105 お父さんをしまってみよう
今日はアウトかな?
いや、大丈夫だ!
Let's BL!
あ、リウィアを忘れて……出番を足したので、6/18加筆しました。
衝撃のイヴァンさんの告白で、イリアス殿下のスキル「断絶」で遮音されただけじゃない沈黙が流れ、一度その場が静まり返った。
「間違いないか?」
イリアス殿下の声に、イヴァンさんが頷く。
「はい。奴隷の拘束魔術は、書き換える直前に一度解除するんで、思考能力を奪う薬を使われそうになったんで抵抗をしました。運が悪ければ自分が誰かも分からなくなる物だったんで、絶対に使われる訳にはいきませんでした」
お薬を使う側は、要はイヴァンさんが服従すればいいのだから、イヴァンさんの強さと人間の言葉を理解する能力さえ残れば、後はどんな障害が残ってもいいと思ったようだ。
それまでは、イヴちゃんを育てるために、いろんな辛い仕打ちにも堪えてきたけど、記憶を失くすことだけは我慢できずに、やむなく抵抗したようだ。
記憶を失くせば、もうイヴちゃんを守る人がいなくなるから。
その時に、魔術とは別の圧力を感じたそう。それと一緒に頭の中に『従え』という声が聞こえて来て、その声が大司教のものだったとのこと。
たった一言でも、侯爵夫人のオクタヴィア様の使用人のレネさんの声を聞き分けるくらいだから、とっても耳がいいようだ。
何でもオルドウィケス族の族長の家系の人は、みんな五感に優れているんだって。
『ああ。こやつの家系は、我の血を引いているからな』
サラッとレッドさんが言った。
「え?レッドさんって、人間の女性と結婚してたんですか?」
「なにそれ。異類婚姻譚ってやつ?」
レッドさんの暴露話に、私が思わずツッコみを入れると、有紗ちゃんが興味津々で話に混ざってきた。リウィアさんもちょっと回復したのか、身を乗り出してきた。
『聖女よ。期待に沿えず悪いが、我の血を与えたのは青年だったぞ」
「……まさかの、プラスR指定BLとか。あなた、少年雑誌系かと思ったら恋愛ファンタジー系だったの?」
有紗ちゃんの指摘にハッとなる。
レッドさん、それ私もいろいろ聞きたい。えっと、Rの部分は除いていただいていいんで。
『聖女よ。期待に沿えず悪いが、多分まったく違うぞ。『あーる』指定『びーえる』とやらが何か分からんが。ほれ見ろ。ハルが期待の籠った目で我を見るではないか』
これは純粋に恋バナに対する興味です。どこの世界でも、恋バナが嫌いな女子はいない!
「おい、クソアリサ。『あーる』と『びーえる』ってなんだ?」
やっぱり知らない単語に王子も食い付いてきた。
えっと、王子にはできればそっち方面に興味を持ってほしくないんだけど。
「こんな昼間っから、子供たちのいる場所でする話じゃないから却下よ」
「クソ!そんなの余計知りたくなるわ!」
「私にもご教示願いたい」
ああ、レアリスさんも食い付いて来ちゃった。
『小僧ども。私が後で教えてやる』
そこに、玄武のメイさんが、ユーシスさんのポケットからチョロっと顔を出して言った。
そして、『今夜たっぷりと、な』と、何やら意味深な顔で王子とレアリスさんと、そして何故かユーシスさんを見て、最後にニヤリと笑った。クロさんは、無表情で『腐ってやがる』と呟いた。
……ああ、聖女夕奈さんが情報元だ、絶対。
何かマズいことがあっても、きっとクロさんが止めてくれるだろう。……多分。
取りあえず、レッドさんが説明してくれたのは、勇者綾人君が武器を作るためにレッドさんの所を訪れた時に、道案内を頼んだ現地の人がイヴァンさんのご先祖様で、なんやかんやあってその人が大怪我しちゃったらしい。
私みたいに特級とか上級ポーションなんて持っていないから、膨大な生命力の源であるレッドさんの血なら治るかもってなって、その人に血を飲ませたんだって。
そっか。血を与えるって、ドリンクな方だったのね。
その怪我は、異世界人の登場にテンション上がって、『我が欲しくば、力を示せ』的な展開になって、ほぼ悪ノリしたレッドさんのせいだったみたいだしね。
古来から、竜の血には不老不死とか、万能薬のような効能の言い伝えがあって、それはその生命力の源だからであながち嘘でもなくて、レッドさんはそういう力を手に入れたい人たちに狙われてきたと言った。
出会った時も、自分たちの素材は人間が欲しがるみたいなことを言っていた気がする。
ただ、それには強烈な副作用があって、血が合えば傷ぐらい治るけど、もし合わなかったら命はないらしい。本当に究極の二択だったんだね。
無事に怪我が治ったその人は、レッドさんの血の影響で、髪が赤で目が金になったらしい。それが血族に稀に受け継がれて今に至る、ようだ。
「なるほど。その時に得た力が、この『竜化』だったのか」
イヴァンさんが、妙に納得した様子で頷いた。
私が良く分からないので尋ねると、イヴァンさんが右腕のシャツをまくって説明してくれた。たくましい腕が性癖に刺さったようで、有紗ちゃん、腕をガン見してる。
「俺の一族で俺のような金目だと、『竜化』というスキルが使えるんだ」
言い終わると、見る見るうちにイヴァンさんの腕が変化した。肘から先が赤い宝石みたいな鱗に覆われて、爪が鋭く大きくなる。手の大きさも一回り大きくなっていた。
「宝剣が使う人間を選ぶのには、鞘自体が抜けないことや膨大な魔力量が必要になることが要因だが、実際、こうして『竜化』で強化しないと、武器の威力で使い手の体の方が吹き飛んじまうからなんだ。初代は、剣を授けてくれたお方から、そう聞いたらしい」
その授けてくれた人って、綾人君だね。
『ああ。だから、そなたの一族が我のカラドボルグを持っていたのか』
どうやらレッドさんは、その初代さんを助けはしたけど、出来たカラドボルグを見てないし、その後その初代さんの手に渡ったことも知らなかったようだ。逆に言うと、カラドボルグがレッドさんの爪から出来ていることを、オルドウィケスの人たちは知らなかったみたい。
おそらく、そこに二者を関連付けてしまうと、変なことを考える人が出て来るかもしれないという綾人君の判断だと思われた。
「話が逸れたが、こうなると大司教が違法奴隷に関わっていること、洗脳系のスキルか魔道具を持っている可能性が高くなったな」
それまで呆れた目で私と有紗ちゃんを見ていたイリアス殿下が、サッと話をまとめた。
「ああ。ここで本人が出てきたという事は、俺たちがオルドウィケスに関わっていることも確信しているな」
王子もそれに同意した。そうだ。問題はまだ何も解決していない。
「まず、古城内に罠があると見ていいだろう。初めは、女と子供たちは置いていこうと思ったが、古城内に入るも残るも、おそらく同様の危険があると思われる」
『ああ。なんか、鎧付けた人間がたくさんいる気配がする』
イリアス殿下が言った言葉に、ガルが裏付けを与える。もう、囲まれてました。
「ならば、全員で中に入って、正面から打ち破るとしようか」
最大限の性格の悪さを出して、イリアス殿下が邪悪な笑みを浮かべた。本当にそういうの似合うよね。言っていることは、とってもカッコいいんだけどなぁ。
でも良かった。置いていく、なんて言われないで。
「お前を置いていかぬよう、守りにリウィアを呼んだのだ。感謝しろ」
どうやら、スコルに頼んだお使いは、レッドさんもだけどリウィアさんを連れて来るよう頼んだみたい。荒事について、殿下の中でリウィアさんはとても信用度が高いようだ。見たら、リウィアさんも頷いているから、幼馴染ってだけでない信頼関係があるみたい。
そういえば、セリカ行きの時に、リウィアさんが真っ先に頼ったのがイリアス殿下だった。
え?二人はそういう関係……?
「「違う(います)」」
私が何か言う前に、二人に何故か即否定された。エスパー!?
「そうなると、こいつ、どうするかだなぁ」
私が二人に驚いていると、王子がしみじみと仔犬化お父さんを抱っこして言った。
最上位魔獣のガルたちや王族の被保護者のイヴちゃんならまだ言い分が通ると思うけど、お父さんはどう見たってただのペットだ。これでごり押しするのって、「介助犬が入れるのに、何でうちの子が入れないの!?」ってデパートでクレーム言っていたポメラニアンを抱っこしたマダムと同じだね。
「せめて、メイとクロくらいの大きさだったらなぁ。中途半端なんだよなぁ」
『何ぃ!?さっきまでメロメロなくらい、私を愛でておったのに!』
王子の心無い一言に、お父さんが憤慨する。
「レアリスの『隠密』で隠蔽できないか?」
「私のスキルだと、イリアス殿下の「看破」でしかフェンリルを追えなくなります」
「フェンリルを野放しとか……無理だな」
『何だと!?』
そんな王子とお父さんのやり取りを見ていたら、急に「ピロリーン」という不吉な音が響いた。
「……そいつがいたな」
さすがの王子だって、頭痛を堪えるような顔になるよね。
何の用ですか?スキルさん。
「ぎゃ!まだ開いてないのに!」
王子に言われる前に画面を展開しようとしたら、勝手に画面が開いちゃった。
「……とうとう、自分で動き出したか……」
王子が呟き、イリアス殿下は無言で悟りを啓いたような顔になった。
〝スキル:『禁忌』が使用可能です。フェンリルを入れますか? YES/NO〟
もうダイレクトに「フェンリルを入れますか?」って聞いちゃってるし。
スキル「禁忌」は、確か亜空間収納に生体を入れられるってヤツだ。前にリウィアさんの弟さんの薬を作る時、「生成」の特典を取るのに強制で取らされたスキルだ。
「よし、入れてみよう」
『軽々しく私で実験するなああぁぁぁ!』
何故か自動でにょーんと広がった投入口に、王子がお父さんを投入してしまった。
「王子ぃ!?お、お父さぁぁんんん!」
すぐに投入口が縮んでしまって、お父さんは飲み込まれてしまった。
その直後、ピコーンという音と共に収納アイテム欄に、白いワンちゃんのアイコンが現れた。
〝フェンリル『生体』(状態:アホ)20……「わぁぁ!!鑑定、オフ!!!」〟
私は慌てて詳細鑑定をオフにした。でも一瞬チラッと見えた金額が、軽く日本の年間国家予算の桁を越えていた気がする。
「状態は前のをまだ引きずっているな。アホじゃなかったら価値が上がるのか?」
妙な所に感心する王子を無視して、お父さんを引き出そうとしたら、またピロリーンという不吉な音がした。そして、また勝手に画面展開。
〝スキル『禁忌』使用初回特典:『生体召喚』が使用可能になりました〟
「特典いらなーい!!」
何、「生体召喚」って!?怖さしかないんだけど!
「説明、見せてみろよ」
えぐえぐと心で泣く私に、非情な指令を出す王子。
いやいやする私の肩に、そっと温かな手が置かれた。後ろを振り返るとレアリスさんだった。そして、そっと震える私の手を支えた。
レアリスさん。あなたの辞書の「優しさ」の欄を書き換えてもいいですか?
そうして心の涙を拭いながらポチってみた。
〝「生体召喚」:生体とは個体を差し、種族等での指定はできない。また、召喚にはその個体と縁の深い媒介が必要。一回十億P〟
つまり、召喚するにはマルチーズという犬種では駄目で、佐藤さんちの「ペル」ちゃんと個体を特定し、ペルちゃんのリードとかお気に入りの毛布とかを私の亜空間収納に入れなければならないようだ。
不審者にもお腹を見せる人懐っこいペルちゃん、今ごろどうしてるかなぁ。
十億から意識を逸らしたくて、ちょっと現実逃避しました。
「っていうことは、あれか。ラタトスクのどんぐりがあれば、ラタトスクが召喚できるのか」
「……いやぁ、どんぐりはどうかなぁ」
王子が唸って考察する。セリカの人たちがリスのラタトスクさんの為に買い占めたどんぐりは、確かに私の亜空間収納に入っているけど、ラタトスクさん呼べるかなぁ。
でも、ラタトスクさんで実験するのは可愛そうだから、やるなら良心が痛まない人で。
「良心が痛まないと言ったら、あとはシロ……か」
「シロさん召喚は、どうかなぁ」
「そうだな、やめよう。面倒くさい」
イヴァンさんとイヴちゃん以外、そこにいる全員が肯定した。
あと、実験で十億ホイホイ出せないしね。
あれ?何か忘れているような……。
「あ、お父さん出すの忘れてた」
「あ?いいんじゃねぇか?亜空間収納に入ってる方が静かだし」
「そっか」
「……少し、フェンリルが気の毒に思えてきたな」
そっとイヴァンさんが、お父さんを労わる発言をした。
「取りあえず、正常な状態でフェンリルが出て来るか確認は必要だろう」
とっても建設的な意見をイリアス殿下が出しました。そうだね。
「正常じゃない状態で出てくるって、イソップ童話の金の斧銀の斧みたく、『綺麗なフェンリル』と『普通のフェンリル』のどっちを入れましたか、とか言われたらどうしよう」
有紗ちゃんが神妙な感じで私に言う。いやぁ、それは怖いね。でも、スキルさんならやりかねない。何が起きるか分からないのがこの世界。
「なんだ、その金の斧銀の斧って」
やっぱり王子が聞くので、私と有紗ちゃんで「正直者でいましょう」という教訓的な童話だよ、と説明した。
でも、正直に「ダメなお父さんです」って言ったら、最悪お父さんが三人になっちゃうね。
「ダメだ。フェンリルが三匹もいるなんて、この俺が、いや、世界が耐えられない」
「この話の教訓では、全てを失うかもしれないが、致し方あるまい」
王族兄弟が真剣に有紗ちゃんの仮定を吟味している。お父さん、風前のともしび。
「じゃあ、多数決で。三つのうち、どのお父さんを選ぶ?」
『『「「「「「「「綺麗なフェンリル」」」」」」」』』
王子、イリアス殿下、有紗ちゃん、ユーシスさん、レアリスさん、リウィアさん、アズレイドさん、メイさんとクロさんの声が迷いなく揃った。
イヴァンさんがポリポリとほっぺを掻いて、レッドさんがくあっとあくびしながらそれを見守っていた。
子供たちは、イヴちゃんとボール遊びしているよ。お父さんの人望の無さを見られなくて良かった。
そんな感じで、多少ドキドキしながらスキルボードを操作して、お父さんを取り出した。
『全部見えていたぞ!!!危うく、スキル『破壊』を使うところだったわ!!!』
あ、ちゃんとダメなお父さん(仔犬)が返ってきた。
お父さんは、唸って王子の手に凶暴に噛みつきながら(でも、じゃれてるようにしか見えない)、亜空間収納の中の様子を教えてくれた。
なんでも、真っ暗ではなくて、ほの明るいグレーっぽい空間で、暑くも寒くもなくて、とても心地よかったらしい。食品とか物品類は、時間停止機能があったけど、どうやら生体は、ちゃんと時間が同じように流れていたそうだ。
それに、目の前にこちらの光景が映ったウィンドウがあったんだって。それでこちらの様子が丸わかりだったそうだ。いったいどういう仕組みなんだろうね。
お父さんは、『何となく分かった』と言っていたけど、いつもの自慢げな感じじゃなくて、真面目に少し物思いに耽っているような感じだった。……ちょっと、「綺麗なお父さん」になってる?
とにかく、これでお父さんの潜入方法は確保できた。
お父さんに貰ったお守りの尻尾の毛を、昨日の内に小さなお守り袋に入れておいたのをみんなに配った。お父さんは気休めって言ってたけど、結構心強いよ。
ちょうど配り終わった時、建物から大司教が出てきた。
それとほぼ同じに、侯爵邸から一台馬車が到着して、オクタヴィア様が降りてきた。男装とまではいかないけど、動きやすそうなシンプルなマーメードラインのスカートに、男性のようなジャケットを着ている。
侯爵夫人の同行は予定にはなかったのに、どうやら一緒に古城を回ってくれるようだ。出迎えた侯爵様も少し眉をひそめていたから、多分旦那さんにも内緒で来たようだった。
結局、予想どおりガルたちやイヴちゃんは入城の許可が出たけど、お父さん(仔犬)はお断りされた。それを受けて殿下は、シレッと「馬車で留守番だ」と言って馬車を指し示した。
馬車の中には、万が一中を覗かれた時用に、音に反応して動く犬の玩具がスタンバイしている。手を叩いたら、三回「きゃん」って鳴いて、ペタッて座るの。あれ、すごい可愛いよね。
王子が物欲しそうに見てたけど、帰って来たらイヴちゃんに遊ばせてあげるからダメ。
で、レッドさんは念の為、外で待機してもらう。
いざ、お城の中へ。
私と並んで、オクタヴィア様が歩いている。間にはイヴちゃんを挟んで、手を繋いでいるから、一行のスピードは私たちに自然と合わせたゆっくりしたものだった。
未だにきちんと整備された内装や調度品は、おそらく一時代を築いた城に相応しいものなのだろう。見ているだけ眼福と言えるものだった。
そうこうしている内に、私たちは城の奥の方にある展示室のような空間に来た。
奥には、精密に描かれた男女が一組描かれた肖像画があった。人の背丈ほどもあるその絵は、黒髪で似通った面差しの男女の絵だった。夕奈さんと綾人君だ。
活発なイメージから予想に反して、艶やかな黒髪のとても清楚で物静かなお嬢様な夕奈さんと、少し長めの髪だけど優等生を絵に描いたような王子様顔の綾人君だった。この国では特に、綾人君の痕跡が少ないので、とても貴重な資料のようだ。
壁際には、二人が残した地球の日用品が保管されていた。こんなにプライベートを晒されて、ちょっと可哀想かも。
女性物と思われる、地球ではトップクラスのハイブランドの長財布と、その中身が広げられていた。クレジットカードが2枚と保険証や診察券、学生証なんかがあった。その横には、お札と小銭、それとレシートがある。
あ、コンビニでカフェラテとあんまんを買ってる。私も好きなヤツで、良く買っていたのと同じだ。
格差社会かと思っていたけど、かなり夕奈さんに親近感が湧いた。そうか、召喚された時は二月だったから、あったかいものなのね。
感熱紙なのに、良く劣化せずに保存できたな、と思ったら、これは光や温度や湿度を一定に保つ保存の魔術らしい。
私たち(ほぼ有紗ちゃんだけど)に説明をしてくれた神殿の人が、使い方が現在も分からないという貴重な勇者の「石板」があるんだって。それを見せてくれた。
「石板、か」
「ああ、石板、ね」
私たちの目の前にあったのは、小さめのタブレット端末が、画面ではなく、メーカーのロゴの入った背面を向けて飾られていた。カメラもあるし、多分こちらが表だと思われているんだ。
「これ、見せていただくことはできますか?」
私が尋ねると、先ほどまで有紗ちゃんに愛想良くしていた神殿の人が、あからさまに顔を顰めて私を見た。それに気付いてイリアス殿下が前に出ようとしたら、大司教が手を挙げて神官さんを下げた。
「あなた方ニホンジンにとってはありふれた物かもしれませんが、この世界では二つとない貴重なものです。簡単にはお見せ出来ないのですが……」
いかにももったいぶった感じで、大司教はにこやかに言った。
「あなた方が持つ、何か貴重なものと交換、ではいかがでしょう。例えば……」
少しの間が空く。
「カラドボルグ、など」
夕奈、亀、朱雀は貴腐人の傾向があります。有紗は嗜む程度、主人公に至ってはNO免疫ですが興味はあります。クロの「腐ってやがる」は、風の谷ふうに読んでください。
あと、お父さんの元ネタは、ドラ〇もんの「綺麗なジャ〇アン」です。
この話、最近ドラ〇もんに頼り過ぎだな。
いろんな意味で、検閲に引っ掛かりませんように!