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4話
アントワネットが作った“ライ麦パンケーキ”は、
宮廷から農村へ、
農村から町へと、噂のように広まっていった。
最初に笑顔を見せたのは子どもたちだった。
「甘い……!」
「これ、美味しい!」
「お姫様が作ってくれたんだって!」
母親たちはその笑顔に安堵し、
老人たちは震える手でケーキを口に運び、
涙を浮かべて呟いた。
「……助かった……ありがとうよ、王女様……」
その声を聞くたび、
アントワネットの胸には温かいものが灯った。
「よかった……
ほんとうによかった……」
だが――
その“温かさ”とは別の感情が、
少しずつ村を満たし始めていた。




