第2章 — 眠らないエンジンたち
十三歳のとき、リョクは沈黙にも音があることを知る。
それは学校の裏にある整備工場のエンジン音――胸の奥で代わりの心臓のように震える深い唸りだ。
遅れてきた救急車の記憶が戻ろうとするたびに、彼はその音を聞いて世界を押しのける。
彼は整備士たちを観察する。
油で汚れた手、疲れた照明の下で光る工具、眠る獣のように開かれた車。
リョクは多くを話さない。質問もしない。
ただすべてを見る。
ピストン一つ、フィルター一つ、エンジンが息をするたびの微かな揺れ。
彼の中には、あの日なぜ時間が裏切ったのかを知りたいという、飢えのような衝動がある。
里親の家の小さな部屋で、彼は古いラジオや壊れた玩具を分解する。
エンジンの唸りのリズムを再現しようとするが、どれも本物とは違う。
執着は骨の中で錆のように育っていく。
彼は図面を描き始め、部品をスケッチし、学校の誰も読まない本を読み漁る。
歯車の夢を見る――そして、その夢の中でさえ歯車は遅すぎる。
ある夜、橋を渡っていると、リョクは車が暴力的に加速する音を聞く。
その音は湿った空気を傷のように切り裂いた。
彼は震え、その振動の中に何かが目覚めるのを感じる。
名前はつけられないが、あれに追いつかねばならない、あれを制御しなければならないことだけはわかった。
車が遠くのカーブで姿を消したとき、冷たい風が彼の背を撫でた。
一瞬だけ、リョクは誰か――いや、“何か”が、
彼のうなじのすぐ後ろでエンジンの唸りを真似したような感覚を覚えた。
まるで彼を選んだかのような、残響だった。




