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18話

車もあまり通らない小さな路地の奥…


午後の陽光が斜めに差し込む、

街の奥にある小さな古書店。


棚には誰も買わないような古書が並び、

紙のにおいと埃の匂いが静かに混じる。


店の一番奥、

ランプの明かりだけが灯る机で、

老人は一冊の古い手書きの本を閉じた。


そこには、

歴史書にも載らない本当の物語――

ルイとマリーの“真実”だけが記されていた。


老人はしわの深い手で、そっと本を撫でる。


「……パンが無いなら、ケーキを食べればいいじゃない……、か。」


その声は誰にも聞こえないような、

小さな、小さな呟きだった。


「……皮肉でも、傲慢でもなかった……

 民を守りたかった、優しい娘の……最後の願いだったのにな……」


灯りが揺れ、

老人の影が長く伸びた。


彼はゆっくりと窓の外を見る。


冬の光。

雪まじりの風。

遠くで子どもたちの笑い声。


「……あの二人が生きた時代より、

 少しは……人間は前へ行けたのだろうかねぇ……」


ページを閉じた本の表紙には、

今では誰にも読まれなくなった古い題名。



老人はゆっくりと椅子にもたれた。


「……今日もまた、語り継ぐ者は、わし一人か……」


そこへ――


チリン。


ドアベルが、再び鳴った。

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