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文字数まばらでごめんなさい!!!!

 陽翔に再会して、飲みの約束をいつ頃果たそうか、悩んでいたらメッセージアプリに陽翔の方から連絡が着た。

 再会して二週間が過ぎたころだった。


『仁、久しぶり。中々連絡来ないけど、仕事忙しいのかな?今週金曜夜暇なら飲まないか』


 陽翔は再会を喜んでいてくれた。逃げずに気持ちの整理をつけると腹をくくった手前、俺も一歩踏み出さなければ。今までの恋人に合わせる顔が無い。


『仕事が少し忙しくて昼間少しだけなら時間取れるけど、それでもいいか』


『分かった。楽しみにしてる』


 いきなり二人きりで飲むの事に対してハードルを感じてしまったので、昼間少しだけ時間を取るとか、俺は乙女か。


 陽翔の短い返事に胸が高鳴るのを感じる。バッテリーを組んでいた時は気にしないようにしていた。


 感情があふれ出してしまえば、もう一緒に組めないと察していたから。





 会う約束を水曜日にしたからその後の二日間は仕事をしていても、当日の服装を悩んだりしていた。お昼に会うからスーツ姿なのだが、何色のネクタイをするか、気合を入れ過ぎれば同僚に感づかれるのではないかと、久しぶりの感覚を楽しんでいた。


 自分がここまで屑男だとは思ってなかった。初恋をこじらせただけの男。社内でそれがバレれば俺に憧れを抱いている奴らの気持ちを全部砕くことができるかな。


 今日は営業の外回りの日にして、クライアントとの約束の時間まで余裕を持たせた。陽翔の会社とは一駅分ほどの距離があるため、お互いの会社の中間地点にあるコーヒーショップで会う約束にした。


 集合時間の一時間前にショップに入り、俺はパソコンを開きながら緊張を解そうとしていた。


「ごめん、遅れた」


 二週間前に会った時と変わらない爽やかな笑顔。俺がどれほど屑か知らないから向けられるのかな。男を泣かせてきた俺にはもったいない相手。


「仕事が早く片付いて先に来てただけだから、大丈夫」


 嘘と本当を入り交えて俺はパソコンを閉じる。


「陽翔は飯食べて来たのか」


 お昼の時間を少しずらしたため、俺は待っている間に軽食としてサンドイッチとドーナツを食べていた。普段より少なめにしているから、夜は焼肉でも食べようかと検討をしている。俺がダメ男だとわかったとしても、陽翔は普通に接してくれるかもしれない。都合のいい解釈が嫌になる。


 届かぬ思いを焼き肉と一緒に焼いてしまえば楽になるのかなと考えていた。


「軽く済ませてきたから。仁がまだならどこか食べながら話す?」


 二人がけの入り口近くの席をとっていた。注文カウンターで注文をしてから席に着くスタイルのコーヒーチェーン店のため、陽翔の視線はカウンターに向いていた。見慣れた横顔。記憶に残っているものよりも大人びている。


「おれも食べてきているから大丈夫だけど」


「なら、追加でケーキか何か食べながら話すか」


 陽翔は甘いものが好きだったはず。練習帰りによくコンビニに寄って夏場はアイスクリームを食べていた。帰れば夕飯が用意されているため、帰り道の空腹を満たす甘味は最高に美味しかった。


「食後のデザート、は食べたいね」


 俺の提案に陽翔がカバンから財布を取り出す。


 お互いにコーヒーとワッフル、チーズケーキを注文し席に着く。


 本日二個目の甘味。明日食べる量を調整すればいいかな。


「仁も大概甘いもの好きだったよね」


「陽翔の方が好きだった」


「練習終わりにアイス二個食べてたのは、仁の方だろう」


「陽翔は甘い者だけじゃなくて肉まんとかも食べてたもんな」


「あんだけ体を動かしてたらお腹空くじゃんか」


 再会してすぐに打ち解けられるとは思ってなかった。


 メニューを選んでいた視線が俺と交わる。


 俺のことをみてほしいと願った瞳にまた映るのが嬉しくて。


 昨日は突然だったから何も気にしていなかったけど、見た目は変じゃないかな。会う前にトイレで何回か確認したけど、心配になってしまう。


「どうしたの、仁」


「なんでもない」


 顔が赤くなっていないか気になりながら俺は、陽翔の意識を俺から注文に切り替えてもらうために席をたつ。


「運動やめてから太るって聞いてたから、おれ簡単な運動はするようにしているんだ」


「年齢境目にして太らないか?後は仕事終わりのビールとか」


「アルコールは確かに美味しい」


 離れていた間の距離を埋めるように、お互いの気持ちを打ち明け合う。


 ちっぽけな自分の中身を見せるのはとても勇気がいる。気持ちを打ち明ける決意はしたけど、すぐに言えるほど度胸を持っていない。


 高校時代に味わえなかった淡い時間を楽しむことを許してほしい。傷つけた恋人たちには申し訳ないことをした。


「今回はお昼だけど、お酒飲むの楽しみにしてるんだからな」


 陽翔の笑顔。


「どうしてアルコールにこだわるんだ」


 会話をしながら注文を終え、席に戻る。陽翔がブラックコーヒーを口にする。俺はミルクを一つだけ入れて飲んだ。


「高校時代にできなかったことをしたいから」


 陽翔の方が背が高いが、上目遣い気味に俺のことを見てくる。飲もうとしていたコーヒーをこぼしそうになるのを我慢した俺偉い。


「今まで逃げてて悪かった」


 俺が逃げなければ垂れも傷付けなくて済んだから。謝る相手はきっと陽翔じゃない。


「仁が責任感強いのわかってる。おれもすぐにお前のそばにいけなかった。お前がいなくても、甲子園に行きたいって気持ちが強くて。長い間バッテリー組んでいたのに最後は自分の気持ちを優先した」


「甲子園は目指せる時に目指さないと」


「ありがとう」


「お礼を言われるようなことしてない。むしろあの時の俺は陽翔が俺に関わってきていたら攻撃していた気がする」


 恋心がある。でも目指していた夢を目指せなくなったことに対する罪悪感とがせめぎ合って、多分俺は素直になれなかった。大人に慣れたからこうして話せる。時間が解決してくれた面と、ぐるぐる拗らせた面とが喧嘩している。


 大人になりきれていないのも悟られたくない。


「本当に仁は真面目だなぁ」


 嬉しそうに目を細める陽翔には俺が真面目に写っているのか。俺は全く不真面目な人間なのに。


 変わらないどころか、魅力が増している。


 陽翔はよくモテるのは学生時代から分かっていた。


「仁に相談するのも変なんだけど、最近困っていて」


 お互いに注文した物をほとんど食べ終えた。男同士の食事だとそれほど時間がかからないことが多い気がする。そう言っても俺はあまり女性と食事をしたことがないんだけど。


「俺で力になれるなら」


 好きなやつに頼られて嬉しくないわけがない。単純な男だなと思いながら俺は陽翔の言葉に耳を傾けた。一文字も聞き逃さないように注意をする。十年以上好きで拗らせた気持ちは簡単な処方箋じゃ拭い去れないかもと頭の隅で思考が動く。


 陽翔はどう言うべきか考えているのか、口を何度か開きかけ、机の上に置いた握り拳にぎゅっと力を入れてから口を開いた。


「新しく来た新人に追いかけられてる」


 相談された内容は恋愛相談。これから相手に告白するぞと意気込んでいた俺には稲妻が落ちたようだった。光る指輪を見れば相手がいることがわかる。俺は同性だから告白しても許される訳じゃないけど。


「気のせいじゃないのか」


 震えそうになる声を抑えるのに精一杯で陽翔の顔が見られない。

ここまで読んでいただき誠にありがとうございます

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