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(24)決着

俺は突進してくる相手に「喉元突き」でカウンター気味の牽制をしたが、「キリエ」は戦闘開始時に見せた「双剣カウンター」からの連続攻撃を繰り出してきた。

追撃を受けて吹っ飛ぶマイアバターの前で、キリエはそのまま剣を腰だめに構え、金属質の高い音と共に、剣に光を集め始めた。


…ヤバっ!

明らかに普通の剣技じゃない。

これ、必殺技系の何かだ!


そう思った瞬間、俺の予感どおりキリエの剣が巨大化し、光に包まれて、俺に向けて轟、とレーザーのように放たれた。


「喰らえ、『ブレイドストライク』!」


だが、軽快な音を立ててそのレーザーは虚空に散った。


「へあっ!?」


と、キリエ先生が変な声を挙げる。

というのも、俺が慌てて構えた盾が、たまたまタイミングよく「ジャストガード」になったのだ。

普通のガードと違い、「ジャストガード」には、削りダメージもノックバックもない。

チャンス、と思って俺は派生技「シールドパリング」で反撃に出るが、敵も突発的な展開には慣れているのか、上段袈裟斬りは双剣の「クロスブロック」で止められ、下段足払いは「ジャンプして頭上から強襲してくる技」で豪快に避けられた。

周囲の歓声が、大きく耳に響く。


「…くっそ!」


冷静だな、こいつ!

混乱して、正常な思考力が失われてる時がチャンスだってのに!


ならば、と俺はフェイント…「喉元突き」をキャンセルしてサイドステップをしたり、遠くから上段袈裟斬りを空キャンセルして下段斬りに移行したりして、相手に迫った。

奇手による攻撃は功を奏し、一撃二撃を相手に与えた。

キリエは無理に俺の行動を読もうとするあまり、フェイントに釣られたのだ。

だが、そこで急に相手の動きは変わった。

フェイントにいちいち対応するのは無駄と悟ったらしく、キリエは突如として二刀流を繰り出し始めたのだ。


「…!?」


そしてすぐさま悟ったのが「俺は勝てない」という事だった。


現実の剣道でも、二刀流はルールで認められているものの、実践している人間はほぼ居ない。

だが、なんでもありのゲーム世界においても、二刀流と戦った経験のある人間は殆ど居ないのだ。

確か、二刀流のある格闘ゲームは、数ある作品群の中でも「侍塊」と「ロウニンブレード」の2本くらいしか記憶になく、そして俺はそれに手を出した事がない。


要するに、俺は二刀流なるものと戦うこと自体が初めてな訳で、初めて見るその異様な剣筋に言葉を失った。


一言で言うと、とにかく変幻自在。

文字通り、剣があちこちから降ってくる。


上段、中段、上段、下段中段上段中段下段。


中学の時、ふざけてボール2つでテニスをした事があるのだが、感覚としてはあれに近い。

「どこを守ればいいのか」という意識が千々に分散され、注意までもが散漫になる。 予測ができない。

思考速度や反射神経の速度が倍になれば、二刀流にも対応できるのかもしれないが、いきなりではまず無理だ。


かの二刀流の剣豪・宮本武蔵が最強と言われた理由が、なんとなく分かる気がした。

致死の斬撃が、こんな予想外の速度と手数と軌道で襲いかかってきたら、並の剣士は即座に地獄行きだろう。


「(…失敗したな、こりゃ)」


敵の中段突きを、シールドパリングで叩き落としてカウンターを繰り出そうとしたら、それに相手が二撃目を合わせてきてこっちが叩き落とされ、さらにキャンセルで攻撃に繋げてきやがった。


やっぱ、こいつ強い。

偽物のキリエ先生だが、実力は本物だ。


俺の挑発は、明らかに敵を怒らせて戦闘力を増しただけ。

見る間に俺の体力は削られ、たちまち残り4割へと落ち込んだ。

対して敵の体力は、最初の8割から7割になったかどうか、その程度。


もう、どうやっても勝てないという事は、もう理解していた。 

明らかに万策尽きていた。


だが、それでも俺は最後まで剣を振るい続けた。

相手に良い格好なんてさせてたまるか、冷や汗かかせてやるぜ、そういう気持ちでスマートタブレットを操作し続けた。


「…やるじゃん、お前」


おっさんの声で、キリエ先生がそんな事を言ってくる。


「さっきの『ブレイドストライク』の時点で、終わってた予定なのに。 お前、防御堅ぇなぁ」

「そりゃどうも。 ところでさっきの『ブレイドストライク』、アニメ版とは全然違うよね」


アニメ版は黒い稲妻が敵を貫く技だった。

こいつのは、ゲームの似たモーションで代用した「ぼくのかんがえたひっさつわざ」なのだろうが、自分で必殺技名を叫ぶとか、痛いにも程があるぜ。


だが、キリエは恥ずかしげもなく反論してきた。


「あのな、ゲームはそういう『なりきり』が楽しいんだろうが。 自分以外の誰かになりきるから『RPG』ってんだぜ」

「『パクり』と『なりきり』は違うけどな」


俺もさらに煽り返す。

だが、多分効果薄ってのは分かってはいた。

いくら煽ろうとも、そんなので動揺する相手じゃない。


「…そうかい。 じゃあ、もう終わりにしてやるよ。 喰らえ、必殺…! 『ワールドバースト・エクストリーム!』」


再度の必殺技名発声を聞いて、俺は「またかよ」と思ってしまった。


というのも、「ワールドバースト・エクストリーム(=W・B・X)」は、原作小説では、無数の剣撃を敵に浴びせる、キリエの最終奥義だ。

それを形だけ真似た「ぼくのかんがえたひっさつわざ2」如きに、そんな真似ができる訳ない、と思っていたのだ。


「…何ッ!?」


だが、それでも俺は驚愕の声をあげざるを得なかった。

キリエの剣が、頭上と足下から同時に襲いかかってきたのだ。

頭を反射的にガードするが、当然のように足下を斬られる。

そして、ノックバックから復帰しようとしたその時に、今度は頭と胴体を同時に攻撃される。

今度は胴体をガードで護ったら、頭に一撃を喰らった。


「なんだこの技!?」


…双属性攻撃!? 

上段と下段を同時に繰り出されたら、ガード不能じゃないか!


今までの攻撃は、速度こそ厳しいものの、一応ガードは出来た。

そもそも「敵の攻撃に対応する方法は必ずある」のが、ゲームの不文律だ。

だがそれを無視した攻撃に、俺は少なからず驚愕していた。 

ガード不能の連続攻撃だなんて。


何か脱出の方法があるのでは、と思ったが、ダメージのノックバックから回復した時には、既に次の攻撃が俺に襲いかかってきており、それすらままならなかった。


アニメのキリエが放つ「無限の剣撃」に対しての、偽キリエが放つ「必決の連撃」。

なるほど、これで「W・B・X」を再現した訳か…と、俺は歯がみしつつ、どこかで感服していた。


「終わったぜ! ワー・ビー・」


盾を構えたくとも、もうできない。

俺はさっきから操作不能状態になっていた。

体力がとっくにデッドラインの2割を切り、そこで固定されていたからだ。

だが、勝敗を告げるリザルト画面は、まだ表示されていない。


ズタズタに切り刻まれるマイアバター、その惨劇の最後に、キリエが高々と双剣を両腕に掲げ、


「エーックス!!」


二刀によるダブルの袈裟斬りを決めた。


「(…なんだそれ)」


かくして、マイアバターは遂に倒れた。

と同時に、横から流れてくる「YOU LOSE!」の文字、一瞬の間を空けて飛び込んできたリザルト画面。

炎に燃える二人のファイティングポーズ、それが俺の方だけ急に色あせ、炎に包まれ燃え尽きる。

そして、燃え残ったキリエのドヤ顔がデカデカと表示され、その上にカノンちゃんが飛び込んできてアナウンスする。


「こんっぐらっちゅれいしょーん! おめでとうございまーす! イベント『剣闘士の祝宴』優勝者は、キリエくんに決定いたしましたぁー! おっめでとうございまぁすー! 」


それを聞いた俺のリアクションは、はぁあ、というこの日一番のため息だった。


<続く>

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