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双面のソウセイド  作者: 鹿野介助
第一章 覚醒潮流
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赤塵 その一

 休んでいるダオメの背中を見て、俺も地面に座り込む。

 いったん仮面を脱ごうとして、思い直した。背中に手をやると、ぱっくり大きな傷が開いている。シャンロウの爪が切り裂いた痕だ。しかし指先を見ると血はついていない。傷の深さからすると、血が止まったとも考えにくい。

 じっと掌を見る。竹槍が割れた時の傷は、ぱっくり割れているが、これもまた血の一滴すら流れ出していない。

 ……いや、傷口に血が浮き出てはいる。しかし血のしずくは一列に並んだまま、大きくも小さくもならない。小さな赤い豆粒を傷へ埋め込んだような見た目だ。

「……まさか」

 少し意識を向けてみる。浮き出ていた血が、すっと傷口へ染みるように消えていった。また念じると、血が一滴だけ浮かぶ。念じるたびに血が一滴ずつ増え、戻るように念じると、すっと消えた。

 試しに掌を地面に向けて、血を落としてみた。肌の表面にふれている間は、その場にとどめることもできた。しかし自在に動かせるほどではない。そして小指の第一関節ほども皮膚から離れると、血は赤い塵となって、風に吹き散らされていった。


 これが仮面の、真の力なのか。

 どうやら単純に肉体が強化されているだけではないらしい。おそらく、体内の血流を意識したとおりに動かすことができる。血に力を込めた反動か、体外で空気にさらされた時は、通常より早く凝固する。

「こういう仕組み……か?」

 仮面の力が本当に血を動かすことなのか、そして力をどう応用するかは、後でじっくり考えよう。とりあえず今は傷を治すことが先決だ。

 掌の傷を指でつまむようにくっつけ、血の流れを意識する。血を通すための体内の管が繋がった感触を確認する。そして切れ目へ血をにじませ、かさぶたに変化させて接着する。これで掌の治療が終わった。

 背中に手をまわし、掌と同じ方法で傷口を繋げていく。端から端まで傷口が閉じたことを確認し、仮面を外した。

「……うっぷ」

 急激な吐き気と痛み、疲労感が襲ってきて、俺は地面に寝転がった。

 体の内側が熱く、じんじんと痺れたような感覚がある。仮面の力で偏っていた血液が急に流れ始めたためだろう。指一本も動かせない。

 だが、あらかじめ治療した傷口は閉じたままで、血が流れ出ることはなかった。それに、長く仮面をつけていたわりに、最初に仮面をつけた時の疲れとほとんど変わらない。血流を整えようと意識してから外したおかげだろう。修練すれば、この疲労を感じずにすむようになるかもしれない。

 あおむけに倒れたまま、空を見上げた。二つの太陽が、ちょうど真南に見えている。これから少し陽がかたむいてからが、今日で最も暑い時間帯だろう。

 ひどく喉が渇いた。とりあえず目前の敵は片づけたが、まだ問題は何も解決していない。

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