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Girls have Partner

 自転車をおしながら、ギャルを尾行する。

 知り合いのおばちゃんに挨拶されないかドキドキしながらそーーとだ。

 やっぱりちょっと楽しいな。これ。

 それにしても、不思議なのは何も行き先だけじゃない。その格好もだ。

 金髪なのは相変わらずなのだが、服装がいつもと違う。普段は制服の襟の辺りを思いっきり開け放っていて、スカートもめっちゃ短い。よく、生徒指導の「へんたい木内」が怒鳴り散らすのを見るし。まあ、効果は全くないみたいだけど。余計なお世話なんだけど、いつか木内の血管がちぎれそうだ。まあ、それはそれで頭髪検査が楽になっていいかな?って思う。奴には悪いが、ここらで退場してもらおう。

 まあ、そんなことは置いておいて、何が不思議なのかというと今回はいつもの着崩した制服ではなく、かつ、ミニスカートでもない。きっちり全身を覆おうジャンパーを羽織っているのだ。しかも迷彩。ズボンも同じように着崩している感じが微塵もない。しっかりと足を隠している。こちらも柄は迷彩である。戦場にでも行くのか?それに靴は登山用のごついヤツだ。それにいつもカバンにジャラジャラとつけているなんだかよくわからないキャラクターのストラップが一切見当たらない。本当に普段の「だらしない格好の連中(by木内)」の代表格と同一人物なのだろうか?

 中でも一番おかしいのはギャルが背負っている荷物である。

 黒くて、縦に細長い謎のバックなのだ。見たことないタイプ。何か長いものが入っているのは確かだけれど、何が入っているかはやっぱり謎だ。ギターケースにしては布っぽいし、そもそも楽器ケースはもっと硬くて箱状な気がする。コレは完全にレザーとかなんとかそーゆーモノでできている感じがする。質感的にはスポーツバックとかに近いかもしれない。ほら、部活で長い道具を入れるようなヤツ。

 そうゆう推理に浸りながら、歩いていると山道に入った。この上り坂を自転車を押しながら進むのか。そう考えると、若干気が滅入ってくる。まあ、ここまできて帰るのもなんだし。それに今帰ったら、親がまたうるさいし…

 よし、行くか!

 私は覚悟を決めるとそのギャルの後を再び追い始めた。


 結論

 見事に見失いました!ここまできれいに撒かれると、いっそ清々しい。

 いや、まあ、正確に言うと撒かれたというより、壁の監視所に向かう道に入ってしまって見えなくなったんだけど。

 それにしても、あそこからどこへ向かったんだろう?あの先は本当に監視所しかない。穴場の喫茶店があるとかそういうことでもなく、本当にあの道の先にはそれしかないのだ。突き進んで行っても、すぐに壁に行き着いてしまう。

 一瞬、壁の向こうに向かったのかとも考えた。

 でも、まあ、そんなわけはないか。あの壁の向こうはモンスターしかいないし。何より、許可証がないとは入れないのだ。近所に住む猟師のおじさんが言うには、あれは銃を持っていないと発行されないらしい。ギャルはまず持っていないモノだろう。いくら15歳で猟銃所持免許が取れるとは言っても、ギャルに銃の組み合わせはあまりにも似合わなすぎる。

 とりあえず、一旦、山を下ろう。来た道を戻っていけば、すぐにでも休憩所につく。

 結局、ギャルがどこになにをしに行ったのかはわからず仕舞いだった。正直、気になりはするけど、今は昼食のほうが大事だし。さっきからお腹が減って仕方ないのだ。

 私は自転車に飛ぶように跨ると、ギアを軽くして猛スピードで山を下った。


 やってしまった。

 目の前には女の子が血だらけで横たわっている。私のタイヤには血。

 良く見ると、女の子は人間ではない。腕が羽のハーピーだ。それでも、それでも私の血の気が引き切るのには十分な衝撃があった。

 轢いてしまった。

 私は慌てて、自転車から飛び降りる。その衝撃で自転車が倒れため。弟のだが、今はそれどころじゃない。早く、このハーピーを何とかしないと。

 近寄ってみると、背中は動いている。生きてはいるみたいだ。ひとまず、安心。それにキズのほうもよく見ると引っ搔き傷や擦り傷ばかりだ。自転車にひかれたような傷はない。

 私のブレーキが間に合わなくて轢いてしまったのかとも思ったが、違うみたいだ。ちょっとくらいは当たったかもしれないが、ぶつかったとか轢いたとかいうほどではないっぽい。

 ちょっとホッとした。

 何ホッとしてるんだワタシ!?今はそれどころじゃないだろう。早く、この子を病院に!病院に…病院でいいのか?動物病院のほうがいいのだろうか?野生のハーピーを轢いた経験なんて一度もない。とゆーか、そもそもハーピー自体、あんまり見かけないモンスターだ。対処法がわかる方がどうかしている。とりあえず、自転車の後ろに乗せて、家に運ぼう。傷を塞いで、それからどうしようか決める。

 よし、それで行こう。そうと決まれば、あとは実行あるのみだ。私は自転車を引き起こし、ブレーキをかけてからハーピーの下に駆けつけた。あと、倒れた時にこぼれたコンビニの袋を前カゴに戻す。その後、ハーピーを起こして担ぎ上げる。

軽っる!?

意外な軽さで、勢い余って投げ飛ばしそうになるのを何とかこらえる。空を飛ぶ動物はそのために身体を軽くしてあるとは聞いたことがある。あるけど、それにしても、これは軽すぎる。同じくらいの身長の姪っ子を想像していたから、そのギャップもあって余計驚いた。

 いったん、そのまま自転車まで走っていき、ハーピーを降ろす。そこでパーカーを脱いで、右手に持つ。少し、寒いが仕方が、まあ、そんなことも言ってられないし、ココは我慢ガマン。

 ふたたびハーピーを背負って、余っている左腕を後ろにまわして支える。中腰の姿勢で何とか落ちないようにしながら、脱いだパーカーの袖をつかんで、後ろに投げるようにし、左手でこれをキャッチ。そのまま、パーカーの端を掴んだ左手を前に持ってきて、両袖を前で結ぶ。これで固定完了。そのまま、自転車に乗って再び加速。さっきまでは爽快だった風のせいでパーカーの結び目が取れるんじゃないかと冷つきながら、坂を下っていく。無事でいてくれ愛しのMy.ハーピーちゃん。まあ、さっき拾ったんだけどさ。


 とりあえず、無事に家に到着。背負ったハーピーを落とさないように、自転車を降りて…

 ブレーキは無理そうだから、少し雑だけど自転車を再び倒す。すまん、弟よ。あと、恐らく潰れたコンビニの食品たち。後で弟にはお詫びを渡さないと。この食品でも渡すか?見た目は悪いが、食べられはするだろう。ちょっと潰れただけだしね。ヘーキヘーキ。

 そんなことより、今はハーピーだ。私はしゃがみこむと、ハーピーを地面に降ろす。申し訳ないけど、ちょっと庭の端っこにどかさせて貰おう。

 そのまま、家に入ると弟がいたので、とりあえず、さっきのコンビニ袋を押し付けておく。潰れた中身を見た弟がドン引きしているようだが、後でそれを食べるのは君なのだよ。ああ、我が弟ながらなんて哀れな男なのだろう。

 まあ、そんな哀れな弟のことは放っておいて、リビングにいたママに救急セットを要求。友達がちょっと手を切っちゃって、外で待ってもらっていることにしておいた。流石に野良ハーピーの怪我を塞ぎたいからといえない。とゆーか、言ったら、めんどくさそうなので言いたくない。テキトーにカルパスとかをお菓子&パパのおつまみBOXからあるだけ取って、包帯と一緒に持っていく。あと、友達の怪我ってことにしているのに、包帯とカルパスのみ抱えているのは不自然。とゆーわけで、カモフラージュ用に絆創膏とか消毒液とかを風呂桶に突っ込んで玄関を出る。

 その時、後ろで青ざめた弟がなんか言っていた気がするが、無視しておく。

「おい、ねーちゃん。まさか、この潰れたコンビニの食いモン、俺に食わせるつもりじゃないよな?ねーちゃん?おい、なんか言えよねーちゃん、目そらさないでくれよ。ねーちゃん!」

 あー、聞こえない。聞こえない。


 ハーピーの方はだいぶ、弱ってはいたが無事ではあった。風呂桶に入れたペットボトルの水はチビチビとだったが、飲んでくれた。良かった。

 包帯を結ぼうとして、抵抗された時は割と本気でこっちが死ぬかと思った。ハーピーのかぎ爪はリザードマンの硬い皮膚すらも簡単に貫いてしまうらしい。そんな爪をもった1メートル級のモンスターが手元でバタバタと暴れるのだ。こっちとしては、生きた心地がしない。私は傷だらけになりながらも、なんとか包帯を巻き終えた。ハーピーの方は暴れつかれたのか、倉庫に止めてあったパパの車の下に潜り込み、寝てしまった。こっちとしても、今すぐ横になってしまいたい。疲れた。

 なんとか玄関に辿り着き、四つん這いになりながら二階の自室へ。階段を何とか這い上がり、俺の自転車がどうたらという外から聞こえる弟の猛抗議を無視して、なんとかベットに潜り込む。その日の私は夢すらも見ないほど、ぐっすり眠った。

 こんなに良く寝たのは、まあ、久しぶりだった気がする。


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