6 修行
盗賊と戦った次の日
ガラガラ
「ねぇ。トリドス来たよ。」
「ええ。来たわ。カーナお姉様に近づくために弱みを握るなんて許せないわ!」
変な噂が立っていた。俺が昨日カーナと一緒に居たのはカーナの弱みを握っているからということになっているらしい。誰がそんなこと言い出したんだ。 時間が解決してくれるだろうと思い俺はあまり気にしていなかった。
ホームルームが終わったあとは地獄だった。クラスの女子にカーナの弱みを握っていると冤罪をかけられて追い回された。廊下に出て逃げようとしたらほかのクラスの女子にも追いかけられた。他学年の女子にも追いかけられた。これいつまで続くんだ?
(!あれは……カーナ!ああ救世主。)
「カーナ!助けてくれ!」
カーナがこっちを振り向いたあと焦った顔で言った。
「ちょっ!そんな大人数引き連れて来ないでよ!」
「あっ!おい逃げんな!」
カーナは全力で走った。本当に全力で走った。
「トリドスのやつ!お姉様を呼び捨てにするなんて、失礼にも程があるわ!」
「お姉様逃げてください!そいつは危険です!」
「トリドスを殺せ!」
「「「「殺せ!!」」」」
後ろの奴ら俺に対する殺意高すぎないか!?
「ああもう!とりあえず森まで転移で飛ぶわよ!」
「わかった!!」
二人は森に転移した。
「ハァハァ……なんであんなに追いかけられてたの?」
「なんか俺がお前の弱みを握ってるらしい。そうでも無いとお前が俺に近づく意味なんてない。だそうだ。」
「……ええと、つまり?」
「お前への愛が暴走してる。みたいな感じだ。」
「ああ…なるほど。なんかごめん。
私のとこなんか来ないで早く転移すれば良かったのに。」
カーナは不満そうに言った。
「だけどなぁ、走りながらじゃコントロールするの難しいんだよ。」
「それはあなたが下手だからよ。魔法の練習すれば上手くなるわ。」
魔法の練習かぁ。なんか勉強することはほとんどないらしいしやってみようかな。
「うし。魔法練習するわ。」
「よく言ったわ!では魔法の説明をします。」
速い。準備してたらしい。カーナは眼鏡をかけて先生(?)になりきった。
「まず魔法を使うために必要なのはイメージ。どんなに大きな魔力を持っていてもイメージができなかったら宝の持ち腐れになるわ。例えば、あなたが前作った土人形。あれは適当にやった?」
「結構適当だったぞ。」
「ああそう。じゃああんま問題ないわね。こっち来て。」
カーナはそう言うと地面に絵を描いた。
「魔法には一人一人違う適性がある。私の場合は氷ね。まあ、イメージができれば基本なんでもできるから、適正なんてあってないようなものよ。結局練習すればどの魔法も使えるわ。どんな魔法がいい?」
「うーむ。」
魔法かぁ。いざとなってみると悩むな。最初に使えるようになる魔法。いや土魔法の次か。……やっぱ速さだな。AGI特化はロマンだ。
「雷か光がいいな。速いし。」
「あ〜、光はちょっと魔族には厳しいかも。雷の方がおすすめ。」
「じゃあ雷にするわ。いや電気か?」
どっちだ?ここは個人的に結構重要な所だ。雷魔法と言うか電気魔法と言うかでかっこよさはドンと変わる。
「そんなのどっちでもいいわよ。雷って言えば雷よ。手に魔力集めて。やるわよ。」
俺は手に魔力を集めてそれを維持する。
「そのままそのまま。じゃあイメージして。あなたの思い描く雷はどんな感じ?そのイメージのまま手から放つ!」
「ハア!」
ピリッ
ちいせぇ!えっ?静電気?
俺の現在地はこんなとこなのか……。先は長いな……。
落ち込むわ。
「どうしたの?落ち込んで。初めて使う魔法で少しでも出たらたいしたもんよ。普通は出ないわ。」
「ああマジ?」
落ち込んでいた自分が恥ずかしい。俺はすごいらしい。
「どんどん魔力量を上げてけば威力も高くなるはずよ。」
「よぉし!やるぞ!」
俺は魔法を打ち続けた。本当に魔力が無くなる寸前まで打った。コントロールできる魔力量も少しずつ上がって行って威力も上がって行った。
「疲れた!」
「おつかれ。すごいわね。転生者の魔力は大分多いはずなんだけど打ち切るなんて。」
「結構威力上がったぞ。お前と同じくらいなんじゃねえか?」
俺は本当に頑張った。昼食は食ってないし午後の授業もサボってずっと魔法を打ち続けた。もうカーナと遜色ないくらいには強くなっているはずだ。
「そう?私はこれぐらいなら簡単に出せるわよ。」
カーナはそう言って俺の雷の三倍くらいの規模の氷を出した。
「あう……」
俺はすごい恥ずかしくなった。
「まあまあ。一日でこんなに上手くなった人初めて見たし、魔法の適性はあると思うわ。あとは反復練習よ。量やればやるほど強くなるしコントロールも上手くなるわ。」
「ああわかった。……頑張る。」
「じゃあ私はこれで。」
(ふぅ。俺も帰るか。)
次の日
ガラガラ
「トリドス来た!」
「「「殺せぇ!!」」」
ああもう!忘れてた!
うおおお!間に合え!転移!
間に合った。昨日とは段違いの魔力コントロールだった。練習って大事だな。とりあえず森に転移したが、あれは戻れないよなぁ。
練習するか。
俺のところにカーナが来た。
「ん?おおカーナ。お前もきたの……か……?」
なんかサングラスかけてる。あれは……木剣か?なんであんなん持ってんだ?
「私はカーナでは無い。教官と呼べ!」
「あっはい。教官。」
教官らしい。
「あと三日でお前の魔法を私と同じレベルまであげる。ビシバシいくぞ!」
なんだって!?あのレベルまであげるのか!?あと三日で?……いや三日あれば行けんじゃね?
「ほらあ!早くやれ!」
「は……はい!」
地獄の三日間だった。いつものカーナからは考えられないくらい厳しかった。魔力がなくなりかけて休んだら、
「何休んでんだ!自然治癒あんだろ!」
とか言ってくるし。本当にキツかった。自然治癒も魔力使うことをこの時初めて知った。よくやりきった俺!当たり前のように昼食は抜き。一日二食は結構キツかった。まあ、おかげで大分魔法を使えるようになった、感謝だな。
「よく三日間やりきったわね。正直無理だと思ってたわ。」
「まあ、魔法を使うのは俺からしたら特別なことだからなモチベーションはめっちゃ高かったよ。」
「そう。なら大会も大丈夫そうね。」
「大会?」
なんだ大会って。
「知らないの?今日の朝先生が言ってたけど。
…ああ。あなた追いかけられてるんだったわね。」
「そうだ。」
「今度学校で強いやつを決めるお祭りみたいなのがあるのよ。まあ、お祭りといっても結構ガチガチで、結果とか残せば実績に載ったりするわ。」
「ん?俺が出るのか?」
「そうよ。出て優勝しなさい。そうすれば今度のドット学園との対抗戦に三年と混ざって参加できるわ。」
「ドット学園?どこの学校だ?」
「人間国よ。」
「!……おう。マジか。それは行く価値あるな。 ……でも勝てるかなぁ。全学年出るんだろ? 」
「当たり前じゃない。ほとんど三年ばっかよ。」
「うげぇ、無理じゃね。てかお前いる時点で無理じゃん。」
「私は運営に回るから出ない。
あと、普通は三日であんな魔法が強くなったりはしないわ。本気でやれば優勝できると思う。」
「負けてもなんも言うなよ…」
カーナは大丈夫と言っていたが俺に優勝なんてできるのだろうか。三年かぁ。怖いな。