2 魔王
ローズの転生後、国王ジュイス·フィルノは魔王城会議室に来ていた。
そこには魔王、『嫉妬』以外の軍団長六人、鎧を着た人間六人が赤い水溜まりを作っていた。座りこんで休んでいる人間二人にジュイスは声をかける。
「おい。一人足りないぞ。魔王を含めて八人ではないのか?」
「す…すいません!『強欲』に8人がかりでようやく殺しまして…『嫉妬』には逃げられてしまいました…」
何か罰が下されると予想したのか言葉が震えている。そのことを感じ取ったのかジュイスは冷静に話した。
「まあいい。奇襲をかけたんだ。魔族の軍団長が本調子であれば勝てる気はせん。被害は少なかったと私はみる。」
「わかりました!では、『嫉妬』の捜索に移ります。」
そう言って二人は会議室を出ていった。
(軍団長六人と人間六人…最高の働きだ。)
ジュイスは倒れている魔王を見る。
「死んだフリはやめろ魔王。」
「……ああ。生きてるよ。心臓治すのに魔力使い切っちゃったけどな。死ぬかと思ったな。」
「お前を拘束して人間領に連れていく。」
「分かってる。新しい魔王を生まないためには一番いい方法だよ。」
魔王の称号は保持者が死ぬと、すぐに次の魔王の素質があるものに受け継がれる。魔王を生かし続ければ新しい魔王が生まれずに済むという訳だ。
魔王に手錠がかけられる。
「おお。凄いなこれ。魔力の流れが止まった。」
「うちの特注品だ。壊すなよ。」
(これは逃げれないな……)
二人は魔王城の廊下を歩いて外に出た。
「そういえば、あの狙撃してきたヤツは転生者か?」
魔王は自分が気づくことができない人間がいるなど信じられなかった。
「違うな。アイツは異世界人だ。こちらから異世界に干渉して呼び出した。最初は二十七人呼び出すはずだったのだが何人かは体が崩壊してしまった。」
「そんな簡単に話していいのか?」
「問題ない。これからお前は私の管理下に置かれるからな。」
魔王は手錠を外すために会話を続けていた。
だが何度やっても手錠は外れない。
魔王専用に調整されているため外れるわけがないのだ。
それが分かったのか、魔王は口の中に仕込んでいた猛毒入のカプセルを噛み砕き自殺した……
魔王自殺の十分前…
ジュイスの双子の子供である、ジュスナ(兄)とラモ(弟)が誕生した。
(うぅ……眩しい…ここはどこだ…?)
ラモは自分の手を見る。小さい。
???
(これは……もしや異世界転生というヤツでは?)
そうだ。そうに違いない。中学校初日の登校日、いきなり教室に紫色の模様が浮かび上がったんだ。そして気づいたらこうなっていた。
(……こーゆうのってさ、召喚じゃないの? 俺多分一回死んでるよね?……分からん。後回しで。とりあえずできることを探そう。)
腕をブンブン振ってみる。
(うぉ!なんか出た!なになに〜称号一覧?)
ラモ·フィルノ
《称号》
転生者
├言語理解
├未来視
└鑑定
ほぇ〜。なんか凄そう。特に未来視と鑑定。
(鑑定使ってみるか。コイツでいいか。……どう使うんだ?……こうか!鑑定!)
ジュスナ·フィルノ
《称号》
転生者 勇者
├言語理解
├聖魔法特化
└鑑定
は?転生者?こいつも?てか勇者?しかも、フィルノってことは兄弟?
(勇者か〜。いいな〜。この世界の主人公じゃん。羨ましい〜。)
称号《魔王》を獲得しました。
(……マ……マオウ?)