表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
増殖する惑星  作者: 金城絢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

第二章:目覚める鼓動

「地球が、生物?」

理論物理学者のアレクサンダー・ポポフは、私の仮説を一蹴した。

「水瀬博士、それは科学ではない。SFだ」

「では、これをどう説明します?」

私は過去三ヶ月の調査データを全て提示した。

火星、金星、水星──すべての遺跡から共通して見つかったもの。それは「生殖の記録」だった。

彼らの文明は、惑星の異変を観測していた。

地殻の急激な変動。マントル対流の異常な加速。そして、惑星の「分裂」。

「彼らの記録によれば、地球型惑星は約45億年で『成熟』し、生殖を開始するそうです」

「生殖?どうやって?」

「生殖期に入ると、惑星の核は不安定化し、分裂します。その一部が膨大な磁気エネルギーによって射出され、新しい惑星として成長する。その過程で、元の惑星は磁場が消え、大気が消失して死にます」

ポポフは鼻で笑った。

「そんな現象、観測されたことがない」

「いいえ」私は反論した。「観測されています。ただ、私たちはそれを『惑星の破壊』だと思っていただけです」

スクリーンに、過去数百年間の天文観測データを表示する。

「2074年、ケプラー452星系で惑星サイズの物体が二つに分裂する現象が観測されました。当時は『巨大衝突』だと考えられていましたが」

データを拡大する。

「分裂後、両方の物体は安定した軌道に入り、現在も存在しています。これは衝突ではなく─」

「生殖だと?」

「はい」

「一度の生殖で、複数の惑星が誕生することもあるのか?」

「火星の記録には明記されていませんが、可能性はあります」

会議室に、重い沈黙が落ちた。

その後、世界中の科学者が総動員され、「惑星生物学」という新しい学問分野が誕生した。

地球物理学者たちは、地球内部の詳細な観測を開始した。

そして、発見された。

地球の外核に、不可解な構造。

「これは…細胞核?」

データを見た途端、私は理解した。

地球の層構造である核、マントル、地殻は、生物の細胞構造に酷似していた。

核は「核」。マントルは「細胞質」。地殻は「細胞膜」。

「マントル対流は、細胞質の流動」

「プレートテクトニクスは、膜の変形と再構成」

「火山活動は、物質代謝、あるいは排泄」

データをさらに詳細に分析すると、内核の結晶構造に、規則的なパターンが刻まれていた。

「これは…情報?」

量子レベルでエンコードされた識別コード。

『解読結果:284』

「地球自身が、自分の番号を記憶している…」

すべてが、つながった。

地球は生きている。

そして、46億年の時を経て、成熟期に達していた。

「では、人類は?」

誰かの問いに、私は答えた。

「おそらく、腸内細菌のようなものです。惑星にとって、私たちは共生生物。あるいは─」

言葉を濁した。

「あるいは?」

「寄生虫」

さらに研究は進んだ。

火星の遺跡に残された記録を詳細に分析すると、驚くべき事実が判明した。

彼らの文明──「第283番地球」の住人たちは、惑星の生殖を予測していた。

そして、その過程で自分たちが死ぬことも。

「『生殖の際、惑星は膨大なエネルギーを放出します。その過程で、表層の生命はほぼ全滅する』」

マリアが、解読した記録を読み上げる。

「彼らは選択を迫られました。惑星の生殖を止めるか、受け入れるか」

「結果は?」

「受け入れました。そして、次の世代──つまり地球に、メッセージを残した」

「何と?」

マリアは、最後のページを表示した。

そこには、こう記されていた。

『我々の遺伝子を受け継ぐ者たちへ。惑星は生きている。お前たちもいずれ、この選択に直面する。生殖を止めれば、惑星は死ぬ。受け入れれば、お前たちが死ぬ。 どちらを選んでも、苦痛だ。だが、知れ。惑星の生殖は、宇宙の意志だ。抗うことはできない。我々は、子供たちの未来を選んだ。お前たちも――そうするだろう』

会議室に、沈黙が満ちた。

そして、地震計が警告を発した。

地球内部で、何かが動き始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ