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難破船

作者: 目262

 アルテミス計画発動から数年後。

 月へと向かうオリオン宇宙船は航路途中で前方に巨大なデブリを発見。オリオンは急遽逆噴射で停止した。レーダーやセンサーが感知しないこのデブリを、クルーが窓から偶然に目視しなければ、宇宙船は衝突していたかもしれない。肝を冷やしながらオリオンのクルーたちは、微速でデブリを遣り過ごすことにした。

 一体どんな代物なのか。

 数百メートルの距離を保ちながらそれを通過する際に、観察をするクルーたちは目を疑った。どう見ても水上船、それも中世以前の旧い木造船なのである。しかしその大きさはオリオンの十倍はあり、船体の材質も無論木材ではない。船はあちこちが破損して、中腹には大きな穴が空けられている。周囲には岩石らしい物が漂流していることから、どうやら隕石に衝突したらしい。

「こんな物が宇宙にあるなんて……」

「これ迄発見されなかったのは、高度な遮蔽装置が今も生きているためだ。この船は何だ?」

 異星人の宇宙船。

 その言葉が思い浮かぶが、あまりにも異様な船の姿にクルーたちは困惑するばかりだ。その中で只1人、日本人クルーの若い女が青ざめた顔で呟く。

「そんな……。まさか、本当のことだったなんて……」

 彼女の言葉に船長が反応する。

「君には心当たりがあるのか?」

 女は大変なショックを受けており、相手の問いかけに応じることなく呻き声を上げるばかりだ。

「帰れなかった……。帰れなかったんだわ……」

 謎のデブリを通過後、漸く落ち着きを取り戻した彼女から話を聞いたクルーたちは尚も信じられなかった。そしてこの出来事は仲間だけの秘密にすることに決めた。

 彼らの今後のキャリアを考えれば当然のことだ。録画も失敗しているのに、話だけで誰が信じるというのか。

 千年以上も昔の伝説が事実だったなど。故郷へと帰っていった筈の竹から産まれた美姫が、本当は遭難していたなどと……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは上手いし面白い。この手のSFを書きたいと思っていた者としては、羨ましい冴えです。
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