7 エントリー
大会まであと一週間くらい、先生に参加することを言わなければいけない。どうやって教室に入ろうか。
「……」
このドアを開けたらすぐに追いかけられよな……。
(逃げるから追いかけられるのでは?)
俺はこの世の真理に気づいたかのような気持ちだった。
なんだめちゃめちゃ簡単じゃん。
ガラガラ
「トリドス来たぞ!」
「「「殺━━━」」」
「俺は逃げない!」
捕まった。どうしてこうなった。
今は縄で椅子に括り付けられている。こうゆうのは魔法じゃないんだな。なんか残念。
ガチャ
誰か来た。
「ようやく捕まえたわ。カイト・トリドス。」
「誰だ。追いかけ回される身にもなれ。迷惑だ。」
身長は170cmあるかないかくらい。髪はロングで水色。カーナそっくりだ。違うのは目の色ぐらい。カーナの目の色は黄色だが、こいつは黒。両脇に取り巻きがいる。
「私は三年、『月』のカミラ・ボルクスよ。」
「ボルクス……?なんでそんな二つ名持ちの貴族が俺みたいな平民追いかけてんだよ。」
ボルクス家と言えばドライオン家に並ぶ位の高い家柄だ。さらに二つ名なんて強いやつの象徴みたいなもん。
カーナすげぇな。こんな奴がファンクラブにいんのか。普通に三年だし。
「それはね、あなたがカーナお姉様の弱みを握っているからよ!」
「何故そうなる?俺にそんなものは無い。」
「……そっ、そんなわけないでしょ!なにか裏があるに決まってるわ!」
「無い。
俺とカーナは共通点があるから一緒にいるだけだ。それに俺はスカウトされたみたいなもんなんだ。俺に言われても困る。」
「そんなわけないでしょ!」
「カーナお姉様がお前みたいなやつを!」
取り巻きが叫びだした。こいつらにとってあいつはどんな存在なんだ。このままだとキリないぞ。めんどくせぇ。
「まぁ、取り敢えず縄ほどいてくんねぇか?」
「……ダメよ!握っている弱みを言いなさい!」
「おめぇが知りてぇだけだろ!」
「うぐぅ……」
図星か。
困ったなぁ。早く大会について言いに行かなきゃ行けないのに。
……転移あるじゃん。
アホか俺は。
「ふぅ……じゃ、俺はこれで。追いかけないでくれるとありがたいです。」
そう言って俺は教室前に転移した。
ガラガラ
「あっ。先生。」
「ん?どうした?」
「あのー、一週間後くらいの大会?に参加したいんですけ━━━」
「おお!ほんとか!是非参加してくれ!」
やけに食い気味だな。そんなに人数少ないのか?
「いやーまさかお前が出てくれるとはなあ。今までじゃあ考えられないぞ。最近なんかあったのか?」
「……いえ、なんか楽しそうなことがあったんで。」
「そうか。じゃあこれ事務室まで持ってってくれ。」
「はい。ありがとうございます!」
よし。これを持ってけばエントリーできる。ああ、なんか無駄に大変だった。
事務室があるのは一階で三年フロアだ。
(えーっと事務室はー、こっちか。)
「ん?なんだお前何しに来たんだ?」
「あっ、こんにちは。来週の大会のエントリーに来たんです。」
でかい。2m……は無いか。190cmくらい。肩幅も広くてアメフトとかラグビーやってそうな体格。
「あ?お前みたいなやつが出んのか?
……冷やかしならやめろ。つまんねえって。しょうもないわ。」
なんでそんなキレてんだ?意味がわからん。
「いえ、別に冷やかしじゃないです。俺は勝ちに行きますよ。三年にも二つ名持ちにも。」
「へっ。そうかい。まぁ、頑張れよ。ハハハ」
あいつ強いな。しっかり魔法を練習してるタイプだ。あんなのがいんのかよ。なんか緊張してきた。
エントリーしてきた。ルールの紙もらって読んでる。
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大会のルール・注意事項
・レフェリーの戦闘不能判断、もしくは本人による降参で勝敗をつける。
・剣や弓などの武器の使用を認める。
・参加者は学年性別を問わず、平等にくじ引きで対戦相手を決める。
・予選を行い、上位16名が本戦へと出場する。
予選の内容は当日発表。
・三位以内に入賞した一、二年生は三年生と一緒に合宿、学校対抗戦に同行する権利が与えられる。
以下不明な点がありましたら事務室までお越しください。
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なんかよくある感じだな……。
「……剣!?」
思わず声が出てしまった。
マジかー。
三階の一年フロアに来た。大会についてカーナに質問するためだ。なんか運営に回るって言ってたし色々知ってるだろ。
「カーナいる?」
なんかクラスの全員がこっち向いた。注目されるのあんま好きじゃないんだけどな。
「どうしたの?」
「ああ、これさ剣って使った方がいいのか?」
「あー。別にあんたは殴った方が強いんじゃない?どっちみち今からじゃ避ける練習くらいしかできないわよ。」
「むむっ。」
「使いたかったの?」
「まあ、少しは。」
「……」「……」
カーナは顎に指をあてて考え事をしている。なにか嫌な予感がする。
「今日家に来なさい。」
ほら。嫌な予感的中。
「避ける練習?」
「そうよ」
絶対痛いじゃん。自然治癒あるからって当てまくるのが目に見えてる。
「……わかった。校門いる。」
「終わったらすぐ行くねー。」
ガラガラ
嫌な予感が的中してしまった。来なきゃ良かったかも。
放課後
「オイ、誰か話しかけてこいよ。」
「無理だろ!お前がいけよ。」
「イヤイヤ無理無理。俺じゃ無理。」
「……イヤー、でもカーナ・ドライオンは一年の中でも一、二を争うレベルで美人だな。」
「俺もあんな子と付き合いてぇよ!」
「イヤイヤないない。そもそもあーゆうクールな人が誰かと付き合ってるとこなんか想像できん。」
「「「確かに。」」」
「俺たちは眺めてるだけでいいんだよ。それがお互いのためになるんだ。」
俺かっけぇー!今俺最高にイケてるわ。ふふん。
「……イ……オイ!」
「ん?なんだ?」
「カーナ・ドライオンが男と歩いてるぞ!」
なっ!?誰だ!?
あれはたしか…………一組のカイト・トリドス!? なぜあいつが!?
「カーナ・ドライオンの笑ってるとこなんて初めて見たんだが…」
「そっ、そうだな。確かに。」
これは一大事だ。カーナ・ドライオンに釣り合う男かどうか試してやるよ!
「おい、追いかけるぞ。」
「すまん。待ったか?」
「いや、あんまり待ってない。三分くらい。」
「そうか、すまん。」
「……大丈夫よ、歩きましょう。話すことが少しあるわ。」
なんだ?
また変なこと言い出すんじゃないだろうな。
「なんも変なことなんて言わないわよ。」
……なぜバレた。
「私がテレパシーを使えるからよ。」
「……ああ。そういえばそんなのあったな。
で、話って?」
「私が木剣を振るから魔力上手く使って避けてね。」
「あれか?前言ってた足とかに魔力集めて身体能力を上げる。みたいなやつか?」
「それそれ。」
ふっ。俺は暇な時ずっと練習してたからできるんだよなあー。ドヤァ。
「そうなの。じゃあすぐ始められるわね。」
心を読まれるのは変な感じがする。
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次回はカーナの家族回です。