9 自然治癒があっても痛いのは嫌です
「すごい威力ね。」
「ん?ああ、見てたのか。」
カーナは終わったのを感じたのかカイトに近づいてきた。木剣を持って。
(ああ〜忘れてたあ〜)
「カーナ、この子ちょっと前話題になった『怠惰』の子だろ?良い彼氏を見つけたな。」
「あっ、俺彼氏じゃないです。」
「え?そうなの?」
「はい。」
(こんなやつと付き合ったら何回か死ぬわ!)
「そ、そうだったのか……すまない……」
カーナが笑顔で俺を見てくるが無視だ。テレパシーで俺の思ったことがわかったのだろうが無視だ。
「……ささ、私たちやることがあるからお父さんは家戻ってて。」
「えっ、いやもう少し話を……」
「戻ってて。」
「あ、うん……。」
なんかしょぼんってしてたな。可哀想。
「さ、やるわよ。結構痛いかもね。」
「避けりゃいいんだろ?簡単だ。」
俺は重い体を起こして足に魔力を込める。
「行くわよ。」
カーナが突っ込んできて、右上から剣を振り下ろす。
見て回避、余裕でした。
「うおっ!」
いきなり左下から振り上げられた剣が俺の顎を擦った。
カーナは隙を見せずに三撃目を突き出してくる。
俺はそれもギリギリのところで躱す。
ザッ
「……剣士が狙ってくるのは腕。あなたが狙うのは剣を振り下ろしたあと。もしくは振り下ろす前のタメ。今は躱す練習だけど本番ではガンガン魔法を使いなさい。」
「分かってる。」
剣を速いな。今だいぶギリギリなんだが。
「よし、じゃああと二十セットくらいいくわよ。今ので一セットね。」
………
「ぐわぁー!疲れたぁー!」
やっと二十セット終わった。何回当たったかわからん。自然治癒で治るから数えるのができん。だいぶ痛い。
「何言ってんのよ。自然治癒あるでしょ。」
「治るのは体の傷だけなんだよ!」
治るのは体の傷だけだ。体力や精神力までは回復できない。あー辛かった。
「まあ、だいぶマシになったわ。大会まであと…四日?あるから、全部家来なさい。」
「……はい。」
「何よ。嫌なの?」
「いえいえ。そんな訳ないじゃないですか!
……じゃ、俺帰るわ。明日十時くらいに来る。」
「……優勝したらモテるわよ。」
ピクッ
今なんて?
「……明日は八時に来る。」
「ええ。待ってるわ。」
次の日の八時
「時間ピッタリね。時間には厳しいタイプ?」
「まあ、練習に付き合ってもらってる側だしな。」
「そう、じゃ始めるわよ。とりあえず二十セット。」
とりあえず?
「ふぅ、疲れた。」
二十セット終わった。ただ避けるだけだから冷静にいけばほとんど当たらない。
「……なんかもうこの練習意味ない気がするわ。
魔力コントロールの練習しましょう。」
「えい了解。
んんん〜。電気領域!」
床に電気が流れる。俺を中心とした半径約7mの円形。
これは、俺が昨日15秒くらいで考えた技だ。だけどこれがなかなか有効なんだ。
常に足に魔力を流して魔法を遮らないといけない。
俺は大丈夫だけど。
魔法自体の威力は低いから、足が痺れるくらい。
これがまた結構強い。と思う。
相手が普段やらないこと、俺がやりたいことを押し付けて自分のペースに引き込む。
相手よりも有利な状況というのは精神的にも余裕が出て冷静にいられるんだ。
「ねぇ、これ微妙じゃない?」
「失礼な、昨日俺が15秒で考えたんだぞ。
……ちなみに、なんでそう思った?」
「あんたは魔法発動してさらに足にも魔力流さなきゃいけないんでしょ?燃費悪くない?」
「イヤーそこに気づくとは鋭い!だが、大丈夫。俺はちゃんと考えて靴にゴムを仕込んである!これのおかげでなんも感じない。」
「……なんかよく分からないけどそこは大丈夫なのね。」
完璧すぎる。これは使える!
「……相手も雷魔法の使い手だったらどうするの?」
……考えてなかった。どうしよう……。
その後は普通に練習した。
一個目は魔力コントロール。自分の考えている量の魔力を放出する練習。俺は毎回、少し思ってるよりも多く魔力を使ってしまう。要練習。
二個目は魔法コントロール。自分の魔法を狙ったところに飛ばす練習。これは完璧。俺は微調整とか得意で、300m先のリンゴを撃ち抜いてやったわ。
ゴーンゴーン
「ああ。もう12時か。」
「カーナちゃーん!お昼できたわよ〜!カイト君も一緒にどう?」
「いいんですか?では、お言葉に甘えて。」
なんだろうな〜。やっぱ貴族って言ったら豪華なのかな〜。
サンドウィッチだ。普通の。コンビニに売ってる感じの普通のサンドウィッチ。
味は全く違う。コンビニの100倍美味い。
なんかこう……言葉では上手く言い表せない美味さだ。何が違うのか聞かれても答えられないと思う。
でも美味いもんは美味い。
「ふぅ、ありがとうございます。とても美味しかったです。」
「あらあら、ありがとう。」
大会まであと三日。何しよう。
「ねぇ、何する?」
「……対人経験を積みたい。」
カーナと戦うのは初めてだ。気を引き締めて行こう。
〜一時間後〜
「いぇ〜い!五十戦全勝!」
なんだこの強さは……。まるで歯が立たない。
いや、そもそも手数が違った。
俺は両手から雷を出すので精一杯なのにあいつは一度に三十個くらい氷塊を出してた。一個一個が空気清浄機くらいでかい。
しかも念力で浮かれたら当てるのムズい。
思考も読まれてるから何しようとしてるのかも筒抜け。
土魔法で視界を奪っても透視でらくらく避けられた。
……ずるくね?
「まあまあしょうがないわよ。私は強いから!」
「いつか絶対勝つぞ。」
大会までの四日はすぐに過ぎていった……。
本日受験なのでブックマーク、評価お願いします
なう(2023/02/21 09:00:06)