンスだ、潰せ!」


 だが、そのハイエナの如き伏兵集団は、


「スペルキャストぉぉ! スリープ・クラウド!」

「えっ!?」


 デュエル解除後の僅かな硬直時間、それすらを逃さず、一気に畳みかけてきた。

 眠りの魔法を喰らって、棒立ちのまま倒れるフィールドマウス。


「囲め! 一気にぶっ殺せ!」


 剣士3人が周りを取り囲み、間断無くフィールドマウスに攻撃を加えていく。


「いやっほぉー、ボスちゃんゲットー!」

「こいつ、ビショップかよ! 良い金になるぜ!」

「誰が10,000円ゲットしても文句なしな!」


 そこに、白い衣装のアバター……。

 さっき「ギャラクシー・エクスプロージョン」を使った奴が、その惨劇の場所に近づいてきた。


「ちょっと、待ってよ、ふぅ、僕にも参加させてよ」

「お前は良いだろ、ラブデス! 魔法で稼ぎまくっただろうが!」

「でも、シールに結構お金かかったんだよ、ふぅ」


 その、シールという話題と、鼻息の荒い声を聞いて、ピンと来るものがあった。

 俺はその「ラブデス」と呼ばれたアバターをフォーカスすると、そいつは顔を隠していなかった。

 愛嬌のある丸顔と眼鏡。

 もしかして、こいつは……!


「おい、お前……あの時、コンビニに居た奴か?」


 俺がそう声を掛けると、


「……あ! お前、白組だったのか!?」


 ラブデスも、俺の顔を見てピンと来たらしい。

 やっぱり、こいつは俺とコンビニでウエハースチョコを取り合った、あの皮ジャンデブか。

 てか、味方だったんだな。


「うわぁああっ!? や、止めて下さい、君たち!」


 野口さんが3人に囲まれ、ボコボコにされていく。


「ちっくしょ、堅えなコイツ! 全然減らねぇ!」

「気を抜くなよ! 最後までしっかりハメ殺せ!」

「止めろと言われて、止める奴居るかっての!」


「止めろッ、お前ら!」


 俺はそう声をかけた。

 だが、連中は完全無視だったので、その外輪に居る「ラブデス」に改めて声を掛けた。


「おい、ラブデス! この連中を止めさせてくれ!」

「はぁ!? 何言ってんだお前、ふぅ」

「こいつは、俺と一騎打ちの途中だったんだよ! 決着付かないままで終わってたまるか!」

「いや、お前等の都合とか知らないよ、ふぅ、獲物の横取りとかさせないよ、ふふふぅ」


 くそ、こいつら……!


 だが、その時、意外なチャットが入ってきた。


「礼雄くん、この人たちをどうにかして止めて下さい。 私も、貴方と決着を付けずに、このイベントを終わらせるのは本意ではないです……」


 フィールドマウスが、シングルチャットで、そんな事を俺に囁いてきたのだ。


「しかし、どうやって……?」

「見逃せば金を渡す、と言えば良いんです。 それは私が出しますから」


 ……確かに、それならこの状況を脱出できる。


 だけど、フィールドマウスは何故こんな申し出を?

 このまま無様にやられたら、保科にバカにされるせいか?


 とかいう疑問も同時に湧いたが、確かに、俺もフィールドマウスとの決着は付けたい。


「おい、お前等、止めろ! 止めてくれれば、そいつの分の報奨金を、俺が代わりに払う! それで良いだろう!?」


 ……すると、反応があった。


「……いくらだよ?」

「100,000Cenで良いだろ、一人25,000で!」

「バカか、それじゃこいつぶっ殺しても一緒だろ!」

「礼雄くん、倍出します! 一人50,000で交渉して下さい!」

「なら、一人50,000出す! それなら良いだろ! そいつを解放してやってくれ!」


 俺がそう言うと、ただ見ていただけの琴莉さんが、口を出してきた。


「礼雄くん、それマズイよ! お金を払うのが嘘だったら、どうするの!? 復帰と同時に攻撃されたら、逆に危険だよ!」

「(……あ)」


 しかし、それを言った時には、もう3人組は拘束を解き、フィールドマウスを解放していた。


「助かりました……ありがとうございます」


「おい、アイツの言うとおりテメェを助けてやったんだから、変な気を起こすなよ!」

「おい、そこの……『レオ』! さっさと金寄越せ!」


「……おい、フィールドマウス。 約束は」


 俺は恐々と声を掛けた。


「わかっていますよ、レオくん」


 フィールドマウスは、そう言って周囲を安心・油断させ、あの大剣を振り回して、周囲のハイエナを一気にぶった斬るかと思ったのだが、


ーーーーーーーーーー


「フィールドマウス」が「レオ」に対し、以下の条件でトレードを要求しています。 承諾しますか?


・「フィールドマウス」:200,000Cen

・「レオ」      :回復薬


はい(Y) いいえ(N) 条件の再提示(R)


ーーーーーーーーーー


 ……本当に、200,000Cenのトレードを申し出てきた。


 俺はすかさず「はい(Y)」をタップしたが……。


 この状況、何なんだ?


 今、この瞬間、俺は20万Cen儲かった。

 この場で全員を裏切れば、20万Cenが丸儲け、だ。


 仮に、俺が50,000Cenを一人一人に配るとする。

 その直後に、フィールドマウスを再びボコれば、またお金を引っ張り出せる可能性は高い。


 というか、この時点でのフィールドマウスのベスト選択肢は、皆を裏切って逃げる事なのだ。


 ……だが、その最適行動を誰もがせず、俺はその場のハイエナ伏兵4人「ユーヴィクターズ」「愛さん」「スヴェイル」「ラブデス」に、それぞれ50,000Cenを渡した。


「よっしゃラッキー!」

「おい、お前、もうどこにでも行って良いぞ!」

「一騎打ちでもなんでも、とっととケリ付けちまえ!」

「これで、ちょっと足しになった、ふぅ……」


 と、暢気にはしゃぐハイエナ4人組。


「ありがとうございます、レオくん……」


 しかも、野口さんは、交渉した俺にわざわざ礼を言ってきたのだ。


「……意外だね。 なんて平和」


 琴莉さんが、画面の中を見て、そんな感想を呟く。

 それは俺も同様だった。

 琴莉さんから聞いて気づいていたが、この取引は本来成り立たないものだったのだ。

 それが成り立った。

 この場に居合わせた全員が「裏切らなかった」からこそ、成り立ったのだ。


「礼雄くん、君にも」


 そう言って、野口さんは俺にも10,000Cenを渡そうとしてきた。 交渉のお礼のつもりか。


「そんなの良いよ、フィールドマウス。 でも何でアンタ、そこまでして、生き残ろうってしたんだ?」

「受け取らないんですか? ……ま、理由は色々です。 貸しを作りたくないというか、私のプライドのためですよ。 こんなガキどもにボコられたくなかったんです」

「その代償は大きかったな」

「そうでもないですよ、ここに来るまでに結構稼ぎましたから、微損と言った所です。 それに……」

「それに?」


 フィールドマウスは、空に向かって、剣を振った。


「おかげさまで、間に合いました。 改めて、ありがとう、礼雄くん」


 それは、周囲の伏兵への合図だった。


「スクロール! パラライズ・クラウド!」

「何ッ!?」


 ハイエナ4人と俺を、麻痺の煙が襲い、俺たちはバタバタと麻痺して倒れる。


「(……しまった! バトルに夢中になってた間、フィールドマウスは援軍を呼んでたのか!)」


 交渉はそのための、時間稼ぎ……!


「危なかったですね、フィールドマウスさん! 助けに来ましたよ!」


 さっき、ハイエナ連中が隠れていた遮蔽物の陰から、今度は紅組の連中が次々と顔を出した。


「よくもマウスさんを! こいつら、ぶっ殺せ!」

「わああああっ!」


 麻痺している俺たち4人組を、紅組が取り囲み、ボコボコに殴り始めた。


「礼雄くん……君への礼は、さっきしたつもりです。 ここからは、容赦しませんよ」


 そして、フィールドマウスは、俺のアバターに向かって、大剣の容赦ない一撃を喰らわせてきたのだ。


「ぐああっ!」


 ガズンという音と共に直撃を喰らったマイアバター「レオ」はそんなダメージボイスを吐き、4割もの大ダメージを受けて吹き飛ばされる。

 なんだよ、この超ダメージ!? 防御力350超なのに!?


「待て、フィールドマウス! てめぇ、汚えぞ!」

「気を抜いてた君が悪いんですよ。 戦場が、いつまでも平和なままだと思っていましたか?」

「お前ぇ……!! 助けてやっただろ!?」

「もう、君との貸し借りはありませんから」


 やっぱりこうなった、と琴莉さんが小さく呟いた気がしたが、今はそこに気を裂いてる場合じゃない。

 俺は必死にレバガチャして脱出しようとするが、その前に突進してきたフィールドマウスの追撃を喰らい「レオ」のHPゲージは、残り1割にまで減少した。


「ぐうっ!?」

「これまでです! 終わりですね、礼雄くん!」


 くそっ……!

 たった僅かの油断で、こんなことになるなんて……!


「スクロール! パーガトリー・フレイム!」

「スクロール! パラライズ・クラウド!」


 だが、俺の命運はまだ尽きていなかった。

 突如強襲した炎の柱と麻痺の雲が俺たちを襲い、


「おおっ!?」


 フィールドマウスだけが麻痺して、炎の柱の中に崩れ落ちた。

 何事か、と思ったが、


「待たせたな、レオ!」

「こっからは俺たちに任せろや!」


 そう言って、颯爽と頭上から登場してきたのは、「Bara」と「GunーBlaze」こと、南原先輩と西川先輩だった。


「先輩!? どうしてここに……!?」


「お前の電話で、考え直したってこった!」

「今日は味方だぜ! 大船に乗ったつもりでいろや!」


 そして二人は、フィールドマウスを中心に展開し、正確な剣撃と射撃でダメージを与え始めた。


「こないだの借りは返させてもらうぞ、フィールドマウス!」

「く……! な、何故、こんなことに……!」


「フィールドさんがヤバい!」

「おい、救出に向かえ!」


 フィールドマウスの劣勢を見て、援護に駆けつける連中。

 だがそれを、さらに横から襲った軍勢が居た。


「サザンナイト・エクスプレス!」


「うおわぁっ!?」

「ぎゃああっ! 体力が!」


 そこに現れたのは、ムラサメだった。


「いくぞ、『リント』、『エナリス』! 敵を全滅させるぞ!」

「ふぁ、ふあぁあい……」


 そして、場は一気に剣と魔法が入り乱れる混戦模様となった。


「お前は逃げてろ、レオ! 戦うなら、体力を回復させてから来い!」

「わ、分かりました!!」


 こうして、再び白薔薇城正門前は、戦場と化した。


 俺はちょっと考えたが、琴莉さんに回復してもらおうと思い、正門から再び城の中へと舞い戻る。

 その時、戦局を確認に後ろを振り返ると、フィールドマウスと、あのラブデスとかいう伏兵集団は、既に姿を消していた。

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