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(6)冒険の海へ

DATE : H27.1.19

TIME : 18:56

STID : *UNKNOWN*


俺たちは夜食の買い物を済ませてコンビニを後にし、チャリを押しながら龍真のマンションを目指す。

久しぶりの会話に龍真の近況を聞くこともなく、『還魂のリヴァイアサン』のゲーム内通貨が、実際には不可能なはずの、現実の通貨と何故換金できるのかを問いただしていた。


「で、何故現実の通貨と換金できるのか。 そのカラクリだが…」

「何なんだ」


「ズバリ言うと『広告収入』だ」


「広告…」


思わずそう反芻したが、これだけ自信たっぷりに言うって事は、ゲーム内にアダルトサイトへのバナーが貼られてるとか、そんな事じゃないよな。 

広告、で考えられる事と言えば…。


「もしかして…」

「何だ? 思いついた事でもあったか?」

「ゲームをプレイしてる最中に、CMが流れたりするのか…?」

「その通り。 正確にはCMじゃなくて、CF(コマーシャル・フィルム)と言うがな」


龍真が説明してくれた所によれば、このゲームでは、プールされた原資…メーカーのスポンサーが用意した『賞金』を、プレイヤー同士が取り合う、という形になっているらしい。

その賞金の源が『広告収入』、つまりスポンサーがゲーム内でCMを流す代金としてメーカー側に渡したお金、なんだそうな。


「…あの、知らなくてアレなんだけど、CM料って、そんなスゴいのか?」

「まず、テレビの例で説明しよう。 平成26年における日本の総世帯数は52、717千世帯だが、そこに平均視聴率10%の番組が流れたとする。 すると、5、271千世帯の人間がその番組を見る事になる訳だ」

「約520万人か…」

「そう。 視聴率が15%の番組なら、約800万人だな」

「なるほど。 今の携帯ゲーム機はCM流せるほど高画質化してるし、『モンスターバスターポータブル2』みたいに、400万本売れたメガヒットソフトもあるしな。 それならゲームでCM流すのは可能…か。 でも、何で今までそれが無かったんだろうな」

「市場が小さいからだ。 そもそも、お前が今言った前提は間違っているぞ。 この例なら、同じメーカーのオンラインゲーム『モンスターバスターフロンティア』の一般的な接続数を例に上げるべきだろう」

「市場が小さい…って、どれくらいだよ。 あのネトゲもかなりヒットしてたんだぞ」

「あのゲームの接続数は、最大6万、平均3万だ。 つまり3万人しか、ゲーム内CMを見ない」

「3万!? テレビの1%以下!?」

「ああ。 根本的に市場が小さい…それがゲーム内にCMが出てこなかった理由だ」


だが、龍真はそこで一息ついてから、言葉を継いだ。


「…ったのだが、最近になってちょっと事情が変わってきた」

「何?」

「通販サイトなどで『あなたへのオススメ商品』とか、『この商品を買った人はこんな商品も見ています』って欄を見たことがあるだろう?」

「ああ、あるよ。 あれ不気味なほどに、的確にオススメしてくるよな」

「あの仕組みを『レコメンダシステム』と『協調フィルタリング』と言うんだが、『リヴァイアサン』を製作した、株式会社カプリコンはそれをCFに組み込んだ」


…え? え? ってことは…。


「じゃあ、個人それぞれが好きそうな、オススメCMしか流れない、って事…?」

「その通りだ。 しかも時間が経つほどに、その傾向は顕著になる」


そうなると、どうなるんですか、藤宮先生。


「ユーザーセグメントを最適化した事で、ニーズマッチング率の極めて高いCFが作製、放送出来るようになったんだ。 不特定多数の家庭に流れる、無作為に放送されるCMよりも、遙かにユーザーの潜在需要を喚起する要素となった事で、ネットゲーム内の市場価値が再評価された」


…は? つ、つまりどういう事?


「要は、CMよりもCFの方が広告効果高いから、テレビのCMと同じように計算しないで、もっと人数増やして考えてよ、という事だ」


それでも良く分からんが、まぁCMを見る人間が3万人より増える、って事を言いたいのは分かった。

で、実際どれくらいになるのさ。


「多く見積もっても7万人前後だろう」

「それでやっと1%越えかよ、少ないな」

「いや、そうでもない。 テレビ局の予算は、局によってかなり幅があるが、平均して2000億円くらいだ」

「に、2000億!?」

「そしてこの予算の大部分が、スポンサー…企業からの広告収入で賄われている事を勘案すれば、たった1%でも、費用対効果が十分にあるのは分かるだろう?」

「…2000億の1%って、つまり」

「ユーザーが7万人強と見積もれば、30億円だ。 実際は他にもあるんだが、とりあえずこれが、人参として僕ら競争馬の鼻先にブラ下げられている、という事実を理解できたかい?」


「はぁ…まぁ、なんとなく分かった。 俺たちはゲーム内でCMが流れるのさえ我慢すれば、賞金30億円目指して戦う事ができますよ、って事だな」


だが、俺がそう返答すると、龍真は頭を抱える仕草をした。


「僕がこれだけ分かりやすく説明したのに、そんな端的な理解しかできないのか…」

「悪かったな! 俺は藤宮先生みたいに頭良くありませんから! ってか、お前、案外ゲームの事知ってるんだな」

「経済ゴールドスミスの先月号に記事が載ってたんだ。 新時代のゲームビジネスモデル、ってな。 それで興味を持った」


そんな雑誌読んでるのか…。

とにかく、30億円を接続数の5万人で割れば…一人当たり6万円か。

つまりそのゲームで勝ち抜けば、15万円を作るのもそれほど難しくない、かもしれない。

っていうか、龍真は否定してたけど、それ1000万円も普通にありえるんじゃね?


…そう考えたら、結構やる気出てきた。


敷居の低いソーシャルゲームに中毒性の高いMMOとか、かなり極悪な組み合わせ。 

きっと参加者は多かろう。

だがこっちは、小学生の時からゲームやってんだ。

そんじょそこらのニワカユーザーには負けたりしないぜ。


「燃えるなぁ、ゲームやってお金が貰えるって…! 俄然やる気になってきたぜ! 株式会社カプリコンって、素晴らしいメーカーだな!」


俺は、意気込んでそう龍真の肩を叩いたが、


「何を言ってるんだお前は」


当の龍真は苦笑していた。


「儲かるのはユーザーじゃなくてメーカーに決まってる。 実際にやってみれば分かるが、実物は悪魔のようなゲームだぞ」

「え、だって今、儲かるって言ってたじゃん…」

「儲かることは儲かる。 だが、誰でもって訳じゃない。 実際にこのゲームで稼げているのは、ほんのごく一部の人間…強プレイヤーの連中に限られてる。 僕なんか、ゲームそのものに不慣れだから、課金してパワーアップしないと、ごく普通のプレイヤーと張り合う事すらできない」

「なるほど」


…よーく分かった。 確かに、龍真が古参ゲーマーの連中とバシバシやりあってる絵なんて、全く想像できないしな。


「残念だが、お前の想像の通りだ。 正直、僕のチームの攻撃力は、他の連中に比べて大きく水を空けられてる。 そういう訳で、戦力補強のために、お前をスカウトしたいんだ」


なんだか、プロ野球のスカウトみたいだ…と、俺は思わず苦笑してしまう。


「まぁ、分かった。 その前に一つ確認したい」

「なんだ」

「15万円くらいだったら、そのゲームで稼げるのか?」

「分からない。 金額的には十分可能だとは思うが、そもそもお前自身の戦力が、あのゲームでどれだけ通用するのか、全くの未知数だからな」


まぁ、それはそうだよな。

実際に…体験しないと、何事も分からない。

ダウンロードは無料って事だし、試すだけ試してみよう。


「よし、良いぜ。 一緒にプレイしよう、龍真」

「分かってくれて嬉しいぞ、礼雄」


龍真が、仰々しく片手を差し出す。


「行こうか、冒険の世界へ」

「よろしく頼む」


その手を、俺はしっかりと握り返した。


「…っと、その前に」

「どうした」

「いや、ちょっと今日は帰りが遅くなる、って連絡しとこうと思って」

「そうだな、それが良い。 むしろ泊まっていけ」

「おいおい、彼女さんが居るのに、そんな事できるかよ」


軽口を叩きながら、俺は携帯を取り出し、あかり姉の番号を呼び出して電話した。


…出ない。 まだ帰宅してないのかな?


しょうがないので、メールアプリで「今日は友人と勉強しますんで、遅くなります。 夕飯までに帰れないので、叔父さん達に伝えておいて下さい」と送信しておいた。


「よし、これでOK。 行こうぜ」

「ああ、期待しているぞ」


だが、龍真のマンションに近づくたびに、


”礼雄…。 貴方、またゲームする気なの!? 皆に言ったでしょ、もうゲームは止めるって!”


心のどこかで、そんな叫びが、あかり姉の声で再生された。


…心配しないで良いよ、あかり姉。

分かってくれないかもだけど、これはゲームじゃなくて、ちょっとした新型のバイトみたいなものなんだ。 

もう、以前みたいに、我を忘れてゲームにのめり込むなんてしないからさ、安心してくれ…。

本当に、俺はもう、大丈夫だから…。


そんな事を、俺は何度も繰り返し思いながら、俺は心に焼き付いた、あの日のあかり姉の泣き顔を慰め続けた。



DATE : H27.1.29

TIME : 18:20

STID : *UNKNOWN*



龍真の自宅は、近年開発された駅郊外の新興住宅地、そのド真ん中にある。

高級ホテル然とした、超豪華な高層マンション。

玄関は電子ロック式で、ホールのようなロビーを抜け、病院によくある業務用ベッドが入りそうなほどデカいエレベーターで、一気に最上階まで上っていく。

その通路の最奥、街の美しい夜景が一望できる20ー1号室が、龍真の部屋だ。


「お邪魔しまーす」

「どうぞー、わ、礼雄君久しぶり」

「はは、スイマセン、いきなり来ちゃって」

「外寒かったでしょ、こっち暖房効いてるよー、どうぞどうぞ。 あ、リョウくん、コート預かるよ」


そう言って出迎えてくれたのは、石原のぞみさん。

龍真の彼女で、俺と同じ宇園大学の教育学部2年生だ。

龍真は法学部だから北キャンパスになるが、彼女は俺と同じ南部キャンパスに居るので、生協(学生食堂)で、本当ごくたまに顔を合わせる事はある。

ショートカットがよく似合ってて、笑顔も可愛くて、正直、こんな娘が彼女だったら良いな…なんて考えた事もある。


「すまないな、のぞみ」

「ううん、準備は出来てるよー」


だが石原さんは龍真の彼女であり、二人はラブ視線を交わすと、さっさと隣の部屋に入っていった。


「…にしても」


久しぶりに龍真の家に来たが、相変わらず中も超スゴいな。

まるで、中世ヨーロッパの王室みたいな豪華な内装。

本革のソファ、背の高い観葉植物、シャンデリア、誰が描いたのが分からない油絵の風景画、派手な壁時計、そして棚の上の豪華な調度品の数々。


苦学生の俺には、それらがいくらくらいするものなのか、さっぱり価値が分からない。

かろうじて価値が分かったものと言えば、本棚に並んでいる、ブリタニカ百科事典のハードカバーくらいだ。

ただの百科事典じゃなく、一冊が13,500円もする超高級品で、それのフルセット全36巻がズラッと並べられている。


…一体お家賃いくらなの、コレ。

セレブは違うわー。

将来の官僚スゴいわー、格が違うわー。

やっぱ庶民の踏み込める所じゃありませんわー。


そんな感想を抱いていると「おい、礼雄何やってる? 早くこっちに来てくれ」と急かされた。


「うぇい、今行きますー」


隣の部屋では、豪華なテーブルをこれまた豪華そうなソファーが囲んでて、石原さんが俺達3人分の紅茶を入れてくれた。


「よし、礼雄、さっそく始めようか」


龍真が待ちきれない、という感じで催促してくる。

お前は小学生かよ。


「おお、どうすれば良いんだ?」

「まず、『リヴァイアサン』をダウンロードしてくれ。 カプリコンの公式HP、サインボーグ、ベルニッチストア、ググループラス、どこでも落とせるぞ」


俺は自分の携帯…。 

小型スマートタブレットを取り出し、UASシリーズに実装されている基本OS「サインボーグ」が提供しているゲームアプリのページ「サインボーグショップ」に移動、検索で「還魂」で検索。


すると速攻で「還魂のリヴァイアサン」は見つかった。

タップして展開、使用規約の一番下に移動して「同意します」をさらにタップ。


「よし、インストール開始」


俺がそう呟くと、


「おい! 利用規約はちゃんと読んだか!?」


龍真が慌てた様子でそう言った。


「え!? 何かあったのか?」

「規約はちゃんと読んでおけ! このゲームは、個人情報を多量に収集する、って書いてあったんだぞ!」

「でも、もう同意しちゃったし」

「まぁ…そうだな…。 しかし、迂闊だぞ」


書類を読まずにハンコを打つようなものだ、と龍真は言った。


「てか、個人情報の収集って、何があんだよ? 他のアプリでも、よくある事じゃん? そんなに目くじら立てるようなもん?」

「それは、プレイしながら説明しよう。 …多分、お前も引くと思う」


…引く?


「あ、インストール終わったぞ。 以外と軽いんだな」

「インストールは2回あるんだ。 今のは基幹システムのインストールで、2回目にチェックとデータインストールが行われる。 こっちがかなり重い」

「チェックって何だよ…。 お、始まった」


いくつかの企業広告が通り過ぎると、荘厳な音楽と共に、「還魂のリヴァイアサン」のタイトルが仰々しく表示された。 メニューは今のところ「START」だけなので、とりあえずタップする。


「あれ? タップしても、何も始まらないんだけど」

「そこに鍵がふわふわ浮いているだろ? それをドラッグして、メニューの脇の扉のアイコンに重ねてくれ」

「ああ…こうか?」


ガチャ、と扉が開…かない。


「おい、何だよこれ」


だが、龍真に聞くより早く、画面に変な文字列が現れた。


「ボイスパスワード登録『リヴァイアサンズ・メルヴィレイ』…? 何だこりゃ」


だが、俺がそう呟くと同時に、ガチャとアイコンの扉が開いて、画面が白く光った。

続く電子音声で「ようこそ、我らが冒険の海へ!」とアナウンス。


「何だこれ」

「指紋認証と声紋登録だ。 犯罪抑止のために、ログイン時に毎回記録される」

「し…もん!?」


ええっ!?

『指紋認証』って、ドラッグで鍵を突っ込んだ時に!?

カメラか何かで指紋撮られたの?

ってかそんな事、俺聞いてないよ!


「その通りだ。 だが、これも規約に書いてあった」

「うわ、何かイヤな気持ちになるなー」

「ゲームの仕様上、仕方ないと思うぞ。 このおかげで『なりすまし』によるログインは不可能になっているからな」


…なるほど、確かにこれなら、携帯を奪われても、他人にログインされる危険性はほぼない。

お金が絡むとあれば、確かに犯罪防止策は不可欠だからな。

指紋を勝手に撮られたのはイヤだけど、それで物理的なアカウントハックを完全防止してると思えば、納得すべきなのだろうか。


すると、画面はアバター登録へと移った。


「よし、じゃあ次はアバター作成だな」

「私が撮ろうか? 綺麗に撮ってあげるよ」


そう行って、石原さんが腰を上げ、手を差し出して俺に携帯を渡すように促してくる。


…撮る? え、まさか、これ…?

もしかして、デジ研で南原先輩が、自分に似たキャラを使ってたのは…?


「ああ、そうだ。 このゲームのアバターは、カメラで自分を撮ることで自動生成される。 まさに『自分の分身(アバター)』だな」

「マジで!? 自分で自由に作成できないの!?」

「出来ない。 理由はもう分かるだろ」


は、犯罪防止、ですよね…。


「その通り」

「でもこれ、写真とかを撮影すれば、『なりすまし』できるんじゃ…」

「その話はよくある。 有名人の写真や、アニメキャラで登録しようとする連中は多いらしい」

「じゃあ」

「止めといた方がいい。 2回目のインストール前に、データチェックが入る。 肖像権や著作権に触れるのが分かった時点で、警告される。 やり直してなんとか登録できても、最初からインモラルプレイヤーの仲間入り、とハンデを負うぞ」

「わ、分かったよ…」


本当はそれでも、自分をそのまま登録するのはイヤだったのだが…。


「じゃ撮るよー、はい笑ってー。 1+1は?」

「2」


カチャ。


「おお、いい感じじゃないか」

「わ、ちょっと可愛いー、似てるー」


ゲームの中に出現した俺のアバターは、カメラで撮った写真を元に、ちょっといい感じにデフォルメして再現されていた。

なんというか、少年マンガに出てくる、脇役のやんちゃ少年、と言った感じのキャラだ。


「似てるよー、礼雄くんそのものだね!」

「そんな…似てるかな?」

「ああ、似てるぞ、いい感じだな」


だけど、このアバターは、いかにも「ちんちくりん」な感じで、俺はあまり好きになれなかった。

もしかすると、このアバターが本当に自分に似てたから、だろうか。


…というか、これではっきり認識できたが、やっぱりマイキャラ作成の時に、自分の名前を入れたり、自分のイメージを投影する奴って、良くも悪くも自分に自信のある奴、だよな。


こんなキャラ作るくらいだったら、「魔法少隊まじかる☆あーじゅ」のピンク娘、キルシュブリーテで登録した方がまだマシだった。

でもそれだと、藤宮や石原さんにどん引きされてしまうしな…。

主にキモオタ的な意味で。


「よし、最後に名前登録だな」

「え、もう終わり? って、何でお前が勝手に入力してんの?」

「本名を入力しなければならないからだ。 携帯キャリアの契約者固有IDと照合されるから、どっちにせよ偽名だと弾かれる」

「マジかよ! 本名プレイとか、それはいくら何でも恥ずかし過ぎるだろ!」

「心配するな、ニックネームの入力は可能だ」

「ニックネームも、『レオ』で良いんじゃない?」

「そうだな、そうするか」

「ちょっと待てー! 何お前等、勝手に入力してんだよ!」

「良いじゃないか…。 どうせ僕が入力しても、君が入力しても、内容はさほど変わらないんだし」

「いや、そういう問題じゃねぇし!」


気分の問題だし!


「でも、レオくんって名前、カッコいいと思うけどな。 呼びやすいし」

「うん、のぞみの言うとおりだ」


わー、何ー、何ですかこれ。

民主主義ですか?

いわゆる数の暴力って奴ですか?


「ニックネームは『レオ』…と。 これで2回目のチェックとインストールが終われば、冒険が可能になる」


勝手に終わらされたー!


はい、と龍真からタブレットを手渡され、何か急にやる気が無くなった俺は、最終チェックの「はい」を無造作にタップする。


すると、2回目のインストール画面へと移行し『キャリアと通信中… 登録内容を照合しています…』と、先の入力内容をチェックしてる旨のメッセージが出てきた。

1分ほど待って、入力内容と携帯の空き容量のチェックに「合格」した旨が表示された。

ま、当然だけどな。


そしてデータインストールが始まったのだが…。

今度はインジゲータが全く動かん。


「…今度のインストールは、かなり重そうだな」

「チェックにも多少時間が掛かるが、インストールデータでは、マップ、アイテム、インスタンスシステム、モンスターデータをまとめてコピーするから、かなり時間掛かるぞ」

「どれくらい?」

「約20分」

「長ッ! ってかデカッ!」

「ははは、時間を無駄にする気はないぞ」


龍真はそう朗らかに笑いながら、自分の携帯とヘッドセットを俺の方に差し出して来た。


「とりあえず僕のキャラを使って、のぞみと一緒に冒険に出てくれ。 分からない事があれば、随時説明する」

「え…?」

「よろしくお願いします、礼雄くん」


石原さんは、にっこり笑って、そう言った。


<続く>

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