重月 その二
ダオメは鎖をかつぎ、俺は鉄棒を持った。
さらに俺は皮袋と仮面を両腰に下げ、幌布の長い切れ端を日光よけ……いや、月光よけのため、肩へかけた。
持ちきれない物は、もちろん邪魔なだけなので捨てていく。体力がない時に重い物を持って移動することに意味はない。
シャンロウの肉も、調理するあてがない以上、捨てていくしかない。しかし、あまりにも巨大な死体を全て無駄にすることには、もったいないという気分もあった。
「ナイフに、できる」
ダオメも同感だったらしい。
指示されたとおりに鉄棒をシャンロウの歯と歯の間にねじこんみると、意外とあっさり巨大な一対の牙を抜きとれた。牙の根元に布を巻きつけて柄を作れば、一対のナイフが完成した。
先端が尖っているだけで切断するための刃はないが、丈夫で軽く、道具としての使い道も多そうだ。俺とダオメ、それぞれ一振りずつ持つことにした。
俺たちは、すぐにその場から離れた。
理由の一つは、シャンロウの死体がますます強く腐臭を発して、吐き気がするほど不快だったため。その臭いに誘われてか、岩の割れ目から、名前もわからない小さな虫がはいでてきて、白骨にこびりつく生肉をかじりはじめた。
理由のもう一つは、この場にいると新たな脅威が襲ってくるといわれたからだ。二つの満月が輝いて真昼のように明るい空を、黒く太い指でさし、これは脅威が襲ってくる兆しだとダオメがいった。とりあえず俺は信じるしかなかった。
巨大な白骨死体を背に、俺たちは急ぎ足で西へ向かう。俺よりも地形にくわしいダオメを前に、俺は鉄棒を武器のようにかまえて背後にも気を配りながら進む。
俺は岩の割れ目に足をとられないよう、上面が平坦な岩を選ぶように足を運んだ。ダオメは前方をまっすぐ見て、ゆるぎなく歩いていく。
ダオメが着ているマントが風になびき、黒い太股が見えた。
腰に小さな布を巻いただけの半裸体に、マントだけを着けているという、ちょっと間の抜けた格好ではある。しかし、背筋をのばして威風堂々と進むダオメの背中を見ていると、王のような威厳すら感じられた。
その姿を見て、ずっと前に抱いた疑念が、再び首をもたげてきた。




