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流れ

作者: 郷新平

 光俊は遊びに飢えていた。そんな時に森のプールの噂を聞きつけた。

 放課中、教室の中では、グループで話す者達、寝る者など、各々の過ごし方をしている。

「夏なのに何か、いい事ないか?珠美」

「あるわけないじゃない」

「もうすぐ、夏休みだぜ、パーっと弾けなきゃ」

「そんな事より、夏休みの宿題を早く、終わらせる計画を建てた方がいいんじゃない?」

 光俊と珠美はもうすぐに迫っている。光俊は夏休みに向けて、遊ぶ事しか考えていなかった。

「聞いた?森にプールができてるの」

「なにそれ?」

  クラスメイトの女子の話に光俊は身を乗り出す。

「何?怖」

 そう言うとクラスメイトはそそくさとクラス外に出て行った。他のクラスから、誰かに会いに来ていたらしい。

 光俊は目を輝かせて、珠美を見る。

「聞いただろ?」

 珠美は溜息を吐くと呆れた目で光俊を見る。

「あんた、宿題は?」

「帰ってから絶対にやるよ」

「しかも、所有地でしょ?絶対に駄目」

「まあまあ、いいデートスポットになりそうだから、所有者が来たら、直ぐに逃げようと」

「不法侵入よ」

「少しだけだって」

「もう」

  光俊の勢いに押されて、珠美は渋々ながら、許可した。


夜になると、水着を持って、珠美と合流して、チャリで森の中に入って行った。

 暫く、進むと徐々に明るくなって行った。

 森が終わると、そこには装飾が施された門があった。警備員が立っていて、笑っている。まるで、招いているように感じた。

 明るく、愛想のいい、警備員だが、何故か不気味に感じた。

 中に入り、プールサイドに行き、暫く待っていると恥ずかしそうに珠美が入って来た。

「綺麗だよ」

 そう言うと珠美はにっこり笑った。

 2人でプールに入り、中央位に行くと教会にいるようなシスターが入ってきた。

 プールサイドに立つと

「ナナナナ」と合唱を始めた。

  2人は驚いていると、老人と学校で噂話をしていた女生徒がプールサイドに向かってくる。

  何を言うのか、2人は待っていると老人は口を開いた。

「この町は大昔、生贄を神に捧げていた」

  2人は何となく、聞いたことがある伝説を思い出した。老化が早く訪れる病に罹るひとが続出した時に湖に人身御供をすると、ピタリと病が止んだと、

「そうじゃ、その内に生贄に選ばれた者達に不満が出てきて、町人は神と闘い、折衷案で、だったら、生贄は自分から行くという事になったんじゃ」

  2人はドンドンと悪い予感がしてきた。

「そう、遊びに行きたくなるような情報を流し、まんまと引っかかった奴を生贄にするとな」

  2人はプールサイドに向かって、泳ぎだす。

  ドボンいう音がする。

  プールの水が抜けて、2人は流れていった。

  水の流れに沿うように2人は逆らえずに流れていく。

  暫くすると、水の抜けたプールに出た。

  2人は周囲を探していると老人が居た。

  プールサイドに老人が登っていくのが、見える。

「この神は交渉で、お前達の生気を喰らうんじゃなく、お前達が生きていく筈だった時間を喰らったんじゃ」

  2人は老人が何を言ってるかわからない。

「この年代はどうなってるかのう」

  老人は笑いながら、去って行った。

  2人はプールから上がると、着替えて、家に帰った。

  家に帰ると、母親がお帰りと言って、迎えてくれた。

  疲れたからそのまま、眠りについてしまった。

  朝になって、テレビを見ると、風呂柳銀子とゲストが写っている。

  光俊は思った。このゲストは誰だ?このファッションは?

  光俊は珠美に電話する為に、電話を探すけど、電話が見つからない。

  光俊は母親に聞く。

「電話知らない?」

  母親は正方形の箱を光俊に渡す。

「何だよこれ?」

  光俊は怪訝そうに尋ねる

「アンタのスマホだよ」

「俺が欲しいのは電話だよ、あの黒いダイヤルを回す」

  今度は母親が怪訝そうな顔をする。

「アンタ、黒電話って、いつの話をしてるんだい?」

  何かが、変だと思いながら、正方形の画面を弄るとパスワードを入れろと表示されたので、自分が入れそうな数字を入れた。

  すると、画面が開き、色々な表示が出た。光俊は興味津々で、弄りまわす。

  老人が外からその様子を見ていた。

「コップに注がれた水のようにお前達が本来流される流れは飲み込まれた。次は新しい流れがくる。古い流れは神に飲まれ、新しい流れに乗ったんじゃ」

  老人は生贄が自主性になった時から、始めにプールに飛び込んで、時代の変化をこの目で見てきた。それ以来、時間をドンドン、進ませてきた。現代ではスマホと呼ばれるのを弄りながら、どんどん時代は移り変わっていくのを楽しみながら、次の流れまで、この世を楽しむ事にした。

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