14話
ルイの足が、動かなくなる
馬から転がり落ちるように地面に降りた。
立とうとした。
進もうとした。
だが足が震えて、
石畳に崩れ落ちた。
手が石を掴む。
指から血がにじむ。
呼吸ができない。
目が開いていられない。
それでも、
視線だけは、離れなかった。
(……あれは……
違う……
嘘だ……
夢だ……)
否定が何千回、心を殴った。
だが風は残酷で、
その髪を揺らし、
その顔をさらし、
“真実”だけを突きつける。
彼女は、いない。
もう、どこにも。
⸻
喉から出たのは、声ではなく空気だった
ルイは口を開いた。
叫ぼうとした。
泣こうとした。
彼女の名を呼ぼうとした。
だが声は出なかった。
空気が漏れただけだった。
「あ、……っ」
その音が、
この世でいちばん痛い断末魔のように響いた。
近くの兵士が青ざめて呟いた。
「殿下……
……誰か……止めろ……」
だが誰も動けなかった。
ルイの目は、
涙もなく、
怒りもなく、
ただ――壊れていた。
⸻
王という存在が崩れ落ちる
広場の空気が重く沈んでいく。
誰もが理解し始めた。
凱旋の道から突然飛び出し、
凄まじい速度で王都へ駆け戻り、
この場所へ一直線に来た理由。
彼は知っていたのだ。
愛する人の死を。
だが、
それでも「間に合ってほしい」と願って走った。
そして今――
すべてが砕けた。
石畳に両手をつき、
地面に額を押し当て、
声にならない声が震えた。
世界は光を失った。
ルイの心もまた、
同じように暗闇へ落ちた。




