心の架け橋
そこは死んだ者達の心が集まる不思議な部屋。
その部屋は一面白く覆われており、たくさんの心が揺れ動いている。
不思議な感覚だ。
心がとても軽く、体が宙に浮いてしまっている。
何も考えないでいられる、幸せな空間。
しかし、いつしか私は意味不明な状況に陥っていた。
なぜだろう。
気が付くと目の前には、全裸姿の男が立っている。
その男に迫られると、不意に精液をかけられた。
初めて抱いた恐怖と、悪の感情。
心に入り込もうとしてくる、穢れた汚物。
泣き崩れる私。
しかし、気が付くと私は誰かに背中をさすられていた。
その者は私の名前を繰り返し呼びながら、その暖かい手で私の心に手を差し伸べてくれた。
ホッとするような、そんな温かなぬくもり。
口から吐き出した穢れを捨て、私は自身を、心を取り戻すことができた。
だが、いつしかその者はいなくなり。
私はまた、再び全裸の男に迫られていた。
必死にもがくも、私の心の中に入り込んでこようとする男。
また、あの時のように、
私は男に精液をかけられていた。
私はその液体がつもり重なったかのような、穢れた液体の中に座り込みながら。
しかし、以前とは違い泣かず、遠い目をしながら自身を見ていた。
すると、その部屋の壁が破壊され、大勢の者達が部屋の中に勢いよく入り込んできた。
その者らは言った。
悪を殺せ、と。
彼らを見て私の心は一瞬、強く動揺した。
壁を突き破る彼らを見て感じたのだ。
希望の光を。
その先に、果てしない自由があるのではないかと信じて。
そう思い手を伸ばそうとした、その時。
どこからか、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
聞き覚えのある声。
擦られた背中が、私の胸が和めていく。
あの時の温もりが、私のあるべき道を示してくれる。
彼らは行ってしまった。
この部屋の壁を突き破ってさらに奥の部屋へと。
私は彼らを見届けた。
穢された憎悪でまみれた心をした黒色の彼らを眺めながら。
なんと哀れな者達だろうか。
けれどいつの日か、またあの空の下で共に笑える日が来ますようにと。
そう思いながら私は、頭上にあいた穴から見える太陽を眩し気に見つめた。