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双面のソウセイド  作者: 鹿野介助
第一章 覚醒潮流
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出発 その三

 ゆっくり深呼吸を十数回。ようやく手足が動くようになった。

 地面の仮面に目をやる。固まった笑顔が、まるで俺を嘲笑っているように見える。

 この仮面をつけると肉体が強化される。しかし、そのかわりに仮面を外すと反動が押しよせてくる。ちょうど仮面をつけた時に動いた分だけ、体が疲労するようだ。さっきのように無理をしたためか、足首も少ししびれた。逆にいえば、後で疲れる分しか、肉体を強化できないということ。

 もしも限界を自覚せずに肉体を酷使した後、仮面を外せばどうなるか。

「……ぞっとしないな」

 俺は仮面を拾い上げ、腰に下げた。後で疲れるだけなのに、ただ移動するだけで仮面をつける意味はない。

 もちろん、仮面を捨てる必要もない。それなりの代償をしはらわなければならないと判明したが、それを理解しておけば使える力だ。反動もしびれがあるくらいで、痛みは感じなかった。もしもの時、充分な切り札となる。

 それよりも、はるかに大きな問題があることを思い出した。俺は皮袋を拾って、中にある竹筒を振った。それほど多くの水は入っていない。

 もし竹筒が空になった時は、岩の隙間を流れている水を飲もうと考えていた。しかし塩水では飲んでも喉が渇くだけ。汚いどうこう以前の問題だ。慎重に皮袋へ竹筒を入れ、しっかり腰に結んだ。

 塩水が流れているということは、ここは少し前まで海の底だったのだろうか。それとも、俺の記憶にない何か別の理由があるのだろうか。

 ふいに、ずっと遠くから雷のように低い音が響いた。背後をふりかえったが、青空には雲一つない。地平線の果てから雨雲が追って来ているのだろうか。

 空耳だろうかとも思いつつ、俺の歩みは自然と早足になった。雷が落ちそうな時、何もない場所にいては危ない。

 そして天候だけではない、もっと嫌な予感も首をもたげていた。何もない荒野に、ぽつんと一つだけ存在する人工物。


 ……まるで墓標のようじゃないか。

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