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第7章 — 死に触れる走り

次の夜は鉛のように重かった。

リョクは車を砕石場の裏にある放棄された高速道路へと運び込む。

賭けも、観客もいない――あるのは、カイゼンに見られた“敗北”を否定したいという、むき出しの衝動だけ。


彼はアクセルを踏む。

さらに。

さらに。


車は自分の部品を振り落とそうとするかのように震える。

荒れた路面がタイヤの下で跳ね、

どの穴も事故の始まりになり得た。


だがリョクは緩めない。

限界を感じたい。その先を越えたい。


スピードメーターが震える。

ハンドルは傷ついた獣のように暴れる。

風は氷の刃のように彼の肌を切り裂く。


最後のカーブで、彼は常識的な制動を完全に無視した。

車は滑り、回転し、制御を失う――

世界がひっくり返り、光と内側の悲鳴が渦を巻く。


金属が地面を削り、

ガラスが砕け、

音は凶暴そのものだった。


車がようやく止まったとき、

崖際に傾いた車内で、

リョクは口の中に金属の味――血を感じた。


ヘッドライトが点滅を続けている。

まるで助けを求めているかのように。しかし、それが来ることはない。


動こうとしたその瞬間――彼は“見た”。


ひとつの影。

人ではない。

煙と“欠落”で形作られた存在。

顔はなく、

だが湿った炭火のように輝く“目”だけがあった。


それは潰れたボンネットへ近づき、

まるで新しく壊れた芸術品を観察するかのように身を屈める。


声は空気からではなく、

リョクの“頭の中”から響いた。

重く、そしてエンジンに取り憑いたように滑らかで――


「落ちる瞬間、お前は俺を呼んだ。

  ――だから来た。」


リョクは震える。

声が出ない。


影の指――存在しないはずの指先――が

ねじ曲がった金属に触れる。


「まだお前の“時”じゃない。

  お前には……まだ俺に与えるものがある。」


そしてヘッドライトがついに息絶え、

世界が完全な闇に沈んだ瞬間。


存在は静かに告げた。


「あとは俺に運転させろ。

  ――人間が辿りつけない場所まで連れていってやる。」

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