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13話
王都の石畳を、
馬の蹄が狂ったように叩き続けた。
人々は突然の王太子の出現に驚き、
道を開けた。
「王太子殿下!?
どうして――」
「殿下、凱旋の行列は――」
その全てを無視して、
ルイはただ城門へ、
広場へ、
“ある一点”へ向かって走った。
胸が裂けるようだった。
(頼む……
頼むから、生きていてくれ……
アントワネット……!!)
街の喧騒は耳から消えていた。
ただ心臓の鼓動だけが耳を打つ。
ドン……
ドン……
ドン……
坂を駆け上がる。
大広場に出る石段を上る。
視界が開ける。
そして、
ルイは――
見てしまった。
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広場の中心。
処刑台のような白い足場。
木の柱。
高い掲げ台。
冬の冷たい朝日。
そこで、
風に揺れていた。
アントワネットの首が。
頬に残る微笑みの名残。
細い睫毛。
陽にすける金色の髪。
鮮やかすぎる赤。
その全てが、
“本物”であることを否応なく示していた。
世界が止まった。
音が消えた。
空気が凍りついた。
広場で騒いでいた民も、
ルイを追ってきた兵士たちも、
皆が同じ方向を見る。
だが――
ルイだけは、
“世界に一人きり”になった。




